本家小嶋 (1) 『芥子餅』『ニッキ』

本日は、堺市の和菓子屋、「本家小嶋」さんをご紹介しましょう。有名な老舗ですね。
最寄り駅は、南海本線・堺駅。もしくは阪堺線(チンチン電車)で、宿院駅です。

堺といえば、南蛮貿易の商港として栄えたところ。異国の工芸品・絹・薬種香料など、さまざまな貴重な舶来品が取り引きされ、当然、町は豊かになり、豪商や裕福な町人の間には茶の湯が流行。そう、武野紹鴎(パソコンでは字が違いますが)千利休、などの茶人が頭に浮かんできますね。

云わずと知れたことですが、茶の湯がさかんなところには、必ず、銘菓あり。
ということで、和菓子詣でとあいなりました。
今日は「本家小嶋」さん、明日は「八百源来弘堂」さん。
二夜連続、芥子餅とニッキ餅、でまいるといたしましょう。


●『芥子餅』 径4cm 高さ2.5cmほど。
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鄙びた佇まい。えっ、ここが? というほどのこじんまりとした造りです。
もうこれだけで、大好き、の予感。
さて。しおりによると、室町時代(天文元年/1532年)より菓子屋吉右衛門として開業、なのだとか。
なんとまぁ、470余年もの歴史があるお店だったのですね。いまこちらのほかには、堺のイトーヨーカ堂と津久野の2店のみ。

じつは、堺にもう一軒「小嶋屋」という、似た店名のお店があります。
たしか阪神百貨店や高島屋で常設しているので、こちらの方が馴染みのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「小嶋屋」さんも歴史があって、300年余り。いま、17代目なのだとか。
『芥子餅』は、以前に知人から数回いただいたことがあるのですが、さて、どっちだったのでしょう。というほど、ぱっと見、似ているのです。

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気になって、大通りのお店と関係があるのかどうかを聞いてみました。
すると、“いいえぇ、うちとは関係はないんですぅ”。
もしかして、こちらが本家と名乗る以上、もともと、分家だったのかもしれないと推測できますが、長い歴史のなかで“赤の他人”ということになったのかもしれません。想像を絶する長い時が流れていますからね(こういう時は「小嶋屋」さんにも尋ねたり、いろいろ文献なども調べなくてはならないんでしょうけど、まっ取材じゃないし…ということでご勘弁を)。
奥様(多分)のその物言いが淡々としていて、普通なら、言葉の端々に紛らわしくて困ったなという匂いがするものですが、そんなこともなくて、ますます好きになりました。
また、箱買いじゃないといけないのかしらん、とびびっている私たちに
「おいくつからでもいいんですよ。この経木に入れますからね」と、やさしく声をかけてくれたのも嬉しかったです。

この『芥子餅』、一子相伝で現在、20代目。千利休により広く賞味されたのだとか。なんとも伝統と由緒のあるお菓子なのですね。
周辺情報はこれくらいにして、それでは、いただきましょう。


画像餅のまわりを芥子の実がびっしりと。なかは、こし餡。
エーッ、芥子って、こんなに香ばしかったっけ? というのが第一印象。

白い色と焦した色のものと、半分くらいまじっているような気がするのですが、そのせいでしょうか、とても香ばしいのです。プチプチした食感も楽しいですねぇ。
おそらく、半々に炒り分けて、もう一度合わせているような……いずれにせよ、香ばしいです。
こし餡もちゃんと甘みがあって、全体のバランスがとてもいい。
素晴らしい! といえるでしょう。

あまりに美味しくて、すぐ全部食べてしまいそうだったけれど、無理矢理我慢して、少し硬くなった数日後に、焼いてみました。そういえば、昔は、お饅頭なんかよくそうしていましたよね。
すると、芥子が一段とカリッとなって、中の餡は温まってほくほく~。これまた、いいんだなぁ…としみじみ。

115円で手に入る幸せ。ちょっと、ううん、かなりいいものでした。
そうそう。棹もあるんですよ。あぁ、どーんと長い棹ものもずんずん食べてみたいなぁ。




●『ニッキ』 径3.5~4cm  高さ2.8cmほど。
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ニッキといえば、堺では、当然「八百源来弘堂」さん。
ですが、肉桂好きとしては、食べ比べしたくなって、ちょっと邪道かなと思いつつも購入。

ニッキの香りがふわんとひろがり、嫌みではないけれどちゃんと甘みのあるこし餡とベストマッチ。
これまた、好きです。

この芥子餅とニッキ、泰平餅、翁、安平の4種類のみ。
箱もごく普通のもの。小さな空間。
ずっとこれだけしかやってきませんでしたから、これからもこの味を守って行きます、という精神が伺えて、その頑固さや一途さは清々しくすらあります。共感を覚える方も多いのではないでしょうか。
このようなお店が脈々と続いていることに奇跡すら感じます。これからも、そうあってほしいなと願わずにおれません。



和菓子をそっと口に入れながら、お店のことに想いを馳せながら、好きですねぇ、いいですねぇ、と穏やかな気持ちになっていくのがわかります。
茶道とともに育ったお菓子ですから、抹茶一服をお供にどうぞ。



●「本家小嶋」
  大阪府堺市堺区大町西1-2-21  TEL072-232-1876  定休日/月曜
  『芥子餅』115円  『ニッキ』115円