トリコ(1)『バゲット』『フィセル』『ヴィエノワクルミ』『焼菓子/フィナンシェ、エンガディナー、…

兵庫県西宮市、阪急神戸線夙川駅から1、2分という至近距離にありながら、回り込む位置のために比較的閑静な場所にある「トリコ torico.」。2011年7月5日オープン。犬の散歩中に見つけたパン屋だ。
吹田市の「シュクレクール」での修業をした西崎仁志さんの店。よりによって半径500m以内にすでに5軒ものパン屋が存在する激戦区。明るく愛想のいい奥さんに聞いたところでは、パン好きの人が多いからとのこと。
“ 本格フランス”にこだわっているわけではなく、菓子パンも焼いているし、美味しいと認めてもらえるものを少しずつ、という方針のようだ。ライ麦系も今後要望が増えれば、惣菜系ももう少しという。

まだまだようやく新しい窯に慣れてきたところ、というのが実情だろう。実力の評価はいずれまたパワー全開になったら。今回は、出会えた商品の単純レポートということに。


●『バゲット』 幅6.5cm 長さ46.5cm 高さ5cm 240gほど。
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切れ味のいいクープで、エッジが立っている。
ザックリと強いクラストに魅力がある。
パーセントを言うほどではないけれどライ麦も入っているそうだ。

香りがいいのは、師匠譲りでさまざまな産地の小麦粉をブレンドし、さらにライ麦まで加える工夫をしているからだろう。

クラムの気泡は比較的均一だし、ピカピカ光った膜を形成してないところをみると時間をかけた醗酵ではないようだ。
目が詰まって見える割りには軽い。
塩気が感じられ、徐々に生地の旨味が湧いてくる。



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トーストするとさらにサックリと軽快になり、旨味を増す。
生ではややもっちりしていたクラムがトーストすると歯切れが良くなる。
バターや軽めのチーズとよく合う。







●『フィセルオランジュ』 幅4.6cm 長さ21cm 高さ3.7cm 125gほど。
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バゲット生地に、オレンジピールとホワイトチョコが入っている。

ほんのりとしたホワイトチョコの甘さがオレンジの香りと甘みによく寄り添っている。
生地はホワイトチョコが加わったせいか、加水が多くなっているのか、かなりモッチリとした噛み応えがある。




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トーストすると、さらに甘みが増し、完全にお菓子パンだね。










●『ヴィエノワクルミ』 幅5.7cm 長さ12.6cm 高さ5.5cm 140gほど。
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砂糖が多め、ミルク(粉乳?)も入った甘い生地で、ヴィエノワズリーに分類される類いのもの。

皮付きクルミは大きめのダイスで、存在感がある。
よくあるクルミパンに近いものではあるけれど、生地にどっしりとした強さがあるので、軽薄にならずにすんでいる。かといって、“セーグルノワ”のような力強さがあるわけではないが。
食事パンとお菓子パンの中間的存在。


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トーストすると、しっとりもっちりとした食感が強化され、生地の優しさがより前面に出てくるようだ。








●『フィナンシェ』 4.5×9cm 厚み1.2cmほど。
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ボストックやパンペルデュといったいかにもパン屋らしい菓子ではなく、ケーキ屋と見まがう焼菓子が10種ほど並んでいる。健闘しているね。

その中から3つ選んでみた。

溶かしバターだろうか、香りはよく立っていて、その部分では満足感があるけれど、肝心のアーモンドが香ってこないのが惜しい。

しかし、アーモンドプードルと卵白による生地のモロッとした食感の代わりに、たっぷりのバターのねっとりした濃厚さが味わえる。
香りはさっぱり、食感濃厚というのが、最近のモードなのかもしれない。





●『エンガディナー』 5.5×6cm 厚み1.8cmほど。
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ビスケット生地でクルミのカラメル和えを包んで焼いたもの。

ショーカードに“苦いキャラメルで”と書かれているように、皮付きクルミの渋さがどこへ行ったか分からないほどに、カラメルの味わいが強い。
ほろ苦さが、とてもいいアクセントとなるレベルに焦がし加減がうまく調整されている。シナモンのような香り? もいいね。

生地もよく焼けていて味はいいけれど、ほとんど形を保てないほど脆すぎるのは、食べていてちょっと不便かな。
この部分がクリアされれば、とてもいいおやつ。





●『キャラメルオランジュのパウントケーキ』7×5cm 厚み1.2cmほど。
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これも同じほろ苦カラメルを使ったパウンド。

カラメルの香りの陰からオレンジの華やかな香りがふっと広がるところがいい。
ピールはほとんど確認できないレベルなのもいい。

カラメルのほろ苦さが主役。バターたっぷりのリッチな生地。
これも若いシェフの間で絶対視されているレシピ。カラメルとバターの重さどうしのバランスが取れているのだから歓迎すべきなのだろう。
ただ、これを軽くすることでほろ苦さにキレを出す方法もあると思うのだけど、どうだろう。




まだ、2ヵ月を過ぎたばかり。そのためかやや遠慮気味のようだ。
どのパンもお菓子も、それぞれしっかりした味わいへの指向を感じられるのだけど、商品ごとに個性の方向があっち向いたり、こっち向いたりしているところがあるように見受けられる。
ただ、あるシェフが“窯は半年待って欲しい”と言っていたのを思い出す。新しいオーブンを自分の手の内に入れるには時間を要するものらしい。技術の安定とともに、方向が明確化されていくのだろう。
激戦区で、どのように成長し、どのような商品に特化するのだろうか。期待して見守ることにしよう。



●『バゲット』280円  『フィセルオランジュ』200円  『ヴィエノワクルミ』170円  『フィナンシェ』180円  『エンガディナー』250円  『キャラメルとオレンジのパウンドケーキ』160円

●「トリコ torico」
 兵庫県西宮市大井手町3-6  TEL0798-73-0818  定休日/日曜・月曜

※ブログ「パイ日和」(http://pie.at.webry.info/201109/article_5.html)にも、このお店のパン&タルトを紹介しています。よかったら、どうぞ。