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zoom RSS コートドール(1)『ディナー/鰆の薫製、いのししのテリーヌ、仔羊のロースト、牛テールの赤ワイン煮…

<<   作成日時 : 2016/12/23 23:32   >>

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何十年越しだろうか、憧れのフレンチレストラン「コートドール」に行ってきた。シェフ斉須政雄氏の「十皿の料理」を読んで以来のこと。
旅行中はなるべく、楽な服装で歩き回り、汗をかいて動き回ることが多く、気張った夜は避けてきたために、いつのまにか時代が経てしまい、頭に白い物を置くようになってしまった。いくらなんでも食べないまま終わってしまってはいけないと奮起し、ようやく念願かなった次第。

地下鉄・高輪白金の駅から10分ほど、高級マンション三田ハウスの1Fにある。予約の際に初めてだと迷うから駅から電話をするようにと言われていたのだが、時間も早かったので地図を見ながら、迷ったら迷ったで土産話になると行ってみた。地図ではよく分からない水路に隔てられ、曲がるべきところで曲がれず、一旦通り過ぎて戻ってくる格好に。マンション内に入っても、門からの進行方向と逆向きに入り口があるので通り過ぎてしまった。
おかげで余っていたはずの時間がジャストオンタイム。たしかに、土地勘がないと迷いやすいかもね。

気さくなマネージャーに出迎えられ、その一瞬の笑顔でリラックスさせてもらえた。メニューを選んでいるときも、ソムリエが優しく微笑んでくる。“食事は楽しむためのもの。そのお手伝いをさせていただきます”というメッセージが自然に伝わってくる、なんとも居心地のいい雰囲気が出来上がっている店だ。
もちろん斉須シェフの料理が看板なのだが、サービスマンたちはその値打ちをさらに高めようと、熱心に取り組んでいる。肩肘張る方向に向くことなく、品下ることなく、楽しい食事の時空間を作り上げている。

お任せコースは15000円でデギュスタシオン風にメニューのすべてを味わえるようだった。
ところが、単品の値段が抑えられていて、単品でコースを組立てても、コースと同等程度の金額になるので、ポーションが大きく、食べ応えのある方を選んだ。
ほとんどヘビーな肉ばかりのコースを選んだのを見て、ソムリエが「やはり赤を選ばれますか」と話しかけてくる。ワインリストには10万円を超える高級ワインがズラリと並んでいて、1万円以下は数えるほど。予算の都合上、一番安いのを選んだが、「素晴らしいセレクトですね」と誉めてくれる。リストに載せた以上は料理に負けない、誇りある選択という精神が貫かれていて嬉しい。

さて、料理が運ばれてきた。    (※書き手はクボタ、食事のパートナーはイワモト)



●アミューズ/『イノシシのパテ載せガーリックトースト』
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カナッペにイノシシのパテを載せている。
前菜との素材のかぶりが気になったが、口開けにジビエを持って来ることからくる期待感も同時に湧く。適度に塩気があり、ニンニクの香りとともに食欲を刺激。
パテはあまり捏ねていないようで、あえてグルテンを出さずに、肉のストレートな風味を全面に出している。




●前菜/『イノシシのテリーヌ フォアグラ入り』
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前菜・メインの写真は、シェアしたハーフポーション。一人前は、今時としてはかなり大きめ。

こちらはテリーヌなのでなめらかな食感。
えっ、と思うほどに塩が控えられていて、イノシシもフォアグラも素材の持ち味がむき出しになっているように感じられる。下手な人が真似をすれば料理以前、ということになりそうだ。料理として成り立つギリギリの塩加減、野趣を前面に押し出しつつ洗練をも感じさせるのが不思議。銀杏を入れて、見た目にも食感でも小さなアクセント。

付け合わせはレンズ豆のサラダ。ただの茹でっぱなしのような素っ気ない見掛け。食べてみると、どこかから甘味が飛び出してくる。料理に一切砂糖は使わないとか。甘味は野菜か酢を煮詰めたものによるものがほとんどだという。
ギャルソンに訊いてみると、果たして、当たりとばかりに指をさしてくる。正体はホワイトラムだそうだ。風味が飛び出してくるイメージなのは、レンズ豆の外皮に包まれたものが噛む時に破裂するということなのだろうか。プチプチした食感も豆だというから、外皮に随分活躍させているようだ。

主役のテリーヌにラムを使うのが一般的なところを、付け合わせに持ってきたことで、一挙に印象的な一皿に変貌しているといえるだろう。お見事。




●前菜/『鳥取直送サワラの薫製 香料をふって』  ※写真撮り忘れ

魚に春と書き、一般的に春が旬と言われているが、じつは秋から冬にかけてが美味しいとのこと。そういやあ、近所のスーパーでも肉厚な鰆がでていたね。ヒッコリー(くるみ)で軽く香り付け。

驚くのは火の入れ方。ナイフで切り分けた時に、中までしっかり火が通っていると見えたのに、口に入れると食感はミキュイそのもの。身の柔らかい魚の魅力を活かし切っている。舌にエロティックにまとわりついてくるので、鰆の味わいがしっかり伝わってくる。ラビゴットソースの淡い味付けが、主役の素顔を見せるのに役立っている。

付け合わせの紅芯大根、紫大根、人参はラビゴットソースで程よく化粧されたよう。主役と付け合わせではソースの働き方が逆になるのも面白い。




●メイン/『アイスランド産仔羊のロースト ラタトゥイユ添』
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(※写真、既に一切れ切り分けて食べた後に気が付いて撮ったもの。それだけ、すでに料理に夢中になっていたということの証になるだろう)

見事なロゼ。表面はカリッと焼けていて、中はかぎりなくしっとり。旨味たっぷりの肉汁が迸り出る。これぞ肉の味わいというものだ。シンプルの極みで、ハーブの香りも付けていない。塩のみ。自信漲る料理だね。

フライパンに仔羊の脂身を敷き、その上に背肉を載せて焼き、オーブンに入れる。最後にもう一度、表面だけをカリッと焼くのだそうだ。デリケートな火入れこそがキュイジニエのキュイジニエたるところ。これまた見事だね。

付け合わせはラタトゥイユと書かれているが、じつはソースになっていて、野菜はズッキーニとピーマンのロースト。ソースにからめるとやはりラタトゥイユなのだねえ。ラタトゥイユソース、仔羊にもよく合っていた。




●メイン/『牛テールの赤ワイン煮』
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赤ワインで6時間煮たものを、直前にもう一度40分煮て、最後に煮汁を取り出しさらに赤ワインを加えて煮詰め、ソースとする。

フルポーションのゴロンとした牛テールの付け根部分を見せてくれた上で、ほぐし身にして取り分けてくれる。
もう切り分ける必要がないのでメイン用なのにカトラリーはデザート用のように小さい。そのほうが食べやすいという細かな気遣いだ。

子供の頃、我が家ではテールの醤油煮込みをちょくちょく食べていた。昔は牛といえども今ほど高くなかったし、テールやタンともなればずいぶん安かったように記憶している。美味しくて骨までしゃぶっていたものだ。
時間をかけることで、どっしりとした重厚感のある味わいを創り出すとともに、ホロリとした繊細な食感も手に入れ、素人料理から隔絶した世界を築いている。

ニンジンのピュレが添えられている。オレンジの華やかな風味がするのだが、コリアンダーは使っているけれど、オレンジの風味はニンジンを煮詰める際にニンジン自体が香るものなのだそうだ。この組合せも素晴らしい。




●デザート/『熊本産和栗のモンブラン』
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なんとも背の低いモンブラン。
メレンゲにシャンティ、熊本の和栗のダイス、ゆるゆるのモンブランクリーム。一応、モンブラン用の口金で絞っているんだけど。山にはならず、キラウェア火山の溶岩のように流れている。
甘さはメレンゲのみといったところ。ダイスはまだ少しシャキシャキとした食感の残る半生に近いもの。

モンブランのイメージとはまるっきり別の食べ物。こちらではデザートまでが料理の一環と考えられていて、デザートも極力甘味を排しているとのこと。
なるほど納得。栗を食べるという意味では、正に、栗がストレートに押し出されていて、とくにダイスが入ることで、心底栗を味わった気分に。



●デザート/『チョコレートのマルキーズ カカオニブをふって、そのソース』
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マネージャー氏によると、ヴァローナのカカオ76%のクーベルチュールを使ったガナッシュ、トップにカカオニブを散らしている。ちなみに、マルキーズとはバヴァロワとムースの中間のような口溶けのものだとか。

たしかに、口溶けが良く、カカオの風味満点。
カカオがこれだけ強くても、甘味を抑えていると食後感はまったく重くない。さらりと平らげた。



●ワイン/サンジュリアン『フィエフ ドゥ ラグランジュ 2008』
値段で選んだのだけど、ソムリエ氏によると、タンニン主体のボルドーの中でも傑出した地域の一つで、サンテステフやサンテミリオンほど重くなりすぎず、どこかエレガンスのある繊細さがサンジュリアンなのだそうだ。
静かに抵抗感なくスッと入り、ちゃんと呑み応えがある。2008年は理想的な当たり年だとか。元気がいいのでまだ若々しさを残しているとのこと。たしかにベリー系の豊満な香りに満ちている。料理をも華やかにしてくれる。
どこかに冷たい硬質な香りがあるのが特徴で、プロのテストの際には鉛筆の芯と答えるのが常道らしい。「HBか2Bといったところですね」と笑わせてくれる。
カラフにデカンタしてくれているので、次第に落ち着いてきて、最後の方は干しイチジクのような甘い香りが加わってきたように感じた。ソムリエ氏は「デカンタすると熟成香も出てきますからね」と微笑んだ。



●食後の飲み物/『ハーブティー&エスプレッソW』
ハーブティーはルイボスティーにレモンバームとオレンジ、りんご。
エスプレッソは味にまろみがあったのは良かったけれど、クレマが少ないのがちょっと残念。



●プチフール/『フィナンシェ』『マカロン』『ガナッシュ』
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飲み物以降がお口直しということになるのか、デザートと違って、こちらははっきり甘い。
フィナンシェはしっとり、マカロンは珈琲クリームを挟んだもので、表面はツルツルしたリスタイプだけど、ネッチリとした食感はダミアン風でもある。ガナッシュは滑らかな口溶け。

ちなみに、こちらではプチフールとは呼ばず“ミニャルディーズ”と呼んでいる。若手に任される仕事で、雑用に追われる中で、いかに正確に几帳面な仕事をするか、その素養を育てるための課題だそうだ。




3時間たっぷり楽しませてもらった。声高ではない、一見何もしていないかに思えるほどの料理、必要最低限の塩とピンポイントの繊細な火入れ、考え抜かれた付け合わせ。斉須シェフの料理は洗練の極にあると言っていいだろう。上品にしながら力を失わないところが素晴らしい。
別れ際に、よく質問に答えてくれたギャルソンも含め、サービスの質が高いことの礼を言い、ブログに書くから名前をと促しても、裏方に徹することが自分たちの責務と考えているようで教えてもらえなかった。これも清々しい対応。優れたサービスチームにもエールを送りたい。



●『いのししのテリーヌ』4600円  『鰆の薫製』4000円  『仔羊のロースト』5200円  『牛テールの赤ワイン煮』5800円    『モンブラン』1500円  『ショコラマルキーズ』1200円  『飲み物』700円・900円  『フィエフ ドゥ ラグランジュ 2008』8000円   
(※税サ別/Total 37,897円  ※アミューズ、ミニャルディーズ、パンはサービス)

●「コートドール」
  東京都港区三田5-2-18三田ハウス1F  TEL03-3455-5145  定休日/月曜・第2、第4火曜


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