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zoom RSS 2016年4月オープンの新店! タツヒト サトイ(1)『デリス』『ハニーハント』『サオトボ』…

<<   作成日時 : 2016/10/11 21:42   >>

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2016年4月15日オープンの京都の新店、「パティスリー タツヒト サトイ」さん。1985年京都生まれの里井達人さんのお店です。

「実家はパン屋です、歴史は70年くらいかなぁ。じいちゃんが戦後すぐに修業に出たと聞いていますから」。一族で3店舗を構える、その名も「ブラザーベーカリー」。老舗のパン屋さんです。
ご本人の最初の修業先も、パン屋さんの「フリアンディーズ京都二条店」オープニングスタッフ。ということもあって、こちらのお店では、生ケーキ以外にパンの品揃えが50種に迫ろうかという勢い。すごい品揃えですね。

ケーキの修業は、横浜の「デフェール」で半年ほどの販売体験の後、「ユウジアジキ」で4年。専門学校に通っていなかったこともあって、フランス語で書かれたルセットが読めない段階からスタート。にもかかわらず、スーシェフにまで一気に駆け上がったそうです。
実家ではキッチンに立ったことがないそうですが、働くイメージは身体に染み付いているでしょうし、小学1年生から高校まで続けた野球によって鍛えられた体力と集中力で、駆け足の昇進を実現したのでしょう。

さて。安食雄二シェフというと、関西のケーキファンにとってはなかなか行けず、憧れの存在になっているのではないでしょうか。繊細でエレガントという評は目にしているものの、シェフの外見や『ジヴァラ』『サオトボ』といったケーキの見た目から男性的な“ガツン”とした味わいをイメージしている人が多いのでは?
安食シェフの味が大好きという、直弟子タツヒト サトイが伝えるその実態とは……。



●『デリス』     7.5×2.5cm 高さ5.5cmほど。
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上からショコラブラン、フランボワーズ(ほんの少しオードヴィ入り)、ピスタチオ、それぞれのムース。
ココアのビスキュイサンファリーヌ(厚め)、フィヤンティーヌをチョコレートとヘーゼルのペーストで和えたもの。
まっすぐな線の5層のプチガトーです。

酸味、油脂感、苦み、甘みが濃厚に競い合うイメージがありますが、いやいや、なんともデリケート。
この淡彩の涼やかな味わいに『デリス(美味しいもの)』という名前をつけるというのは、この微妙なバランスにこそ美味しさの秘訣があるという確信があってこそ。

優しい色合いだと思いましたが、それでも安食シェフなのだから…と、やや濃厚なものを期待していただけに、一瞬“これでいいのか?”という疑問が浮かばなかったと言ったら嘘になるでしょう。

でもなのです! 
食べている間にフランボワーズの甘酸っぱさの可憐さ、ピスタチオのまったりとしたナッツ感、ココアのほろ苦さ、サンファリーヌのふんわりとした口当たり、ショコラブランの伸びのある甘さの世界、フィヤンティーヌの軽やかな食感。
それらの上澄みのような清らかな味わいが、じつにクリアに伝わってくるではありませんか。
「これが安食ワールドだったのか!」と、しばしうっとりとしたのでした。ふうぅ。

じつはオリジナルはピスタチオはムースではなくジョコンド、チョコレートがムースだそうです。里井シェフのアレンジ、いいですね。




●『洋梨とキャラメルのショートケーキ』   辺9.5cm 高さ6.5cmほど。
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こちらは里井シェフのオリジナルだそうです。
季節の限定品。

洋梨とカラメルの組合せは、沢山食べてきていますが、よく焦がしたカラメルの苦甘さのなかに鮮烈な泉(洋梨の瑞々しさ)が湧き出すようなイメージが多かったように思います。

こちらのものは、カラメルシャンティの淡い色からも想像できるように、カラメルはほんのりとした風味だけ。ミルクカラメルの優しい世界に覆われる感覚です。
逆に淡いカラメルだからこそ、洋梨ははっきり甘酸っぱさや、独特の淡い香りまで、ちゃんと自己主張しています。

生地は、ホワホワと軽やかな食感で口溶けのいいジェノワーズ。下の2層の間にカスタードを薄く塗ってコクを出すなど、芸が細かい。

まさにショートケーキという名前を裏切らない、いくつでも食べられて、食べ飽きることのない優しさに溢れる味わい。
一口ごとに穏やかな心を取り戻していきます。




●『ハニーハント』   径5.5cm  高さ6cmほど。
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安食シェフのルセットの再現。代表作の一つ。

蜂の巣の六角形。
ビスキュイジョコンドをメープルにどっぷりと漬けたものを土台にして、その上に蜂蜜のムース、ヴァニラ風味のクレームブリュレを射込んでいます。
トップにはメレンゲを絞り(バーナーで焼き色)、中にカラメルソースを流しています。

メープル、蜂蜜、カラメル。
甘いものを3つも揃えていながら、甘くどい世界にはならないのです。たしかにたっぷりした甘さなのですが、品が感じられます。

ジョコンドはやや厚めに焼いて、なかに湿度を保ちしっとりとした部分を残します。一度トーストして表面をサックリさせた上でメープルに漬けることで、たっぷりと滲みてくれるのだそうです。
このやや重みのある個性的な生地があるからこそ、軽薄に流れることなく、味わいに深さが感じられるのでしょうね。
さらにかすかにシナモンが振られ、蜂蜜とメープルをつなぐ役割を負わせているのだとか。食べてはほとんどわからない世界ですが、蜂蜜とメープルの寄り添い具合からして、うまく機能しているのでしょう。さすが繊細ですね。

そして、3つの甘さが、それぞれに独自の癖を発揮してむせ返るような強い香りを競い合っているのに、微妙に濃度が抑えられているのか、少しもくどく感じず、甘さの種類や香りの違いを楽しめるのです。

なにより、一瞬にして消えて行く滑らかな口溶け、甘い快感のみを残して行く鮮やかさ。
これぞエレガンスの極地のようなケーキ。お見事!




●『サオトボ』   径5.5cm  高さ7.5cmほど。
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安食シェフのもっとも有名な作品。

火山をイメージしたお菓子で、レンジで20秒温めると、なかからフォンダンショコラがマグマのように噴き出してくるという仕掛け。

メレンゲにショコラ(森永/オペラ社レガート)を合わせたクラシックショコラの生地の中に、ピスタチオ、ヘーゼル、アーモンドのダイスが入ったガナッシュとゆるいガナッシュの2種を閉じ込めています。

シンプルなお菓子ですが、安食ワールドを超えて日本を代表するチョコレートケーキの地位を占めているといっても過言ではないでしょう。
その知名度に恥じない強い印象を残すケーキです。

チョコレートの風味は強く出しながら、少しも重くなりません。
クラシックショコラは極力粉を少なくすることで口溶けが良く、べったりつぶれて重くなるという場面がありません。ガナッシュの口溶け(ゆるい方は溶け出しています)の滑らかさ、スピード感が、生地の溶け具合をさらに加速しているのでしょう。

力強いインパクトを与えておいて、スッと姿を消してしまう、怪盗の出現のように鮮やか。いやはやお見事。




訪れた日は、生ケーキ10種にプリン、パンは50種ほどで、夕方にはケーキもパンも残り少なくなっていました。外を眺めることができるカウンター席が5席ほどあって、そこでいただきました。飲み物(珈琲・紅茶・自家製レモネード)は、紙カップのカジュアルなスタイルですが、220円〜320円とリーズナブル。
その日は、こちらのチーズタルトを目指して千葉から来られた女性のお客さんがいたり(少しお喋りを)、ご近所の男性客が勝手知ったる感じで、カウンター席でパンとお茶で寛いでいたり……と、入れ替わり立ち替わりなかなかの盛況。

今回は、里井シェフではなく“安食シェフ流エレガンス”紹介のようになってしまいましたが、里井シェフ自身、安食ワールドの大ファンで、再現したくてしょうがないのだそうです。「甘味がガツンとこないし、お酒も多用しないし、シェフが作るお菓子は優しいのです」とのこと。
でも、すべて丸写しなのではなく、材料や濃度を変えたり、例えば素材が生地に入るのかムースに入るのかを入れ替えたりと、商品名を引き継げる範囲でのマイナーチェンジを自分の趣味で行っています。
まだまだ、お手本の見える段階ですが、里井ワールドの礎石を1個1個据えている段階というところですね。いずれにしても、期待の持てる新人の登場です。

いやあ、それにしても楽しかったなぁ。里井シェフ、とても大らかでオープンマインド。スポーツマンらしい明朗さで、何を訊ねても、冗談を交えて親切に応えてくれるのです。自然に話が盛り上がって、何度笑ったことか。晴れ晴れとした気分で店を後にしたのでした。
次回以降、里井さんらしさの見えるものや多彩なパンのコレクションを紹介することにしましょう。



●『デリス』490円  『洋梨とキャラメルのショートケーキ』520円  『ハニーハント』450円  『サオトボ』500円    (※内税)

●「パティスリー タツヒト サトイ」
  京都市左京区北白川追分町2番地Eフラット北白川1F  TEL075-285-1171  定休日/不定休  営業時間/8:00〜19:00

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