ロトス洋菓子店(4)『サブレサンド』『ダックワーズ(アーモンド、ヘーゼル、クルミ)』『レモンケーキ』
今年の春から集中的にご紹介している「ロトス洋菓子店」さん。京都は烏丸松原近くのお店です。
今回は、最後に立ち寄り、久しぶりに自宅に持って帰って、ゆっくり味わおうという算段。
ところが、なのです。雨をやり過ごして、6時頃到着したら、なんと生ケーキはきれいに売切れ。木村シェフと小川さんが“こんなこと、 久しぶりなんですよ”と口を揃えています。そろそろ認知度も上がってきたようなので、これからは久しぶりなんて言っていられなくなるでしょう。
以前から気になっていたケーキが食べられなかったのは残念だけど、なんだか嬉しかったです。まさに、ご同慶の至り。よかったぁ!
ということで、ほんの少し残っていた焼菓子を買うことに。それが“残り物に福あり”と言いたくなる出来映え。ではさっそく、今回のお菓子をご紹介しましょう。
●『サブレサンドセット』(要冷蔵) 2.8×7.5cm 厚み1.5cmほど。

「小川軒」のレーズンウィッチがモデルかと思ったら、「六花亭」のレーズンサンドを好きでよく食べていたからとか。
じつは秘めたエピソードがあるのですが、話が道草してしまうので内緒。むふふ。
さて。こちらのギフトセットは、3種類が2個ずつ入り。
●プレーンのサブレには、バタークリーム、ブランデー漬けレーズン/鋭い香りのブランデーがよく利いているレーズンが特徴的。
●抹茶サブレには、バタークリーム(ホワイトチョコ入り)/サブレがサクッとした食感。最後にふっと香る抹茶の風味に落ち着きがあります。
●チョコサブレには、ガナッシュ/ブラウニー的なモコモコ感と口溶けの良さが魅力。ガナッシュのなめらかさがいいですね。
老舗の味わいの記憶を手繰り寄せてみると、イメージ追随ではありません。
プレーンの、レーズンのブランデーに象徴されるように、温和にまとめるより、どこか自己主張したくなる若い精神が漲っている、と云えばいいでしょうか。
薄い生地は、サブレと名乗る割には“砂”の感覚ではなく、口に入れた途端サクッタイプ。生地全体はしっとり感のものが多かったようです。いや、抹茶はサクッと締まっている感じ(といっても、これに関しては二人の意見が分かれたので、袋によって異なっていたのかもしれません)。
どちらかというと、バタークリームが目立ちます。メレンゲを加わえたことで軽やかさがクローズアップ。
この泡があるからこそ、普通堅くなるバタークリームが冷やしても軽さが失われないのですね。
その上、軽さがベースにあるからこそ、“レーズン、ブランデー”“抹茶”“チョコ”の瑞々しい個性が浮き立つという効果も生まれるのです。
木村シェフ曰く“クリームがぐにゅとはみ出ないように、冷やして召し上がってください”というのも納得です。

気に入っているのが、デザインの趣味の良さ。
ショーケースに飾ってあるのを一目見てから、その佇まいに惹かれていました。
帯の配色も「ロトス」のコーポレートカラーである薄紫に加えて、抹茶、チョコレートの各色が、DICの色見本帳の“日本の色”シリーズから抜き出してきたように、渋い配色。
和菓子屋さんのような(ちなみにアルミパックは羊羹用を転用、長期保存も安心かな)、侘び寂びの趣。
ギフトに適した京都らしさもあるし、3種類揃えたサービス精神も嬉しい。価格的にも手頃ではないでしょうか。
気の利いた手土産として重宝しそうですね。
●『ダックワーズ(アーモンド、ヘーゼル、クルミ)』(要冷蔵) 4.4×6cm 厚み1.8cmほど。

えっ、生地に薄力粉を使っていないとか。珍しいかも。
メレンゲにアーモンドプードルがベースとなり、ヘーゼル、クルミのバージョンではそれぞれのプードルが少し加わります。
サンドするのは、それぞれのクレーム オ ブール プラリネ。
サクッ! なんとも言えない軽やかな食感。立ち上る香気。
薄力粉が入っていないとこんなにも軽く、もたつきのない切れの鋭い食感になるのですね。ふーむ、お見事。

プラリネクリームもじつに芳ばしく、よく焼けたものをローラーに掛けているとみえ、とても素晴らしい。
生地と同種の香りなのですが、焦がしている分、より濃厚で深い香り。
さらに、生地の表面に、ナッツが乗っかっているという周到さ。
それらをあわせて、二重、いや三重の香りの競い合いが、空気を食べているように軽いお菓子の印象を強固なものにしていると云えるでしょう。

刹那、表面サクッと歯切れよく、そしてクリームが渾然一体となってゆく。馥郁たる香りとともに……。ふうぅ。
頬がゆるんでしまう瞬間、大事にそっと味わいたいお菓子です。
●『レモンケーキ』 5×7.5cm 高さ3.7cm 45gほど。

あらん、レモンの形をした可愛らしいケーキ。
“最近、ようやく納得できるものが出来ました”と勧められました。
パウンド生地より少し卵黄多め。切ると中は、真っ黄色です。
肌理の細かな目の詰まった生地。
レモンは品よくふっと香るレベル。レモン風味のグラスアローを流し掛けるという手法もありますが、泣くし、セロファンで包んだ時に貼り付くし、で、生地のみにしているとのこと。
しっとりした生地だけで十分に美味しいです。むしろ、生地の上品な味わいを知ることが出来て良かったのではないでしょうか。
同じレモン風味のウィークエンドは薄く切って食べるものですが、こちらは大きいままパクッ! と行くのが正解のよう。
普通に食べて、生地の滋味豊かさとレモンの幽けき香りの気品を味わえることを喜びたいですね。
当ブログ「パイ日和」特集5の“内なる視線。孤高の道を歩む新人たち”(2011年8月)で、シェフはバイトが嵩じて就職したのでは、と書きました。
尋ねてみると、一応当たりでしたが、子どもの時からお菓子好きでスポンジを焼いたり、家族の誕生日にデコレーションの真似事をしたりしていたそうです。大学の時にサラリーマンには向いていないと思って、“狙って”アルバイトに入って、狙い通り社員になったということでした。
人に使われたくない、独立したい、という強い意思を持った人の行動は積極的ですね。
そうそう、8月から毎月“パイとアーモンドクリームのお菓子”(ホール)という予約制のシリーズが開始されていました。8月は『杏のガレット』でしたが、毎月内容が変わるそうです。うわぁ、なんだか楽しみですねぇ。
新人が伝統菓子、しかもパイに真剣に取り組んでもらえるというのは嬉しい限り。
もはや私の頭のなかは、9月は何? 10月は? えぇい11月は? 12月はどうなるのぉ? と占拠されてしまっています。
●『サブレサンドセット』1100円 『ダックワーズ』(アーモンド、ヘーゼル、クルミ)@230円 『レモンケーキ』230円
●「ロトス洋菓子店」
京都市下京区烏丸松原上ル因幡堂町699 TEL075-353-2050 定休日/水曜
今回は、最後に立ち寄り、久しぶりに自宅に持って帰って、ゆっくり味わおうという算段。
ところが、なのです。雨をやり過ごして、6時頃到着したら、なんと生ケーキはきれいに売切れ。木村シェフと小川さんが“こんなこと、 久しぶりなんですよ”と口を揃えています。そろそろ認知度も上がってきたようなので、これからは久しぶりなんて言っていられなくなるでしょう。
以前から気になっていたケーキが食べられなかったのは残念だけど、なんだか嬉しかったです。まさに、ご同慶の至り。よかったぁ!
ということで、ほんの少し残っていた焼菓子を買うことに。それが“残り物に福あり”と言いたくなる出来映え。ではさっそく、今回のお菓子をご紹介しましょう。
●『サブレサンドセット』(要冷蔵) 2.8×7.5cm 厚み1.5cmほど。

「小川軒」のレーズンウィッチがモデルかと思ったら、「六花亭」のレーズンサンドを好きでよく食べていたからとか。
じつは秘めたエピソードがあるのですが、話が道草してしまうので内緒。むふふ。
さて。こちらのギフトセットは、3種類が2個ずつ入り。
●プレーンのサブレには、バタークリーム、ブランデー漬けレーズン/鋭い香りのブランデーがよく利いているレーズンが特徴的。
●抹茶サブレには、バタークリーム(ホワイトチョコ入り)/サブレがサクッとした食感。最後にふっと香る抹茶の風味に落ち着きがあります。
●チョコサブレには、ガナッシュ/ブラウニー的なモコモコ感と口溶けの良さが魅力。ガナッシュのなめらかさがいいですね。
老舗の味わいの記憶を手繰り寄せてみると、イメージ追随ではありません。
プレーンの、レーズンのブランデーに象徴されるように、温和にまとめるより、どこか自己主張したくなる若い精神が漲っている、と云えばいいでしょうか。
薄い生地は、サブレと名乗る割には“砂”の感覚ではなく、口に入れた途端サクッタイプ。生地全体はしっとり感のものが多かったようです。いや、抹茶はサクッと締まっている感じ(といっても、これに関しては二人の意見が分かれたので、袋によって異なっていたのかもしれません)。
どちらかというと、バタークリームが目立ちます。メレンゲを加わえたことで軽やかさがクローズアップ。
この泡があるからこそ、普通堅くなるバタークリームが冷やしても軽さが失われないのですね。
その上、軽さがベースにあるからこそ、“レーズン、ブランデー”“抹茶”“チョコ”の瑞々しい個性が浮き立つという効果も生まれるのです。
木村シェフ曰く“クリームがぐにゅとはみ出ないように、冷やして召し上がってください”というのも納得です。

気に入っているのが、デザインの趣味の良さ。
ショーケースに飾ってあるのを一目見てから、その佇まいに惹かれていました。
帯の配色も「ロトス」のコーポレートカラーである薄紫に加えて、抹茶、チョコレートの各色が、DICの色見本帳の“日本の色”シリーズから抜き出してきたように、渋い配色。
和菓子屋さんのような(ちなみにアルミパックは羊羹用を転用、長期保存も安心かな)、侘び寂びの趣。
ギフトに適した京都らしさもあるし、3種類揃えたサービス精神も嬉しい。価格的にも手頃ではないでしょうか。
気の利いた手土産として重宝しそうですね。
●『ダックワーズ(アーモンド、ヘーゼル、クルミ)』(要冷蔵) 4.4×6cm 厚み1.8cmほど。

えっ、生地に薄力粉を使っていないとか。珍しいかも。
メレンゲにアーモンドプードルがベースとなり、ヘーゼル、クルミのバージョンではそれぞれのプードルが少し加わります。
サンドするのは、それぞれのクレーム オ ブール プラリネ。
サクッ! なんとも言えない軽やかな食感。立ち上る香気。
薄力粉が入っていないとこんなにも軽く、もたつきのない切れの鋭い食感になるのですね。ふーむ、お見事。

プラリネクリームもじつに芳ばしく、よく焼けたものをローラーに掛けているとみえ、とても素晴らしい。
生地と同種の香りなのですが、焦がしている分、より濃厚で深い香り。
さらに、生地の表面に、ナッツが乗っかっているという周到さ。
それらをあわせて、二重、いや三重の香りの競い合いが、空気を食べているように軽いお菓子の印象を強固なものにしていると云えるでしょう。

刹那、表面サクッと歯切れよく、そしてクリームが渾然一体となってゆく。馥郁たる香りとともに……。ふうぅ。
頬がゆるんでしまう瞬間、大事にそっと味わいたいお菓子です。
●『レモンケーキ』 5×7.5cm 高さ3.7cm 45gほど。

あらん、レモンの形をした可愛らしいケーキ。
“最近、ようやく納得できるものが出来ました”と勧められました。
パウンド生地より少し卵黄多め。切ると中は、真っ黄色です。
肌理の細かな目の詰まった生地。
レモンは品よくふっと香るレベル。レモン風味のグラスアローを流し掛けるという手法もありますが、泣くし、セロファンで包んだ時に貼り付くし、で、生地のみにしているとのこと。
しっとりした生地だけで十分に美味しいです。むしろ、生地の上品な味わいを知ることが出来て良かったのではないでしょうか。
同じレモン風味のウィークエンドは薄く切って食べるものですが、こちらは大きいままパクッ! と行くのが正解のよう。
普通に食べて、生地の滋味豊かさとレモンの幽けき香りの気品を味わえることを喜びたいですね。
当ブログ「パイ日和」特集5の“内なる視線。孤高の道を歩む新人たち”(2011年8月)で、シェフはバイトが嵩じて就職したのでは、と書きました。
尋ねてみると、一応当たりでしたが、子どもの時からお菓子好きでスポンジを焼いたり、家族の誕生日にデコレーションの真似事をしたりしていたそうです。大学の時にサラリーマンには向いていないと思って、“狙って”アルバイトに入って、狙い通り社員になったということでした。
人に使われたくない、独立したい、という強い意思を持った人の行動は積極的ですね。
そうそう、8月から毎月“パイとアーモンドクリームのお菓子”(ホール)という予約制のシリーズが開始されていました。8月は『杏のガレット』でしたが、毎月内容が変わるそうです。うわぁ、なんだか楽しみですねぇ。
新人が伝統菓子、しかもパイに真剣に取り組んでもらえるというのは嬉しい限り。
もはや私の頭のなかは、9月は何? 10月は? えぇい11月は? 12月はどうなるのぉ? と占拠されてしまっています。
●『サブレサンドセット』1100円 『ダックワーズ』(アーモンド、ヘーゼル、クルミ)@230円 『レモンケーキ』230円
●「ロトス洋菓子店」
京都市下京区烏丸松原上ル因幡堂町699 TEL075-353-2050 定休日/水曜