W.ボレロ(ドゥブルベボレロ)(7)/チョコレートケーキ3種『アールグレー』『キャラメルノワマロン…

滋賀県守山市から全国に名を轟かせる「パティスリー ドゥブルベ ボレロ」さん。ここのところ毎年“サロンデュショコラ”にも登場して、チョコレートの実力を見せつけています。
過剰なまでの主張と、なんでこんなに清々しいのと思わせる洗練が、不思議に共存するのが渡邊シェフのお菓子。ちょっとありえない境地を切り開いてるのです。そして、その力はガトーにも遺憾なく発揮されています。
今回、じつに素晴らしいチョコレートケーキに出会いましたので、じっくりとご紹介しましょう。


●『アールグレイー』 径6cm 5.5cmほど。(※ドモリ社のサンビラーノ・ラクテ51%使用)
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陶然。立ちゆらぐ薫香、なんたる気品のある香り。ふうぅ。

アールグレイのクレームブリュレがまったくマスキングされることなく、清冽に、しかも強く香ること。

周りをサンビラーノ・ラクテのムースで包まれているのですが、ミルクの加わった柔らかな酸味が紅茶の風味と物の見事に結合しているのです。
極上のマリアージュ、そうそうあるものではありません。

ムースの中には、ヘーゼルナッツのカリカリになったものも入っていて、食感の刺激も折り込み済み。
底生地の分厚めのチョコのサンファリーヌも滑らかさを裏切らず、重厚感を醸し出しています。
トップに、アーモンドの入ったチョコのヌガティーヌ、ヘーゼルナッツのチョコ掛け3個、アーモンドのクラクランがあしらわれています。

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ふふっ、ヌガティーヌが宙に浮いた感じのプレゼンテーションが楽しいなぁ。

でも、食感が欲しいのは分かるけれど、ここまでしなくとも十分に感動的。
それほどまでに、素晴らしい組合わせに集中したい気持ちが起こってくるのです。

いやあ、魅惑的な出来映え。お見事です。




●『ショコラ・クレマンティヌ』 2.2×10cm 高さ4cmほど。(※ドモリ社のアプリマック75%使用)
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ビスキュイショコラサンファリーヌとドモリのアプリマックのガナッシュが交互に5層。
トッピングは金柑のシロップ漬とオレンジピールのクリスタリゼ。

どっしと重いチョコレートケーキ。
シェフ曰く“クラシックショコラ的なもの”。
なるほど、言い得ていますね。

上から下までナイフでカットして、口へ運ぶと …… 最初の一口のあと、沈黙してしまっている自分に気付きます。
このうえなく優雅。

クラシックショコラは重厚なチョコ生地のみのお菓子。
こちらは生地とガナッシュですが、サンファリーヌの生地もガナッシュも溶けやすく、口の中で一瞬にして一体となって、重い存在感を発揮しはじめます。
クラシックショコラのすぐ隣にいて、しかし、生ケーキの良さを失わない。重厚さの中に生き生きとした新鮮な口溶けと香りの華やかさがあるのです。

フロ-ラル系の香りが際たつアプリマックを使ったこと、そしてガナッシュにマンダリン・オレンジのピュレを少量加えたことが、重くなり過ぎる傾向のあるケーキに華やかさを付け加え、新たな領域を切り開いたと言えるかも知れません。

トップの金柑やオレンジピールもチョコレートの闇に光を差すイメージでいいですね。

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お聞きしたところでは、ガナッシュの作り方が飛び切り繊細。
5層組み立てる工程のなかで、最良の状態にするため、ガナッシュ1段分ずつバターをバーミックスを使って乳化するという、とても面倒な手法を取っているのだそうです。
だからなのですね、素晴らしい口溶けなのは。

シンプルだけど隅々まで神経の行き届いたケーキ。
珠玉の逸品、お見事です。





●『キャラメル・ノワ・マロン』 2.2×10cm 高さ4.5cmほど。(※ヴェイス社のレコルタ55%使用)
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フランス菓子の定番の一つとなった感のある『アンブル ノワ』の変形版と捉えたのですが、さて、どうでしょう。

『アンブル ノワ』はプラリネカスタードとチョコカスタード、ジョコンドとザッハ生地の組み合せ。トップは、珈琲風味。

たいして、この『キャラメル・ノワ・マロン』は、上がグルノーブル産のクルミの入ったカラメルムース、下にはマロングラッセのダイスの入ったチョコムース(といってもガナッシュ的重さ)。
生地はビスキュイ・ジョコンド・ショコラのみ。

構成上はかなり似ています。
が、しかし。食べた印象はがらりと違います。

『アンブル ノワ』が濃厚ではあるけれどまだまだ温和なのにたいして、『キャラメル・ノワ・マロン』はチョコ生地とマロングラッセにアルマニャックがアンビベされていて、相当に強いのです。
精悍な強さ。濃厚な上に鋭いパンチを繰り出してくるのです。

プラリネとチョコの重厚さをアルコールでキリッと引き締め、鈍重さに陥るのを避け、時代の最先端を行く鋭敏さを付け加えたという印象。

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さらに驚くべきことに、風味が繊細で、ほかの素材にマスキングされがちな栗を合わせています。
個性の強い素材に囲まれていながら、小さなダイスなのに食感も感じるし、風味もちゃんと伝わってくるのです。
チョコムースにクレームドマロンが加えられていたのですね。なるほど、道理で。

ほとんど稀有のバランス感覚。冴えわたっています、お見事です。




3つの気品のあるガトー、“チョコレートという一つの主題の変奏”と捉えることができるでしょうか。いずれも、シェフのエスプリを感じさせる、贅沢で個性的なケーキに仕上がっています。
今でも、残響が甦ってきて、またじっくりと味わいたいなぁとときめいてしまいますね。深く魅せられたというわけです。
それにしても、どんどん深く、研澄まされてきていますね。とくにお酒の使い方が絶妙。シャープさを強調したり、陶酔感に誘ったり、目標を定めて自在に使っている感じがします。
このレベルに来ると、たんに素材の組合わせを思い付くだけでなく、最終形のイメージがくっきりと意識されていての開発だということが、ヒシヒシと伝わってきます。
もはや関西を代表するのではなく、日本を代表するパティシエに上り詰めていると思うのですが、いかがでしょうか。いずれ世評が決めてくれることでしょう。



●『アールグレー』462円  『ショコラ・クレマンティヌ』462円  『キャラメル・ノワ・マロン』441円

●「パティスリー ドゥブルベ ボレロ W.Bolero 」
 滋賀県守山市播磨田町48-4  TEL077-581-3966  定休日/火曜