ドイツパン工房レーゲンボーゲン (2) 『シュトーレン』

兵庫県加西市、日本の原風景のような農村地帯。そこで営まれている、ドイツパンのお店「レーゲンボーゲン」さん(詳しくは前回ご紹介していますので、まだの方はそちらを)。
お父さんが経営していた、小さなスーパーをそのまま使っています。いまでも、日用品的な食品や雑貨の取り扱いはつづけています。地域に無くてはならない機能といったところ。
そこで、この地域には馴染みの無いドイツパンを浸透させようというのは大変な労力と時間が必要となります。品揃えとしては、より日常的なおかずパンのようなものも揃えているというのが現状。
でも、「神戸ドイツパン」という今は無き名門で修業した人だけに、ドイツパンへの思い入れは強く、素晴らしい焼き上がりの品が並んでいて、とくにその香りの高さに惹き付けられてしまうはず。
シェフの松末伸之さんがなかでもこだわっているのが、冬期限定商品の『シュトーレン』ではないでしょうか。「神戸ドイツパン」のレシピそのままに再現したものだそうです。


●『シュトーレン』  7.5×16.8cm 高さ5.8cm 500gほど。
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一番の特徴は、こちらのパンに共通の表面の堅さ。

コンヴェクションオーヴンのような水蒸気で焼くタイプではないので、最初に霧を吹いたとしても、低温で長時間(シュトーレンの場合1時間半)焼く間に水分が飛んで堅くなってしまうのです。

ガリガリと、強固な焼き上がり。
おっと、普通のケーキナイフでは切りにくいですね。パン切りナイフのような波刃かノコ刃で切るべきですね。ははっ。

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まあ堅いというと、現代の柔な日本人にとってはマイナス評価(なんでもかんでも“柔らかい”が誉め言葉というのには呆れますがね)になるでしょう。
が、その代わり得られているのが、芯の部分まで完全に焼き切れていて、生地の口溶けの良さをもたらしていること。

そして、香りがすばらしく高いということ。
基本の基本なんだけど、これが出来ているところが意外なほど少ないですよね。

焼き上げたものを溶かしバターに漬け、グラニュー糖をまぶし、粉糖で覆い、最低1週間ほど寝かして、落ち着いたものを配送してくれます。
到着から1ヵ月は日持ちのするお菓子です。


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生地にはラードが練り込まれています。
これは以前に「セセシオン」さんのシュトレンについても書きましたが、ラードが古い時代に使われた油脂だけに、ドイツ古来の製法の名残りではないかと思われます。

フルーツはレーズンをメインとして、赤と緑のドレンチェリーとオレンジピール。これらは少量のラム酒に一晩漬けられます。
あとは少しクルミが加わっています。

醗酵生地ではあるのですが、極力醗酵は抑えられていて、生地の目は完全に詰まっています。
これも堅さの一因ですが、逆にこの塊からサラサラと溶けて行く快感を呼び起こす必須の要素でもあるのです。

シュトーレンにつきもののクローヴなどのエピスは使われていません。それで、フルーツの香り、とくにオレンジピールの爽やかさがストレートに味わえます。
何より印象に残るのは、バターとヴァニラの柔らかく甘やかな香りの品の良さでしょう。
包みを解いたときから香り立ち、食べ終った後の残り香にいたるまでずっと持続してくれます。ピールの香りともよく合っているし。
ほんの時おり出会う、クルミの食感の目覚ましさもいいですねぇ。

エピスが入らなくて淡白になりがちな部分を補っているのが、生地に練り込まれたラード。
生地の味わいがどこか力強く素朴な印象を与えてくれます。濃厚さをベースとした爽やかな香り。
一切れ一切れ大切に食べたい味わいです。



ああ、やっぱり松末さんらしいなぁ。武骨でまっすぐ。土に根差した味わい、びくともしない力強さがありますよね。
それと、配送のパッケージが“うどんつゆ”の箱だったりするのが、「スーパー マツスエ」らしさ。空き箱がいっぱいありますものね。ふふふっ。
そんなところでムダ使いして商品価格に上乗せするなんて発想はこれっぽっちもない、それが松末さんのいいところ。皆さんも商品を送ってもらうとき、何の箱で来ても驚かないようにね。私たちは、“あっ、らしいなぁ”と喜んでしまいました。

とまれ、落ち着いて商品そのものを愉しみ、味わいましょう。



●『シュトーレン』2500円(配送代別途)

●「ドイツパン工房 レーゲンボーゲン」
 兵庫県加西市別府町甲1565-2  TEL0790-47-0123  定休日/日曜・祝日