グラン・ヴァニーユ(1)『コルセ・ノワ』『キャラメル・オランジュ』『オペラ』『フィナンシェ』『ケーク

京都・間之町押小路、2011年2月6日オープンの「グラン・ヴァニーユ」さん。
オープン早々、フランスで行われるコアントロー主催のコンテストに招かれて渡仏したと聞いていました。近くまで来たから、店構えくらい見て行くかなと未練がましい振る舞いをして、大正解。この日から再開したところだったのです。
きりっと端正で麗しいケーキが並んでいました。食べる前に、鑑賞したくなるケーキです。
とはいえ、まだ陽も高い時間だというのに、Oh la la! 品切れ続出。
少ないなかからの選択でしたが、当たり続出。噂に違わぬ高水準、洗練された技の持ち主です。


●『コルセ・ノワ』 径6.5cm 高さ6cm強ほど。
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写真を見てタルトだと思いませんか? 
ふふっ、私たちも間違えました。

じつは、ジョコンドの焼き目の部分を外側にして円筒状に巻いているのです。
底の部分はチョコスポンジにコニャックとラムをアンビベしたもの。
その上にクルミのダイス、ミルクチョコのムース、プラリネクリーム、もう一度ミルクチョコ。
砂糖で和えたクルミが5片、チラチラと。

コルセ corse は“濃厚、こってりさせる”という意味の言葉。
商品名は、クルミを濃厚な味わいで、といった意味合いになるようです。

あぁ、美味しいです。
が、クルミが濃厚という割には、控えめなのですね。クルミのケーキというより、ミルクチョコに気持ちがぐっと惹かれてしまいました。
上のものは焙煎香の強い、ちょっとめずらしいタイプだし、下の部分のねーっとり感も特徴的。とても素材の良さが際立っていると感じます。

プラリネは元々大好きなんですが、ここではミルクチョコに軍配が上がります。いかがでしょう。




●『キャラメル・オランジュ』 2.8×9cm 高さ5cmほど。
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オペラのオレンジ版 ですね。

真ん中にオレンジのジュレを挟んで、ダコワーズ生地、カラメルのバタークリームの繰り返しで7層。トップを飾っているのが、ん? カラメルのシャンティのような顔をして、メレンゲですね。

これは“ ビター・オレンジ”を満喫するケーキ。
同時に、キリッ!と引き締まった酸味もあって、目覚ましい印象。

とくにオレンジのジュレが全体の核をなしていて、酸っぱ苦の魅力を存分に振りまいています。
バタークリームは口溶けの良さが際立っています。カラメルはあまり焦がしていなくて苦味はほとんどなく、香りの魅力が勝っているタイプ。一番下のバタークリームには砕いたプラリネが入っていて、食感と風味の軽いアクセント。芸が細かい。

上のメレンゲの部分が、なんとも凝った作り。
カラメル風味というだけでなく、メレンゲの強さとねっとり感が印象的です。畝の間に、オレンジの風味のジュレ(皮の風味も感じるのです、大人っぽいなぁ)を忍ばせていたり、ダコワーズにアンビベしています。それがただのシロップではなく、コアントローを少し使っているようです。
細部まで、際立った魅惑的な技が駆使されているようです。

ぅうーん、オレンジの酸味とビターを味わい尽くす時間が、濃厚に流れていきます。
素晴らしい! いいなぁ、これ。大好きです。




●『オペラ』 2.5×10cm 高さ3cmほど。
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これはかなりオーソドックスに原典にしたがった作り。
トップがパータ・グラッセではなく、グラッサージュの処理。金箔なし。

このグラッサージュがチョコだけでなく、ゼラチンの入ったプルンとした食感で、ペランと剥がれてくる傾向がありました。
この手法を敢えて使うというのは、少し沈んだ艶が欲しかったのでしょうか。

だって、見てくださいよ。
ほとんど深海の闇。はたまた、真夜中の静寂を思わせるような漆黒の世界。
マットなパータ・グラッセや鏡面に仕上がるグラッサージュでは到達できない色合いです。この手法は師匠のところで習い覚えたものだそうです。

アンビベしたジョコンドとコーヒー風味のバタークリーム、ガナッシュの組合わせ。
ここでは圧倒的にアンビベのコニャックとラムの風味が深く、ガナッシュは酸味もありますが圧倒的に苦味が勝って、大人の味わいを作り出しています。

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エレガントに、そっと一口。

このクラッと感は、立ちゆらぐコーヒーの香りのせい。エスプレッソが香りを官能的に漂わせているのです。
そして、最後はコニャックとラム酒が。

コーヒーが重厚なバスのアリアを歌い、幕尻の大団円にコニャックとラムが圧倒的な声量を競い合って二重唱を歌っている、といった場面が目に浮かんできました。

はぁぁ、深い余韻に浸ることができますね。ブラボー! お見事です。




●『フィナンシェ』 底径6.5×4.3cm 厚み2cmほど。
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師匠と同じオーヴァル型。
楕円形の“天使の輪っか”(私たち勝手に名付けています)が白っぽく浮き出ているのが、よく焼けた徴。

はむっ……、
わぁ! バターとハチミツたっぷりで、ねっちり、しっとりした食感もそっくり。
濃厚な味わいで、バターとハチミツの香りがたーっぷり。アーモンドの香りはやや控えめなのかな。

小さな焼菓子なのに、満足感の高い楽しみがたっぷり詰まっています。





●『フィナンシェ ショコラ』 底径6.5×4.3cm 厚み2cmほど。
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ココアパウダーが加わった生地。

同様に濃厚な味わいであり、ねっちり、しっとりの食感も同じですが、ココアの苦味に引き締め効果があります。

そしてグリオットチェリーが3粒。
その種を抜いた穴に、フランボワーズのペパン入りジャムを詰めている、という芸の細かさ。恐れ入りますね。
おっと、チェリーの存在がひんやりで、ハッとする感じ。

苦味、酸味、甘味、温度差など、小さい中に凝縮された味わいが密集している贅沢さが嬉しいですね。





●『ケーク オ マロン』 長さ11.5cm 幅6cm弱 高さ4.5cm(本体) 225gほど。
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あはっ! 蒲鉾型だぁ。
トイ型を使って焼いているのですが、日本人にとってこの形はどうしても蒲鉾を思わせますよね。それに生地がほとんど、いやまったくと言いたくなるほど空気を含んでいなくて、しかも粉のメッシュが細かいせいか、ケーキの断面がツルンとした感じに見えなくもないのです。ますます蒲鉾。
失敬、おまぬけ話しはこれくらいにして…。

さて、本題。
これまた濃厚なケークです。

材料表示を見てみると、トップには、マロンクリーム。やったぜぃ!
それを見て、ほとんど栗そのものを食べるようなケーキに違いないと、わくわくわく。

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ところが、なのです。
封をあけると、ラム酒、香る~う! 強烈です。
お酒に弱い訳でもないのに、匂いだけで酔いそうなほど。

一切れ食べると微かに酔った気分。ラムに気圧されて、おーいマロン君よ、何処に行ったの? 
勝手に断言しちゃいましょう、これはもう“ケーク オ ロム”です。

念のため、半日ほど置いてもう一切れ食べてみると、ややラムが飛んだのか、ようやくマロンが顔を覗かせました。マロンが分かってみると、なかなかどっしりと腰の座ったケーキだなと思います。

いい味わいだけに、また人後に落ちない栗好きだけに、ちょっともったいないかな、という思い。
と、これだけラムが主張するからこそ、強いケーキになり得ているのかなとの思いが交錯しているところです。
本来は、もっと数日置いたほうがよかったのかな。食いしん坊は我慢を覚えなくてはなりませんね。




冒頭の「コアントロー」会社主催のコンテスト。味覚部門(アントルメ)で1位、ピエスモンテ部門(チョコレート、飴)で3位、総合2位だったそうです。総合1位より、味覚部門1位のほうが光りますね。奥様も、味覚が評価されたからよかったぁとおっしゃっていました。ふむ、大したものです。
なんとも期待の持てるお店がオープンしたものですね。4月1日からはカフェもスタートし、ますます楽しみ。
いやいや、危険きわまりないんだなぁ、これが。
というのも、生ケーキがどれも1個550円という価格。ふところ寒い私たちは、ちょびちょびあれこれ迷いながらの子供買い。だけど、やっぱり次々と食べたくなってきます。ふむ。
それだけのキャリアだし、第一ケーキ自体、研ぎすまされたものですしね。細部に至るまで神経が行き届いていて繊細な技を駆使しておられるし、吟味された素材の上質さもひしひしと伝わって来るので、十分値打ちがあると云っていいでしょう。
大切に、ゆっくりと、最後の最後の余韻まで、じっくりと味わい尽くしたいと思います。



●『コルセ・ノワ』550円  『キャラメル・オランジュ』550円  『オペラ』550円  『フィナンシェ』250円  『フィナンシェ ショコラ』250円  『ケーク オ マロン』1260円

●「グラン・ヴァニーユ」
 京都市中京区鍵屋町間之町通486  TEL075-241-7726  定休日/火曜・水曜

※ブログ「パイ日和」(http://pie.at.webry.info/201104/article_2.html)にも、このお店のタルトを紹介しています。よかったら、どうぞ。