パティスリー・ド・グラース (1) 『パリブレスト』『モンテリマール』

大阪、地下鉄西梅田駅近くに、新店「パティスリー・ド・グラース」さんがオープン。
きれいな店構え、白を基調とした明るい店内。シャープなデザインのケーキが並んでいて、ついうっとり眺めてしまいます。それに焼きっぱなしも、焼菓子もそこそこ揃っていて、意欲も感じられます。
そんなお店で、フランスらしいものを2つ選んでみました。


●『パリブレスト』 外径9cm 高さ4cmほど。
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一般に、パリとブレスト間で行われた自転車競技を記念し、車輪をかたどって創作されたと云われています。
シュー生地を輪っかに焼いて、上下に2等分してカスタードを挟むのが原形。

こちらのものは、生地の塩気が利いていて少し強めの味わい。焼いた卵の風味も。
そこへアーモンド風味のクリームが挟んであります。表面には粉糖。

クリームはバタークリームの入ったムースリーヌでしょうか、生クリームも入っているかもしれません。
アーモンドはよく炒って細かなダイスにしてあります。目にははっきり分かるのですが、食べていてほとんど歯に触れない、なめらかさを邪魔しない仕上がり。風味が強く、生地の強さといいバランスです。

クリームの絞り目もきれいだし、久々にシュー生地のお菓子で大満足! 自転車に乗って…風を切って走ってみたくなりますね。




●『モンテリマール』 3.5×9cm 高さ7cmほど。
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南仏、マルセイユで作りはじめられたヌガー。
17世紀にアーモンドの栽培が奨励されたモンテリマールの町でもヌガーが作りはじめられます。
というのはヌガーは元々、アーモンドプードルと砂糖を溶かし固めたものだから、原材料の生産地に移動したということでしょうか。

モンテリマールのヌガーの特徴は、飴をかき混ぜて空気を多く含ませることで白い色にしていること。卵白が入って軽い仕上がりにしていること。そして糖分にラベンダーの蜂蜜。そして当然、アーモンド、そしてピスタチオが入ること。
よく見掛けるものでは、赤や緑のアンゼリカが入ったものも多いようです。

このヌガーに触発されたのが、モンテリマールというケーキ。
蜂蜜のムースがメインとなるものが普通です。稀にはアーモンドがメインというものもあります。
ただ、仕上げは白っぽくというのは必須条件のようです。

さてさて、前置きが長くなりました。
こちらのものは、下からスポンジ、プラム(?)のジャムを薄く塗り、ミルクチョコのガナッシュ、そのなかにたっぷりヘーゼルナッツが入っています。もう一度スポンジがあって、一番上に蜂蜜のムース。チラチラとフランボワーズやオレンジピールが混ざっています。

かなり踏み込んでオリジナリティを出そうとしていますね。
チョコレートが入ったこと、アーモンドがヘーゼルナッツに置き換えられたこと、それと対照的に、蜂蜜のムースの味わいが控えめなこと。
これはもう、モンテリマールとジャンドゥヤのドッキング、と考えていいでしょう。
下半分の味がしっかりしていて、ジャムの酸味もよく利いて面白い味わいです。

ところが主役であるはずの蜂蜜のムースが補助的な役割に終ってしまっていて、ちょっと拍子抜け。
蜂蜜もきれいな味のようなので、もう少し比率を高めてもらえば、いま以上に美味しくなりそうな予感があります。う~ん、もったいないかな。



ここでケーキのネーミングについて一言。
こちらのケーキは美味しいのに、なんだかんだと文句ばっかり並べていて、すみません。
というのも私たちがネーミングにこだわり、イメージを左右され過ぎているからです。
『モンテリマール』も『シブーストバナーヌ』(「パイ日和」で紹介)も、名前からすると主役であるべきはずのものが、期待ほど強くないと、ついつい、食べていてそのイメージのズレに気持ちが向かいがち。
そこで、提案。
『モンテリマール』は“モンテリマール・ジャンドゥヤ”、『シブーストバナーヌ』は“バナナクラフティ・ア・ラ・シブースト”のような狙いの分かるネーミングだったらなぁ。
あるいは、まるで分からない名前。説明を聞いてああなるほどと合点する名前。

オリジナルがあって、それをアレンジしていることを明確に伝えることで、シェフ独特のオリジナリティもはっきりと理解されるきっかけになるのですから。いかがでしょう。



●『パリブレスト』390円  『モンテリマール』480円

●「パティスリー・ド・グラース」
 大阪市北区梅田2-4-5吉本桜橋ビル1F  TEL06-6347-7872  定休日/日曜・祝日