ブロードハースト (4) 『ウェラー』『めぐみ』
大阪・玉造にある『ブロードハースト』。
当ブログでは、オープン当初からとても好きだった焼きっぱなしコーナーを一通り紹介してきた。
ピーター・ジョンさんの出自であるイギリス菓子の本質と歴史、彼がどのようなアレンジを加えているかを解き明かし、店とお菓子の位置付けを書いたことで満足してしまって、ついついご無沙汰してしまっていた。
だけど、昨年の初秋「TIKAL2号店」を訪ねて、その余りの美味しさに、しばらくこの美味しさの魔力を忘れてしまっていたことが情けなく、どうしても本店を襲わなければと思った次第。(※書き手はクボタ)
●『ウェラー』 径7cm 高さ4cmほど。

名前はロックアーティストのポール・ウェラーから。
ザ・ジャム、スタイル・カウンシルなどを率いたブリティッシュロックの雄らしい。残念ながらロック方面は疎いので多くは語れない。
ピータ・ジョンさんのロック熱を反映してのことだろう。
“ずっとマカロンケーキを作りたかったんだけど、エルメにはしたくなかったから”
ということで『イスパハン』のようなピンク・ローズ系の色とは正反対の、眼に鮮やかなスカイブルー。そして、真ん中は強い赤。マカロンにペイントしている感覚が斬新。
そう、お店のマークの色をそのままケーキに持ち込んでいる。
中心の赤はイチゴの“ザ・ジャム”。
マカロンに挟まれているのは、バター多めのクレーム・ムースリーヌ、無糖の生クリーム(ヨーグルト入り)、センターに今度はリュバーブのジャム。
ショッキングな色の取り合わせに慌てなさるな、味わいはいたってノーマル。
甘みを極力抑えて、マカロンとジャムの甘みでまかなっているところが、落着きを生んでいる。
ムースリーヌのコクが加わってしっかり構成されたケーキに昇格したと言えるのだろう。リュバーブの酸味が画竜点睛となって、引き締めている。
エルメにならないために持ってきたものがポール・ウェラー、ブリティッシュ・ロックのソウルを代表するアーティストだという。
反骨精神がフランスの流行りものに拮抗するレベルに成れたかな?
●『めぐみ』 径7cm 高さ3.5cmほど。

いかにもジャパニーズな見掛け。
ビターオレンジのジュレで覆われ、秋色に染まるところへ紅葉型のクッキーが2片。
しかもなかは、米のムース。
完璧に日本の文化に染まったなと思いきや、米のムースはイギリス時代から作っているという。
米を牛乳で炊いて、柔らかくなったら砂糖や卵を入れてカスタードにし、ゼラチンを加えてムースに。
土台は、ドライフルーツの入ったダクワーズ。2層重ねて、間にも米のムースを薄く挟んでいる。
ムースは米の粒々もはっきり主張していて、消えてなくなるようなものではなく、ねっちりと“外郎”を少し柔らかくしたような感触。ちょっと珍しい。ダクワーズも固めでバランスを取っている。
オレンジのジュレにドライフルーツ、主張の強いものに囲まれて、米のムースがけして負けていないのが素晴らしいところ。
ここでも鋭敏なバランス感覚が発揮されている。独創的な組合わせで穏健な味わいを作り出せるところが大したもの。
商品名を“秋の恵み?”と聞いたところ、“自然の贈物”との答え。
いやいや、ピーター・ジョンさん、あなたの天与のバランス感覚こそわれわれにとっての自然の贈物。ありがたい。
こちらのケーキの発想は思いつきでも小手先の技でもない。アート作品のようにちゃんとコンセプトから掘り起こされ、明確な意図を伝えられるものに仕上がっている。しかも無理なく美味しい。
知に働いて角を立てることもないし、情に棹さして流されることもない。
知情意のバランスがとれた、とても分かりやすいアート作品になり得ている。日本でこのような創作態度を持ったパティシエは稀だろう。
●『ウェラー』480円 『めぐみ』460円
●「ブロードハースト」
大阪市中央区玉造2-25-12 TEL06-6762-0009 定休日/月曜
※ブログ「パイ日和」(http://pie.at.webry.info/201101/article_2.html)にも、このお店のタルト&パイを紹介しています。よかったら、どうぞ。
当ブログでは、オープン当初からとても好きだった焼きっぱなしコーナーを一通り紹介してきた。
ピーター・ジョンさんの出自であるイギリス菓子の本質と歴史、彼がどのようなアレンジを加えているかを解き明かし、店とお菓子の位置付けを書いたことで満足してしまって、ついついご無沙汰してしまっていた。
だけど、昨年の初秋「TIKAL2号店」を訪ねて、その余りの美味しさに、しばらくこの美味しさの魔力を忘れてしまっていたことが情けなく、どうしても本店を襲わなければと思った次第。(※書き手はクボタ)
●『ウェラー』 径7cm 高さ4cmほど。

名前はロックアーティストのポール・ウェラーから。
ザ・ジャム、スタイル・カウンシルなどを率いたブリティッシュロックの雄らしい。残念ながらロック方面は疎いので多くは語れない。
ピータ・ジョンさんのロック熱を反映してのことだろう。
“ずっとマカロンケーキを作りたかったんだけど、エルメにはしたくなかったから”
ということで『イスパハン』のようなピンク・ローズ系の色とは正反対の、眼に鮮やかなスカイブルー。そして、真ん中は強い赤。マカロンにペイントしている感覚が斬新。
そう、お店のマークの色をそのままケーキに持ち込んでいる。
中心の赤はイチゴの“ザ・ジャム”。
マカロンに挟まれているのは、バター多めのクレーム・ムースリーヌ、無糖の生クリーム(ヨーグルト入り)、センターに今度はリュバーブのジャム。
ショッキングな色の取り合わせに慌てなさるな、味わいはいたってノーマル。
甘みを極力抑えて、マカロンとジャムの甘みでまかなっているところが、落着きを生んでいる。
ムースリーヌのコクが加わってしっかり構成されたケーキに昇格したと言えるのだろう。リュバーブの酸味が画竜点睛となって、引き締めている。
エルメにならないために持ってきたものがポール・ウェラー、ブリティッシュ・ロックのソウルを代表するアーティストだという。
反骨精神がフランスの流行りものに拮抗するレベルに成れたかな?
●『めぐみ』 径7cm 高さ3.5cmほど。

いかにもジャパニーズな見掛け。
ビターオレンジのジュレで覆われ、秋色に染まるところへ紅葉型のクッキーが2片。
しかもなかは、米のムース。
完璧に日本の文化に染まったなと思いきや、米のムースはイギリス時代から作っているという。
米を牛乳で炊いて、柔らかくなったら砂糖や卵を入れてカスタードにし、ゼラチンを加えてムースに。
土台は、ドライフルーツの入ったダクワーズ。2層重ねて、間にも米のムースを薄く挟んでいる。
ムースは米の粒々もはっきり主張していて、消えてなくなるようなものではなく、ねっちりと“外郎”を少し柔らかくしたような感触。ちょっと珍しい。ダクワーズも固めでバランスを取っている。
オレンジのジュレにドライフルーツ、主張の強いものに囲まれて、米のムースがけして負けていないのが素晴らしいところ。
ここでも鋭敏なバランス感覚が発揮されている。独創的な組合わせで穏健な味わいを作り出せるところが大したもの。
商品名を“秋の恵み?”と聞いたところ、“自然の贈物”との答え。
いやいや、ピーター・ジョンさん、あなたの天与のバランス感覚こそわれわれにとっての自然の贈物。ありがたい。
こちらのケーキの発想は思いつきでも小手先の技でもない。アート作品のようにちゃんとコンセプトから掘り起こされ、明確な意図を伝えられるものに仕上がっている。しかも無理なく美味しい。
知に働いて角を立てることもないし、情に棹さして流されることもない。
知情意のバランスがとれた、とても分かりやすいアート作品になり得ている。日本でこのような創作態度を持ったパティシエは稀だろう。
●『ウェラー』480円 『めぐみ』460円
●「ブロードハースト」
大阪市中央区玉造2-25-12 TEL06-6762-0009 定休日/月曜
※ブログ「パイ日和」(http://pie.at.webry.info/201101/article_2.html)にも、このお店のタルト&パイを紹介しています。よかったら、どうぞ。