カヤヌマ (1) 『トップフェン』『リンツァートルテ』『ヌースボイゲル』
東京・虎の門にあるオーストリア菓子の名門「ツッカベッカライ・カヤヌマ」さん。
ウィーンで修業しマイスターを取得された栢沼稔さんが87年にオープンしたお店で、高いけれど、やっぱりここでなければとの信奉者の多いお店です。数年前、隣にレストラン「K und K(カー ウント カー)」を併設。やはりウィーンでマイスターを取得した神田シェフを招き、新たに話題になりましたね。
泊まったホテルから歩いて10分も掛からないところにあるので、チェックインして片づけを済ませて、すぐに行ってきました。
●『トップフェン』 3×7cm 高さ3.5cmほど。

トップフェンというウィーン独得のチーズを使ったチーズケーキ。
ウィーン菓子のお店は関西にも何軒かあります。このブログでもご紹介してきました。それらのお店もトップフェンを使いたいけれど、手に入らないからと、カッテージとクリームチーズを合わせたり、クリームチーズにヨーグルトを合わせたりとさまざま。
ところが、こちらではレストランと共同することで直接買い付けが可能になったそうです。取り引きロットとお店の消費量がやっと合致したということでしょう。
日本で唯一の正真正銘のトップフェンのケーキの登場です。
さぁて、と意気込んで食べてみると……??
淡い味のチーズだけに微妙です。トップフェンもどきのものと直接比較していなので、記憶のなかの味との比較となり、まったく頼りないことこの上なしですが、本物のほうがややコクがあるのかな、と感じたレベル。
使いたい気持ちは分かります。ウィーンでこのチーズに親しんだ人にしてみれば、“これでなければ”だし、紛いものはあくまで紛いもの、なのでしょう。でも門外漢にとっては正直のところ、やはり? です。
もちろん、味はよく出来たケーキです。ヴァニラビーンズが入り、ラムレーズンがたっぷり入ったベイクドタイプ。ほのかなチーズ香、ほんわかとしたバニラの香りを覆うようにラムレーズンの香りがしっかり漂います。主役はラムレーズンかなと思うほどの強さで、トップフェンは優しく包み込んで全体を円やかな世界に仕上げているというところ。いいケーキです。
翻って思うに、ウィーン菓子の真髄を頑固なまでに伝えてくれるお店があるということは、嬉しいことではないでしょうか。
●『リンツァートルテ』 辺9cm 高さ4cmほど。

ウィーンの高名な伝統的な焼菓子。
小さいのに、えっ、525円?! かなりの値段です。
旅行中でなければ買うのを躊躇したかもしれません。
でも、そんな不満は一口食べて一瞬にして吹っ飛びました!
まず、上品なシナモンの香りが爽やかに広がり、ハッとしてしまったのです。
その後、ラズベリージャムの少し濃厚な香りが膨らみを加えてきます。アーモンド生地も芳ばしいし、表面の模様付けの粉糖すらなにか香り高いもののような。これぞウィーンの社交会の実力か、と貴重な体験をした気分。
生地はザクッとしたよく焼けたもの独得の力強さを感じさせつつ、固いということはなく、脆く崩れていきます。ケーキクラムが入っているのでしょうか、空気を含んだような柔らかさがあり、口溶けがよく、一瞬後にはヌッチャリとした食感に変身。しっかり焼いた重厚感は当然あるのですが、どちらかというと軽快な印象が余韻として残ります。
う~ん、これはもぅ! なんて凄いんだ、と力んでしまいました。他店では味わったことのないレベル。瞳が爛々と輝いていくのが自分でもわかります。まったく凄い。
見るからに地味なお菓子なのですが、一般のお店のもののように素朴ではないのです。生地の独特の香りとテクスチャーは、“繊細、洗練”といった言葉がお似合い。想像だにしなかった華やかで優美な世界に導いてくれます。
●『ヌースボイゲル』 7×11cm 高さ5cmほど。

クルミの餡を薄い醗酵生地で包んで焼いた、月餅のような風味のお菓子。
普通V字形に作るのですが、こちらのものはクロワッサンというか、中国の花巻のようというか、昔懐かしのコロネ風というか。はじめて見る形です。
ラム酒が利いています。シナモンも少し入っているのかな。
生地も普通はボソッとした素朴なものですが、こちらは卵を多く使ってリッチな感じ。ずいぶん華やかなお菓子に格上げされました。
素朴なものは素朴なままにという考えもありますが、これはそんな依怙地な考えを軽く一蹴してしまうほどよく出来ています。生地の豊かさも餡の香り高さも、元々このようなお菓子であったかのようにピタリと決まっています。
元々の個性を失わないように、時間をかけて中身も充実させてと手を掛けて、長所に磨きをかけた良さが全面に出ています。高級なお店が素朴なものをお店に出すのに、いい洋服を着せて、化粧をしてというところ。田舎娘の気立ての良さのまま、ちゃんとレヴュッタントに無事デビューした印象のお菓子。
マダム(?)の応対がとても洗練されていて、気持ちのいいお店です。洗練といっても気取っているのではなく、お客のほうが距離を取れば素っ気無くない程度に退く。お客が話し掛けると暑苦しくない程度に精神的な距離をすっと寄せてくる。ニコニコ、ハキハキとした応対、知識もあり、親切であって必要以上に近付かない。媚びない。下品にならずに客あしらいが上手いというのは、めったに出会えるものではありません。
品数はそれほど多くありませんが、どれもしっかり完成させられたものばかり、という印象です。パリのお菓子のように華やかで神経張り詰めてというものではありませんが、ウィーン菓子には独得の気品があります。
こちらにはもう少し通って詳しく知りたいと思わせる、深くウィーン文化に根を降ろしたという風格のようなものが、お菓子からも、お店からも、人からも感じられますね。
●『トップフェン』525円 『リンツァートルテ』525円 『ヌースボイゲル』315円
●「ツッカベッカライ・カヤヌマ」
東京都港区赤坂1-4-5 TEL03-3582-5689 定休日/日曜・祝日
ウィーンで修業しマイスターを取得された栢沼稔さんが87年にオープンしたお店で、高いけれど、やっぱりここでなければとの信奉者の多いお店です。数年前、隣にレストラン「K und K(カー ウント カー)」を併設。やはりウィーンでマイスターを取得した神田シェフを招き、新たに話題になりましたね。
泊まったホテルから歩いて10分も掛からないところにあるので、チェックインして片づけを済ませて、すぐに行ってきました。
●『トップフェン』 3×7cm 高さ3.5cmほど。

トップフェンというウィーン独得のチーズを使ったチーズケーキ。
ウィーン菓子のお店は関西にも何軒かあります。このブログでもご紹介してきました。それらのお店もトップフェンを使いたいけれど、手に入らないからと、カッテージとクリームチーズを合わせたり、クリームチーズにヨーグルトを合わせたりとさまざま。
ところが、こちらではレストランと共同することで直接買い付けが可能になったそうです。取り引きロットとお店の消費量がやっと合致したということでしょう。
日本で唯一の正真正銘のトップフェンのケーキの登場です。
さぁて、と意気込んで食べてみると……??
淡い味のチーズだけに微妙です。トップフェンもどきのものと直接比較していなので、記憶のなかの味との比較となり、まったく頼りないことこの上なしですが、本物のほうがややコクがあるのかな、と感じたレベル。
使いたい気持ちは分かります。ウィーンでこのチーズに親しんだ人にしてみれば、“これでなければ”だし、紛いものはあくまで紛いもの、なのでしょう。でも門外漢にとっては正直のところ、やはり? です。
もちろん、味はよく出来たケーキです。ヴァニラビーンズが入り、ラムレーズンがたっぷり入ったベイクドタイプ。ほのかなチーズ香、ほんわかとしたバニラの香りを覆うようにラムレーズンの香りがしっかり漂います。主役はラムレーズンかなと思うほどの強さで、トップフェンは優しく包み込んで全体を円やかな世界に仕上げているというところ。いいケーキです。
翻って思うに、ウィーン菓子の真髄を頑固なまでに伝えてくれるお店があるということは、嬉しいことではないでしょうか。
●『リンツァートルテ』 辺9cm 高さ4cmほど。

ウィーンの高名な伝統的な焼菓子。
小さいのに、えっ、525円?! かなりの値段です。
旅行中でなければ買うのを躊躇したかもしれません。
でも、そんな不満は一口食べて一瞬にして吹っ飛びました!
まず、上品なシナモンの香りが爽やかに広がり、ハッとしてしまったのです。
その後、ラズベリージャムの少し濃厚な香りが膨らみを加えてきます。アーモンド生地も芳ばしいし、表面の模様付けの粉糖すらなにか香り高いもののような。これぞウィーンの社交会の実力か、と貴重な体験をした気分。
生地はザクッとしたよく焼けたもの独得の力強さを感じさせつつ、固いということはなく、脆く崩れていきます。ケーキクラムが入っているのでしょうか、空気を含んだような柔らかさがあり、口溶けがよく、一瞬後にはヌッチャリとした食感に変身。しっかり焼いた重厚感は当然あるのですが、どちらかというと軽快な印象が余韻として残ります。
う~ん、これはもぅ! なんて凄いんだ、と力んでしまいました。他店では味わったことのないレベル。瞳が爛々と輝いていくのが自分でもわかります。まったく凄い。
見るからに地味なお菓子なのですが、一般のお店のもののように素朴ではないのです。生地の独特の香りとテクスチャーは、“繊細、洗練”といった言葉がお似合い。想像だにしなかった華やかで優美な世界に導いてくれます。
●『ヌースボイゲル』 7×11cm 高さ5cmほど。

クルミの餡を薄い醗酵生地で包んで焼いた、月餅のような風味のお菓子。
普通V字形に作るのですが、こちらのものはクロワッサンというか、中国の花巻のようというか、昔懐かしのコロネ風というか。はじめて見る形です。
ラム酒が利いています。シナモンも少し入っているのかな。
生地も普通はボソッとした素朴なものですが、こちらは卵を多く使ってリッチな感じ。ずいぶん華やかなお菓子に格上げされました。
素朴なものは素朴なままにという考えもありますが、これはそんな依怙地な考えを軽く一蹴してしまうほどよく出来ています。生地の豊かさも餡の香り高さも、元々このようなお菓子であったかのようにピタリと決まっています。
元々の個性を失わないように、時間をかけて中身も充実させてと手を掛けて、長所に磨きをかけた良さが全面に出ています。高級なお店が素朴なものをお店に出すのに、いい洋服を着せて、化粧をしてというところ。田舎娘の気立ての良さのまま、ちゃんとレヴュッタントに無事デビューした印象のお菓子。
マダム(?)の応対がとても洗練されていて、気持ちのいいお店です。洗練といっても気取っているのではなく、お客のほうが距離を取れば素っ気無くない程度に退く。お客が話し掛けると暑苦しくない程度に精神的な距離をすっと寄せてくる。ニコニコ、ハキハキとした応対、知識もあり、親切であって必要以上に近付かない。媚びない。下品にならずに客あしらいが上手いというのは、めったに出会えるものではありません。
品数はそれほど多くありませんが、どれもしっかり完成させられたものばかり、という印象です。パリのお菓子のように華やかで神経張り詰めてというものではありませんが、ウィーン菓子には独得の気品があります。
こちらにはもう少し通って詳しく知りたいと思わせる、深くウィーン文化に根を降ろしたという風格のようなものが、お菓子からも、お店からも、人からも感じられますね。
●『トップフェン』525円 『リンツァートルテ』525円 『ヌースボイゲル』315円
●「ツッカベッカライ・カヤヌマ」
東京都港区赤坂1-4-5 TEL03-3582-5689 定休日/日曜・祝日