パイ日和・おまけ

アクセスカウンタ

zoom RSS パティスリーリョーコ (2) 『ショコラモンブラン』『キャラドゥ』

<<   作成日時 : 2009/01/08 23:05   >>

トラックバック 0 / コメント 0

東大阪市荒本。市庁舎や府の中央図書館のある町なのに、誰も意識して訪れようとしないところでした。それを一変させたのが「リョーコ」さん。
ロールやシューなど定番のケーキを置かず、フランスを思わせる品揃えで行列店に。無名の人が作りたいケーキだけを作って、関西でこれほど成功した例はありません。
競合店がないという強みもありますが、どこかたおやかさを感じさせるデザインが、力強い味わいのケーキの印象を和らげたことも大きな要因だったかもしれませんね。
でも、今回私たちは、こちらのケーキの力強さに付いて考えてみようと思います。


●『ショコラモンブラン』 径6cm 高さ8.5cmほど。
画像
なんとも、手の込んだ作り。
一番下はごく薄いメレンゲ。その上にチョコレート風味のビスキュイ。ガナッシュ(チョコブリュレ?)があって、その中央に栗のペースト。
もう一度チョコレートのビスキュイがあって、マロンクリームをぐねぐねと絞ったもの。このクリームにもチョコレートが加わっているようです。
トップは、甘みのないカカオ風味のクレームシャンティ。
上のビスキュイから下の土台部分をチョコレートのグラッサージュで覆っています。

まず、モンブラン、というからには、栗です、栗。
栗という素材は香りに特徴があって、しかもその香りが失われやすいので、とても扱いが難しいと常日頃感じています。普通のモンブランでさえ、ちょっとした香り付けで個性が失われているものによく出会います。
それなのに、これだけ強い重層的なチョコレートと合わせて、栗が埋没していないことの、凄さ。
ラム酒でしょうか、マロングラッセ的風味。
栗自体は、フランス産かしらん、和栗よりは力強いからできることかもしれません。フランスではカシスと合わせたりするのも普通ですからね。

つぎに、ショコラ。
それぞれの層にチョコレートが入っていて、それぞれに濃度や香りが異なっているようです。
茶色の濃密なグラデーションが描かれているのです。パーツごとに食べると、その細かな芸が理解できてきます。

でも、でもなんです。縦に大きく切って、すべてを一口に頬張ってみて下さい。
なんと、味はストレートに、栗とチョコレートの一体化に向かっていきます。

口溶けの良さがあるから、一瞬にして全体が一体化するのでしょう。
不思議な味わいのケーキです(なかではトップのシャンティの甘みの無さが、存在感を放っているかもしれません。そこだけ甘みの無い異質なテイストとして認識しやすいからでしょうか)。
普通、グラデーションタイプのものは“口のなかで、順番に味わいが異なり、ハーモニーを楽しむ云々”という感想を抱きがち。
ですが、今回、グラデーションが混じりあい、溶け合い、ひとつの新しい味わいへと昇華した、という印象。こういうのは、今まであまり経験していないかな。

それにしても、栗もチョコレートもとても風味がよく、混ぜても濁ることなく、どこまでも澄んだ味わい。全体として、甘く強い味わいのモンブランなのに、清潔感と爽やかさが同居。どこかに、優しさも隠されています。
これが、力強いケーキなのにファミリー向けのような行列ができる理由なのかもしれまん。





●『キャラドゥ』 3.5×8cm 高さ5.2cmほど。
画像
下から、カラメル風味のチョコレートクッキー。塩カラメル。薄〜くガナッシュ、チョコレートのスポンジ。
そして、多くの部分を占める、甘みの弱いミルクチョコのムース、グラッサージュ。
トップには、控えめなカラメルっぽいミルクチョコガナッシュが3本。

またまたこれも、手の込んだケーキ。
塩カラメルのコクの深さが際立っています。攻撃的なほどの、塩加減。
それを受けるミルクチョコムースの、懐の深さも特筆もの。どこまでもなめらかでふっくらとしたふくよかさがあります。

この二つの対比を軸に、塩カラメル側にはやはり、塩味のクッキー。
ブラウニーを思わせるような濃厚なクッキーで、しかも、チャリチャリとした食感を偲ばせています。フィヤンティーヌなのか、細かく挽いたクラクランなのか。塩気を補充するだけでなく、テクスチャー、味の持続の長さなど、これなくしては成り立たない重要な生地です。

たいして、トップの飾りのような顔をしているガナッシュはカラメル風味にすることで、下のカラメルとの一体化を促しているようです。巧みな計算。
それにしても、この部分、華やかな香りとマイルドな酸味を含んでいて、とても魅力的。これが独立してメインになってもいいくらい。

ここで、ハタと閃きました。
トップにカラメル味を持ってくるのなら、塩カラメルはトップのグラッサージュと置き換えても良かったはず。それをあえて下に持って行っている(成形が難しくなるから、カラメルを流したあと、一度冷やし固めている? だったらその面倒をおして、あえてなのでしょう)意味は、ミルクチョコムースとすぐには溶け合って欲しくない、対比のための“持続力”を持たせたいということでしょう。そのためには塩味を含んだクッキーに受け止めさせる必要がある、ということのような気がします。
だからこそ、スポンジとガナッシュでムースから隔てられて、この位置。

そして、“キャラドゥ”とは二つのキャラメルという意味。
クッキーの塩カラメル味は上の塩カラメルが流れて染み込んだ味だと解釈すると、流れる塩カラメルとトップのカラメル風味が、二つのキャラメル。
対比のための独立した存在感を強く主張するカラメルと、全体を宥和させるためのごくごくマイルドなカラメル。
味の性質も異なれば、働きも正反対。唖然とするような構成力。

天晴れ。味わいも力強いですが、創造の面でも強い力を感じますね。


とまぁ、ケーキを食べながら、あれやこれやと想像を巡らす、愉快なひととき。
今回、二人とも同意見ではありませんが、そこがまた面白くもあり…。
こんな風にイマジネーションを掻立てる魅力を十二分に湛えているのですねぇ、「リョーコ」さんのケーキは。

“パイ日和”のほうで『フラン』をご紹介しましたが、その湯舟につかっているような優しさは、今回の2つのケーキとあまりにも対照的。
とはいえ、この2つを食べていて、優しさが通底していて、力強い個性の背後につねに優しさに向かうベクトルが働いているように感じ始めました。
それは、『ショコラモンブラン』のカカオ風味のクレームシャンティ、『キャラドゥ』のミルクチョコムース。いずれも甘いものではありません。力強い味わいのなかで、優しさの方向に懸命に引き戻している、その構図が『フラン』を食べた途端に見えてきたのでした。



●『ショコラモンブラン』520円  『キャラドゥ』480円

●「リョーコ」
 東大阪市荒本北130  TEL06-4309-3056  定休日/月曜・火曜

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

パティスリーリョーコ (2) 『ショコラモンブラン』『キャラドゥ』 パイ日和・おまけ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる