パイ日和・おまけ

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zoom RSS なかたに亭 (2) 『生姜と蜂蜜』『えんどう豆のクリーム』

<<   作成日時 : 2012/04/13 00:14   >>

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大阪のフランス菓子を語る上で欠かすことのできない名店「なかたに亭」さん。オープンして、もう25年も経つのですね。四半世紀です。なんだか昨日のことのように感じます。というのも、中谷シェフのどこか少年っぽい笑顔も少しも変わらないし。
ここ最近オープンの若手のシェフは、ほとんどが30代前半。みんな若いのに凄いなぁと思っていたのですが、中谷さんは29歳だったのですね。いゃあ、やはり“栴檀は双葉より芳し”ですね。

さて。今回お訪ねしたとき、ちょうどお客さんが立て込んでいて、シェフ自らお客さん一人を受け持って、焼菓子の袋詰め、レジ打ちをこなしていました。常連さんなのかなぁ、マスコミ関係者なのかなぁなどと思って見ていたのですが、ごくごく普通のお客さんのようでした。
“名店とは、お客さんとシェフ(または販売員)との触れ合いがあるお店”だとつねづね思っているのですが、やはりそうなのだと再認識した次第。それとなんといっても、巨匠と呼ばれる人の初々しい姿を見られたのも嬉しかったですね。

今回は、当ブログ「パイ日和」の“特集10”のために貴重な時間をいただきました。そのなかでも少し触れている2品をご紹介しましょう。(※書き手はイワモト)



● 『生姜と蜂蜜』 径5.3cm 高さ4.5cmほど。
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むむっ、直球のわかりやすいネーミング。どんなケーキなのかすぐ分かってほっとします。
だけど、想像をすっと上回る美味しさ。

凛とした清々しさと、艶冶な魅力が同居した姿が気を惹きます。
この相反する魅力の同居は、生姜という素材の持つ性格そのものなのかも知れませんね。キリッとした刺激と清潔さをイメージさせる香り。意外なほど湧き出てくる甘み。

スパイシーなサブレ生地の上に、生姜とライムの風味のホワイトチョコムースが載り、その中に蜂蜜のクリームが射込まれています。
トップは、蜂蜜とスパイスという構成。

いつもの中谷シェフの、シンプルで力強さが前面に出たケーキとは少し趣が異なります。
素材が多いということ。そして繊細さが際立っていること。

でも、濃厚ではあっても、万人が納得する優しい甘さがベースにあるところは変わりません。ホワイトチョコと蜂蜜がとても柔らかな甘味を作り出しています。

不思議なのは、異質な存在だと思いがちな蜂蜜とスパイスがとても近しいこと。スパイスは何かな、シナモンとナツメグ? オールスパイス? 品定めはともかく、蜂蜜の満足感がずいぶん高くなっています。
さらに、ライムの香りが清らかに広がって、スッキリ感が出ているし、最後に生姜のホットな味わいが残るのも面白い趣向。

複雑な構成なのに、ちっともうるさくなく、それどころかスッと軽やかに食べられます。なにより、品がいいですね。
それは、存在を主張しながらギリギリまで量を加減しているからなのでしょう。
ベテランならではの腕の冴え。お見事です。




●『えんどう豆のクリーム』 内径7.5cm 深さ3cmほど。(※写真、黄色に写ってしまいましたが緑色です。すみません)
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フランス菓子店なのに、何故に、えんどう豆? 

年齢とともに健康的と言われている和素材へシフト? いや、日本人だから日本の素材を使うとアイデンティティがアピールできる? 野菜をつかったパティスリーが人気だから便乗して? 

あはははっ〜、どれも違います。
料理全体を俯瞰しての発想、といえば一番近いでしょうか。

中谷さんのキャリアは、当ブログ「パイ日和」の“特集10”でご紹介したように、料理から始まっていますし、レストランでキュイジニエと組んでデセールの開発をされたり。料理の素材にもイケイケなのですね。
シェフも、“歴史のある和菓子だって、葩餅など野菜をふつうに使っているでしょ”。
ただ、そこに季節のおいしい素材があった、じゃあ使ってみるか、ということなのですね。

白い器に、緑色。いや、えんどう豆の色。そのクレームブリュレ、と言えばいいのでしょうか。
えんどう豆の香りを楽しむためのものですから、パリンとしたカラメリゼはしていません。えんどう豆を茹でてピュレを作ってブリュレ生地と合わせて、ゆっくりと低温で湯煎にかけるだけ。わぉ、なんともシンプル!

それにしても、えんどう豆のみ。
あろうことか、えんどう豆のみ。

では、スプーンで掬って口に運んでみる …… ふふふふっ〜、えんどう豆だあぁ。
春の息吹が口の中に甦ってくるかんじ。
これ以上“なーんにも引けない”“なーんにも足す必要がない”からこそのストレートさ。
季節の恵みを満喫できる、1ヵ月ほどの、ほんの短い期間だけのお菓子。

だけど、ご注意あれ。ただ、豆の味わいや香りだけのお菓子ではないのです。
なんともいえない舌触りのきめ細かさが、このお菓子をかけがえのない美味しさにしているのだと思います。ピュレの裏ごしが丁寧なのでしょうね。ねーっとりとした重さもあって、どこまでもなめらか。ザラつきはどこにも感じることが出来ません。
お茶席のお菓子であってもいいような、季節の心づくしを感じます。ふうぅ。

シェフに、“若い人なら、クリームを絞ったり、ソースを掛けたりするところですよね”と尋ねたところ、“引き算です”とはにかんだような笑顔で答えてくれました。
翌日、弟子の村田さんとこの話しになったのですが、彼だったら“緑に赤が欲しくなるから、チェリーとフランボワーズかなにか…”ふむ、これまた、村田シェフらしい。

昨年までは空豆(厨房のスタッフ泣かせ、という笑い話も聞きましたが、あはっ)も入っていたそうです。香りはもっと強かったでしょうが、純粋じゃないということかな。えんどう豆の香りを体験すると、無性に豆ご飯が食べたくなりました。

もう一つお聞きしたのは、“利益の取れない商品でも季節になくてはならない商品があるのです”との言葉。
このお菓子、材料代もかかるし、手間もかかるということで、利潤追求の考えでは作れないお菓子だとのこと。どうしても、季節の味わいとしてなくてはならないとの想いで作られているのです。
その熱い思いは、“いいものを食べたなぁ”という印象を与えずにいません。お見事!




中谷シェフ、ますます若々しくお元気なご様子。
この分だと、次々に独立する優秀なお弟子さんたちも、師匠に追い付いたかなと思ったら、また1歩先を歩んでいる師匠の後姿を拝むことになるでしょう。永遠の目標となりそう。

「ルシェルシェ」の村田シェフ、「ラクロワ」の山川シェフをはじめ、関西圏以外にもぞくぞくと有力シェフを輩出しているのは、きっと人間を中心におくという中谷シェフだからこそ。
冒頭のお客さんとの触れ合いも、昨年5月のリニューアル後から積極的に始められたそうです。
もともと、お店によくいるシェフだなぁという印象は強かったのですが、“あれっ、以前はお客さんの顔をちゃんと覚えていたのに、知らない人がいる”という反省から。
大人気店でお客さんは引きも切らず。にもかかわらず客の顔を覚えておきたいというのも、なんとも凄いですね。
それにもまして、50歳すぎて、重鎮と呼ばれる立場となっても、いいと思ったことはなんの衒いもなく即行動。硬直した巨匠のイメージは、いともたやすくうっちゃられます。

ということは、四半世紀過ぎたとはいえ、いつだって人は人生の途上。「なかたに亭」のこれからにも注目していきたいですね!



●『生姜と蜂蜜』420円  『えんどう豆のクリーム』472円

●「なかたに亭」
 大阪市天王寺区上本町6-6-27  TEL06-6773-5240  定休日/月曜、第3火曜

※当ブログ「パイ日和」の“特集10”に詳しい「なかたに亭」の記事を掲載しています。よかったらどうぞ。


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