ミニョネット(1)『白桃のショートケーキ』『フロマージュクリュ』『ノワゼット』『新茶のモンブラン』…

阪神電鉄岩屋駅からすぐのところにある「ミニョネット」さん。
しっかり焼き込んだパイを中心とする焼菓子が群を抜いて美味しいお店ですが、生ケーキも燦然と魅力を放っています。
今回は、夏らしい爽やかで軽やかなケーキに心奪われてしまったので、それをご紹介しましょう。


●『白桃のショートケーキ』 3.5×9cm 高さ6cm(桃まで)ほど。
画像普段はあまりこの手のショートケーキは食べません。
どうしてもイチゴの酸味を期待するところがあって、桃では頼りなくなってしまうと思っているのです。

今回、お店のスタッフの方が“私は今これが一番好きです。柔らかくて優しくて、もうとってもおいしいんですよぉ”と食べた時の感激を思い出してか顔中ニコニコして、熱心に勧めてくれました。
それならば、と試してみることにしました。それが、ビンゴ!

やはり薄味の傾向は否めませんが、シロップに軽い酸味と桃のリキュールの風味付けがあって、ちゃんと存在感を主張しています。
それだけでなく、スポンジの柔らかさ、クレームシャンティの軽さが極端なほどで、形を保つのがやっと、というくらい。この儚さを活かすにはイチゴの食感ではなく、完熟のジューシーな桃の一瞬で消えてしまう食感でなければならなかったのです。




●『フロマージュクリュ』 径6cm 高さ6cmほど。
画像これはこちらの一年を通じての定番商品。
クリームチーズにサワークリームとヨーグルトの入った、爽やかな酸味と全体を引き締める塩気が特徴的なレアチーズケーキ。

底のサクッとした薄いクッキー生地が単調に陥らないための欠かせない相棒。
その上にほんの少しフランホワーズのジャムが塗ってあり、いいアクセント。
そのまた上には、薄くスポンジを噛ませています。これはチーズの部分のしっとりとした水気がクッキーを湿らせないための工夫でしょう。
トップの綺麗に絞られたクレームシャンティは甘みを最少限に控えた軽いもので、ミルクの香りが魅力的です。

何度食べても、品のいい酸味と、軽やかな食感にうっとりしてしまいます。






●『ノワゼット ノワゼット』 幅9cm 高さ9cm弱 厚み2.5cmほど。
画像コーヒー風味の生地でヘーゼルナッツのクラクランの入ったクリームを巻いています。
ナッツはそのほかにもクルミ、アーモンドが入っているようです。
クラクランというのは、褐色にまで焦がしたヌガーを細かく砕いたものを言います。
ですから、このクリームはヘーゼルナッツ風味のカラメルクリームだと思えばイメージしやすいでしょう。

すごくコクがあって、それだけでも嬉しいくらいなのに、たっぷり載せられているナッツ類がよく炒られてカリカリッとした歯触り。
さらに芳ばしい香りをこれでもかと主張しているので、もうたまりません。クルミのリキュールが使われているので、その風味も利いているようです。
あまりにナッツの主張が強くて、生地のコーヒー風味はどこかへ消えてしまったよう。でも、風味が加えられていなかったら、ナッツとの距離が開いて一体感が無くなっていたのかもしれませんね。

この美味しさに、クラッ。
なるほど、“ノワゼット ノワゼット”はじつは“ノワゼットのゼット”じゃないかと思うほど。最後、究極のノワゼット! ナッツの芳ばしさに脳髄を刺激されてしまいました。





●『ル・トロピック』 径6cm 高さ4cm強ほど。
画像これも形を保つのが難しいほどの、ふわふわケーキ。

薄いスポンジの上にパイナップルムース、その中にパイナップルの果肉とココナッツがちらちら。
もう一度スポンジがあって全体をムースで覆って。隠し味にホワイトラムが使われているそうです。

この組合わせはトロピカルカクテルの代表ともいえる“ピニャコラーダ”ですね。
一口、なるほどトロピック。
パイナップルの甘酸っぱさとココナッツのけだるい香りがよく合っています。すっと消えていく感じも、カクテルから発想されたのがわかります。
リゾート気分のケーキです。







●『新茶のモンブラン』 径6cm 高さ7cmほど。
画像サツマイモなどよくあるモンブランのアレンジものには手を出さないのですが、新茶クリームの色鮮やかさに惹かれてつい購入。
これも大当たり。

さて。ヘーゼルナッツとアーモンドのパウダーの入ったメレンゲを土台に、ホワイトチョコのショコラシャンティ、新茶のクリーム、そして、もう少し濃度の高い新茶クリームを絞ってあります。
新茶クリームにはオレンジのリキュールが使われ、香りがかなり強く主張。新茶も、粉末を購入時に振り掛けてくれるので、よく香っています。

この日は酷暑で、ほとんど溶けかけというほど、クリーム類がたっぷり含んだ空気で柔らかく、スッと消えていく食感が軽快です。
新茶は柔らかくまろみはあるのですが、十分にお茶の渋みを主張しています。オレンジの甘い香りと合わさると爽やかさ軽やかさが強調されて、夏に冷たい緑茶が一番の涼味であることが思い出されます。
斬新なアイデアと穏やかな着地。味わいとともに、技の切れも爽やかと言うべきでしょう。




今さらながら、ケーキにおける空気、泡の美味しさというものに目を開かれた思いがします。食感の軽やかさだけでなく、味の伝わるスピードや濃度にも関係していて、口いっぱいに速やかに広がるけれど、けっしてくどくならない。味覚の面でも軽やかさが実現できているのです。
これはアイデアも素晴らしいですが、技術の勝利と言わなければならないでしょう。クレームシャンティに泡を入れるといっても均一な細かな泡でなければ、すぐに潰れてしまいます。逆にかき混ぜ過ぎていると違ったものになってしまいます。いい泡をたっぷり入れられるのはすぐれた職人の証と言えるでしょう。
一瞬でとけて無くなってしまった儚い味を、いつまでも記憶にとどめさせるだけの名品でした。


うだるような暑い日々が続いています。猛暑お見舞い申し上げます。
あまりの暑さのせいで、普段あまり手を出さない、空気を含んだソフトなものを中心に購入してみました。おかげで、“夏なればこそ”という季節感たっぷりのケーキに出会えました。この暑さも捨てた物ではないようです。
こうなりゃいっそのこと酷暑を愉しもうと、「getz/gllberto」の“SO DANCO SAMBA”なんぞを部屋に流しながらいただきました。
ソフトでメロウなトーンのボサ・ノヴァは、柔らか系のケーキときれいにシンクロします。Vai,vai,vai,vai~♪と口ずさみながら、けだるくて甘美な午后のひととき…。



●『白桃のショートケーキ』410円  『フロマージュクリュ』368円  『ノワゼット ノワゼット』400円  『ル・トロピック』400円  『新茶のモンブラン』450円 

●「アトリエ・ミニョネット」
 神戸市灘区岩屋北町5-1-11  TEL078-882-1181  定休日/月曜