ルシェルシェ (1) 『サンマルク』『オペラ』『カヌレ』『エクレール・カフェ』

大阪、南堀江に出来た新店「パティスリー ルシェルシェ」さん。2011年1月27日オープン。才気溢れる、新人の登場です。
大阪の名だたるシェフ連中のお墨付き。出身の「なかたに亭」、そこで出会った「ブロードハースト」、そして尊敬しているという「ラヴィルリエ」。朗らかで前向きな人柄のようで、人に好かれるんでしょうね。
スタートと同時に、すでに完成していると思えるほど。
でも「ルシェルシェ Rechercher 」という店名は“探究する”という意味。一つひとつのケーキはつねにより良いものを目指して進化を遂げるのだそうです。
たしかに、オープン2ヵ月ほどですでにルセットが大きく変わっているのもあるし、今後、これも変えようかなぁというケーキもありました。満足しない貪欲な心は、大きな成功をつかみ取るでしょう、きっと。
『パイ日和』で、あまりにはしゃいで書いてしまったので、ちょっと落ち着きを取り戻して書いてみましょう。


●『サンマルク』 3×9cm 高さ5cmほど。(写真ではカラメルが光っていませんが、本当はツヤツヤ)
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トップは少し厚めのカラメリゼ。鏡面のように美しいですね。
サンマルクで惚れ惚れ~というのも珍しいかな。

定番はビスキュイジョコンドでヴァニラクリームとガナッシュを挟み、トップをカラメリゼ。

村田シェフはヴァニラクリームをプラリネクリームに置き換えています。
といっても比較的淡い味わいのもので、原典のイメージを損なってはいません。

この古典的なケーキはガナッシュを淡いイメージにとどめておいて、思い切り焦がしたカラメルの苦さで不意打ちするような、意外な強さがコンセプトのように私たちは捉えています。
その意味で、「プティポワン」(滋賀県草津市)さんの“もう炭になってますけどぉ”というほどに焦がしたカラメルが極北に位置するでしょう。

それにたいして、この『サンマルク』は、鏡面仕上げで、厚めのカラメリゼに特徴があります。
パリンパリンに固まっているので切りにくいのですが、ナイフの先でツンツンとすればなんとか割れます。

『タルト・シトロン』でもプラリネを使っているので、恐らく相当なプラリネ・フリークなのではないでしょうか。
ここで使っているプラリネクリームはムースと呼べるほど軽やかで淡いもの。ツブツブも入っていますが、それだけではそれほどインパクトはありません。
ところが、なんです。
量の多い強く焦がしたカラメルと合わせると……濃厚なプラリネが合成されるという仕掛け。わっ、面白い。

元々は販売スタッフが持てないほど、ふわふわに仕上げていたとか。実際に持ち帰ることのできる現実的なアレンジを加えたのが現状。日々進化の一つのようです。




●『オペラ』 3×9cm 高さ3cmほど。
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わぁ、艶のあるグラッサージュの美しさっといったら!  なぜか、深い湖面に惹きつけられて見蕩れてしまったような心地。
おやっ、金箔からカカオニブに置き換えられていて、渋い装飾ですね。
なんとも、容姿端麗な一品です。

本家本元の「ダロワイヨ」ではたしか高さ2cmほどの厚みにこだわっています。
オペラを見るために着飾ったご婦人たちが大口を開けずに食べられるようにという、エレガンス追求の配慮からです。

こちらのシェフは、3cmの厚みのなかに7層を収めることにこだわるといいます。腕の見せ所、なのかな。たしかに地層見本のように、まっすぐな層が形成されています。
もうそれだけで、オペラを堪能し満たされた気分。

下から、コニャック入りコーヒーシロップでアンビバージュされたジョコンド、コーヒークリーム、ジョコンド、ガナッシュ、ジョコンド、コーヒークリーム(底に、チョコプレート)。
トップは本来、パータグラッセが来るところですが、チョコレートの美しいグラッサージュ。
パータグラッセは持ち帰る時に結露するのが嫌、という理由だそうで。たしかに、オペラに汗は似合わない。エレガンスから遠く離れてしまいますね。
コーヒーはネスカフェで思い切り濃厚なものを作っているそうで、エスプレッソではまだ薄いとのこと。

さぁて、フォークで一口分切ってみましょう。生地がばらばらにならなくて、一体感がありますね。ほっ。
ぅう~ん、強烈!  パンチのあるコーヒーのほろ苦さが強く響いて、ぐぐっと口中に広がります。
あ、うん……香りは、コニャックの風味のほうが勝っているかな。コーヒーの芳醇な香りの魅力は、コニャックに譲りわたしていますね。

個人的には、お酒を使わずに“酔わせるオペラ”が好みだけど、これもいいですねぇ。
全体にバランスが絶妙で、余韻に、記憶にインパクトを与えてくれるオペラに仕上がっています。

そういえば、私たちがいる時に、ケーキフリークでもなさそうなご近所の作業着を着た中年男性二人がこのケーキを選んでいましたっけ。なんだか、嬉しかったなぁ。





●『カヌレ』 径5cm 高さ5cmほど。
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わっ、ラム酒がすごい! 

後で確認したところ「ラヴィルリエ」の服部シェフのルセットに従っているそうです。
どうりで、ダークラムが思いーっきり利いています。

外カリッとよく焼け、中はグニュッもちっとした独得の食感。
カリッの部分が薄く、境界が明確。いい焼き上がり。思い切り強火で焼いてから、温度を下げて気長に焼いているのかな。
蜜蝋の独得の香り、プリンのような優しい味わいと相性がいいです。

じつは、このラム酒づかい、へぇと意表をつかれる感じでした。
村田シェフの新たな一面なのかな、とも思いながら食べたのです。

そこで、どうしても気になったので再度聞いてみたのです。
それで納得、ラムが強く主張しているのは、いかにも力強くワイルドさが魅力の服部さんらしいなぁと。もちろん、美味しいのですが、服部さんの人懐っこい笑顔が見え隠れしてしまう。後付けだけどね…。あはっ!

私たちの勝手な思い込みですが、ラムがもう少し大人しい方が村田シェフのテイストのような気がしました。ヴァニラも香って素朴さが出ていいような気も。ただ、皮と中味の落差はいいですね。
まぁ気にしないでくださいね、私見ですから。





●『エクレール・カフェ』 長さ12.8cm 高さ1.7cmほど。
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サントノレ同様に、バリッと小気味良く焼けた生地。
カフェ風味のカスタードに少しカラメル。トップはフォンダン・カフェ。
形はもう少し、シュッとしたスマートなものになる余地はあるかもしれません。

手に持って、パクッ。
うん、文句なしに美味しいっ!

3つのパートがそれそれの仕事をきっちりこなしています。
ここでのカフェはオペラのときほどに濃くなく、うっすらと香る程度。
むしろカラメルの方が断然目立っています。カフェクリームの隠し味の域を越えて、明らかに主役。
こうなったら、いっそのこと『エクレール・カフェ・キャラメル』にしちゃう?

生地そのものの魅力に加えて、クリームとフォンダンの口溶けの良さが、生地の切れ味も生んでいるのではないかと思います。




村田シェフは現在の15種類の生ケーキを倍くらいに増やしたいと言っています。焼き菓子も、焼きっぱなしも。たしかに魅力は2倍にも3倍にも拡大するでしょう。その場面を想像しただけで、甘い溜め息が洩れてしまいます。
でも欲張らず、あせらず、品揃えありきではなく、品質ありきを貫いてほしいなぁ。
すでに、十分魅力的ですよ。いや、この言葉じゃもの足りないなぁ……とても、素晴らしいですよ! 



●『サンマルク』420円  『オペラ』441円  『カヌレ』240円  『エクレール・カフェ』251円

●「Rechercher ルシェルシェ」
 大阪市西区南堀江4-5-B101  TEL06-6535-0870  定休日/不定

※ブログ「パイ日和」(http://pie.at.webry.info/201103/article_12.html)にも、このお店のパイ&タルトを紹介しています。よかったら、どうぞ。