2010年シュトーレン祭り「シュラッテンバッハ」「シュターン」「オタンプルデュグゥ」

キリストの降臨を待ち望む季節。つまりクリスマスの前4週間はアドベント(待降節)と言って、キリスト教文化圏では楽しくワクワクした心持ちになるようですね。その時期だけに楽しむべきお菓子があるのも嬉しく、宗教心がなくても、ついウキウキしてしまいます。
12月の我が家の定番お菓子。せわしない師走に、薄くカットしたシュトーレンをつまんで、ほっとするひととき。もう20年ほど続いているでしょうか。
ということで、当ブログ「パイ日和おまけ」では、毎年シュトーレンをご紹介してきました。今回で5回目。
年々扱う店が増えてきているようで、ご紹介するお店に事欠かなくなってきました。初めて食べた頃は、ほとんど見掛けず購入するのもなにかと大変でした。なんだか昨日のことのように思い出します。
流行り廃りが目まぐるしい日本のご時世なれど、ふむ、一時のブームでなければいいですね。


●『シュラッテンバッハ/シュトーレン』 11×20cm 高さ4.8cm 320gほど。
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神戸市東灘区西岡本で、本格的なドイツパンを良心的な価格で提供してくれているお店。
駅から離れているというのに、ここのパンでなければと通う人も数知れず。

粉の素朴な味わいをじっくり伝える普段のパンからも分かるように、シュトーレンでも素朴さが基本。
ドイツの職業学校で習ったレシピに忠実に従っているとのことです。
『クリスト シュトーレン』と呼ばれるものだそうです。


画像比較的ドライな生地。パン屋さんのシュトーレンはこういう生地が多いですね。サイズも大きめ。

レーズンとオレンジピール、レモンピール、ヘーゼルナッツの組合わせ。ドライフルーツはラム酒に1日漬けるのみ。
スパイスはシナモンと少しだけコリアンダー。シェフの寺井克子さんご本人がきつい香りは好きじゃないのだとか。

焼き上げ、澄ましバターに漬け、粉糖をたっぷりまぶして、普通は何週間も寝かしたりするものですが、3、4日に短縮しているようです。
その結果、醗酵香の重さを脱し、ピール類の新鮮な香りが生きていて、意想外なフレッシュ感に満たされるのです。
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いただくと“あぁ、爽やか”というのが第一印象。
香りはラムというより、軽やかなスパイスがほんのりと。

そして、オレンジ&レモンが活き活きと語りはじめます。
このピール類はイタリア産の有機もので、寺井さんの好物。そのまま食べることも多いとか。うん、その気持ちわかるわかる。美味しいですね。

職業学校で習ったレシピとはいうものの、このピールを活かすためのレシピ変更が意図的になされていると考えてよさそうですね。浅漬けシュトーレン、颯爽としていて斬新です。

とはいえ、心ほぐれていく感じ。寺井さんの正直さ、実直さに相通じるシュトーレンですね。




●『シュターン/シュトーレン』 7×13.5cm 高さ4.2cm 200gほど。
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兵庫県芦屋市東山町のドイツ菓子専門店。
若くしてドイツに渡り、長く修業しマイスターを取得した谷脇正史さんのお店。

ドイツ各地に伝わるさまざまなシュトーレンのレシピに通じているなかから、ザクセン地方のものを気に入って作っているとのこと。

マジパンを多めに生地に練り込んだ、とても贅沢な作り。
サルタナレーズン、オレンジ、レモンのピール、ヘーゼルナッツをラム酒に漬けて2週間。
焼き上げて澄ましバターに漬けて、グラニュー糖を振って2週間寝かします。

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可愛い飾りを紐解き、一番目に付くことは、比較的色白なこと。
サルタナを使っているので漬け汁が黒くならず、混ぜ合わせた生地も汚れずに済むのです。

この淡い色合いというのが大きなポイント。
ほんの少し利かせているカルダモンの爽やかな香りと相まってとても清々しい。“敬虔な”という言葉をあえて使いたくなるほど。じつに、ピュアですね。

画像サルタナも、小さくカットしたナッツ類も、ラム酒も大声で主張しているわけではないのに、ないと成り立たない、なんとも素晴らしいバランス。
優しく甘い香り、しっとりとした食感。繊細できれいな味わいで、甘さが透き通っているような印象を抱きました。


信心もしていないのに、つい頭を垂れてしまいます。
そして、いつしか静かな優しい気持ちになっていくのがわかります。




●『オ タンプル デュ グゥ/シュトーレン』 7×13cm 高さ4.8cm 300gほど(全体の写真撮影すっかり忘れて1カット食べてから気付くと云うおまぬけぶり。乞うご寛恕)
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兵庫県西宮市南郷町のフランス菓子中心のお店。
細谷寛シェフはドイツ人シェフに習った経験もあり、ドイツ菓子にも通じています。

手に持つと小振りながら、重い。
食べると、うわっドライフルーツもマジパンもバターもたっぷり。
ともかく、具沢山、大甘、濃厚です。

これはシュトーレンでありつつ、なかばフルーツケーキにまで踏み込んだケーキですね。
敬虔というより、豪奢。宗教的な役割からすると、やや逸脱気味なのかもしれません。
なにせ、名もなき大工の妻に出来た赤ん坊のおくるみ姿を象っているのですからね。ふふっ、薄くスライスする食べ方がこれほど似合うシュトーレンもめずらしい。
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こちらはドライフルーツはレーズン、イチジク、アプリコット、オレンジピール、レモンピールなど6種以上を1ヵ月以上かけて漬込み、生地を焼き上げ、澄ましバターに漬け、粉糖をたっぷり振って1週間から10日寝かしているそうです。

醗酵の深い香り、バターの馥郁とした香りに支えられたドライフルーツの万華鏡。
イチジクの赤ワイン漬が底の部分にゴロリ、ゴロリと入っていたり、アーモンドの香りが弾けたり、とても賑々しい味わいです。カルダモンの香りも爽やか。
これがうるさくなり過ぎないのはマジパンの優しい味わいがベースにあるからなのでしょう。
細谷シェフ、相変わらず攻めていますね。
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大きいサイズは木箱入りのギフト仕様で高いですが、なんと、小さいサイズは内容に見合わない普通価格。
小さいのに、ダイナマイト。きゃっ嬉しいですね。

ちなみに、マダムの潤子さんはかつてシュトーレンが苦手だったそうです。それが昨年、お店に置くようになって、大のお気に入りになったとか。
うん、このシュトーレンなら、はまってしまうでしょうね。



それぞれに完成していて、一概にどれがいいとは云えないものです。どれもシェフの個性が表れていて大好きです。
贅沢なものは当然のようにお菓子の美味しさを強く主張してきます。逆に素朴なものは質素な味わいでより親しみと安心感を与えてくれます。心静かに神の降臨を祝う行事に相応しい清廉潔白な味と感じさせてくれたり、年末の楽しいイベントを盛り上げてくれたり。
一般化して、作り手が増えたので、シュトーレンへのアプローチが幅広くなり、食べる楽しみも多彩になってきましたね。
さて、貴方はどんなシュトーレンがお好きですか?



●『シュラッテンバッハ/シュトーレン』1050円(g=3.2円)
 神戸市東灘区西岡本1-10-10  TEL078-436-8486  定休日/水曜・月2回不定休

●『シュターン/シュトーレン(小)』990円(g=4.9円)
 兵庫県芦屋市東山町1-10  TEL0797-34-5673  定休日/水曜

●『オタンプルデュグゥ/シュトーレン(小)』1050円(g=3.5円)
 兵庫県西宮市南郷町7-12  TEL0798-71-7610  定休日/無休