アトリエ ラ パージュ ブランシュ (9) 『オペラ』『チョコレートの焼き菓子』

京都、地下鉄烏丸線松ヶ崎駅から北西に7、8分のところにある「アトリエ ラ パージュ ブランシュ」さん。品揃えの数は少ないけれど、1品1品の完成度の高さが頭抜けていることをずっとお伝えしてきています。
今回チエさんにお聞きしたところでは、以前西陣のほうで頒布会からスタートした10年ほど前から、まったくルセットが変わっていないとのこと。恐るべき早熟の才能ですね。
店頭で販売しているお菓子だけでなく、教室で教材としているお菓子もその当時確定したルセット。いまだに直す必要がないと言いますから、驚嘆に値しますね。
今回は、これまでずっと運悪く出会えていなかった名品の一つ『オペラ』と、新登場の焼菓子をご紹介しましょう。


●『オペラ』 3×8cm 高さ3.6cmほど。
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以前に、他店の『オペラ』を紹介した時のこと。
本家の「ダロワイヨ」が高さ2.5cmだから、という論旨のことを書いたら、それが“絶対”のように、安直に受け取られたようです。やれやれ。

明確なコンセプトがあって高さを変えることは、自由なのです。と、私たちは考えています。

チエさんはパリの「ダロワイヨ」で食べた時に、“チョコレートもコーヒーも美味しいけれど、せっかくの美味しいジョコンド生地がもったいないなぁ”と感じたのだそうです。
その体験から自分はジョコンドの美味しいものにしようと生まれたのが、この『オペラ』。この背の高さは、必然です。
つまり、『オペラ』をどう捉えるか、が鍵となるわけです。

こちらは、チョコレートケーキの範疇に納まりきらず、ジョコンドの美味しさを満喫するためのケーキ、それが「ラ パージュ ブランシュ」の『オペラ』なのです。
変えたのは、ジョコンドの厚み、真ん中のガナッシュをチョコレートバタークリームに、アンビベで生地全体を湿らせない程度に抑えた、表面のパータグラッセをグラッサージュと半々にしたこと、以上4点。
マイナーチェンジに思われますが、趣きはずいぶん異なります。


では。2.5cm厚ではなく、2.5cm幅に細くカットして、エレガントにそっと一切れ、口に運びましょう。
ぅう …… ん、あぁ~おいしい。

コーヒーとチョコレートの響き合う美味しさ、チョコレートとコーヒーのバランスは風味ではコーヒー、味わいではチョコレートといったところ。
そこへ、ジョコンドの美味しさが、しっかり前面に押し出されています。存在感ありますねぇ。

スペイン産アーモンドの細挽きにこだわっているそうです。油が出ないように扱いが難しくなるのですが、風味を高めるために敢えて使っているとのこと。狙い通りに、豊かな風味が全開。うーん、この時点でもう満足感が高まってきます。

コーヒー(トラブリ使用)シロップにはフラパンのコニャックを使い、深い風味にキリッとしたエッジが立っています。チエさんはなんの素材を食べてるのかがはっきり伝わることを選んでいて、お酒の使い方も基本単独主義。だから、味わいがスッキリ、きれい。

ジョコンドへのアンビベは半分以下のレベルに抑えているので、生地のザックリとした食感が残っているし、バタークリームとともに溶けて行く、緩やかな口溶けの楽しみが生まれています。ふうぅ。

画像この口溶けの心地良さは、バタークリームに泡をたくさん含ませないようにしてるから。
泡が入ると口当たりはふんわりと軽くなるけれど、空気は断熱材ですから、溶けにくくなってしまうのです。また、アンビベの水分と出会っても口の中で分離しにくく、一体感を保っています。
たしかに、口に入れた刹那重さを感じますが、その一瞬だけで、あとはスムースな口溶け。
綿密な配慮が、ケーキを美味しくしています。


すべてが親和力を持った、緊密な関係を築き上げたケーキ。
あえて、オリジナルのビッチョリ濡れた味わいを打ち消す、緩やかな口溶けに気品の高さを感じられます。
他店では味わうことのできない、第1級の『オペラ』になりえているのではないでしょうか。お見事!





●『チョコレートの焼き菓子』 7×7.5cm 厚み1.7cmほど。
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新作です。
ルノートルの“コンコルド カカオ66%”を使った、チョコレートのパウンド。

シナモン、ジンジャー、クローヴ、アニスとラム酒が香りを放っていて、“パンデピスのチョコレート版”と私たちは捉えています。

クルミやラム酒漬けのミックスフルーツ(レーズン、オレンジピールなど)が入っているので、フルーツケーキの要素ももちろんありますが。

それにしても、袋を開けた途端に立ちのぼってくる、スパイスとラムの馥郁たる香り! 素晴らしいですね。
比較的パッサリと焼けた生地が、ちりばめられた小さなチョコチップがトロリと溶け出すのにしたがって、スルリと溶けて行く感覚がいい。ベチャベチャした感じにはならず、生地がしっかりしているせいか、最後まで粒子感が残り、そのことが逆に口の中でベタベタ重い泥の塊になることを防いでいます。

最後に口に残るのは、ジワンッとしたアルコール感。
案外沢山使っていることが後から分かります。最初、これだけ存在が隠れ気味ということは、よほどバランスがいいんでしょうね。満足、満足。

ちなみに、“コンコルド66%”が廃版となるため、この商品は3月いっぱいくらいでなくなり、その後は“コンコルド70%”を使ったルセットに変更される予定です。
チエさんとしては珍しく、これはもう味わえなくなるのでぜひ! という強力お薦め。皆さんもこの味わい、記憶に止めておいてほしいなぁ。



こちらのケーキをいただくと、いつもどこか心がリフレッシュされる感じがあります。
パーツ、パーツがここまで美味しかったのかと再確認させられるし、バランス感覚も秀逸。一度食べた知っている味わいであっても、食べる毎に新鮮な驚きを与えてくれるお菓子なのです。



●『オペラ』420円  『チョコレートの焼菓子』250円

●「アトリエ ラ パージュ ブランシュ」
  京都市北区下鴨北茶ノ木町28-6  TEL075-723-5329  定休日/不定休(HPで要確認)