レ・プティット・パピヨット (1) 『アリゼ』『ルヴァン』『ビーズ』『ミストラル』『シロッコ』

2012年4月、大阪、地下鉄四ツ橋線肥後橋駅から南西に5分ほどのところに出来たショコラトリー、「レ・プティット・パピヨット」。フランス人クロシャール・テディ(Clochard Teddy)さんと大阪出身の奥様、古谷恵さんとで開いた新店だ。
こちらには生ケーキが5種類置かれているが、どういうわけかすべて“風の名前”、というのにまず最初に気がつくだろう。
興味を抱いて訊いてみると、風の名に決まったのはたまたま。フランスらしさを表現できて、春夏にちなむものを考えたら風のシリーズになったとのこと。ちょっと面白くて、全5種類いっぺんに制覇してしまった。
秋冬はまた、別のシリーズを考案中とのこと。これも気になるね。(今回の担当はクボタ)



●『アリゼ』 径7cm 高さ4cmほど。(※写真無、ドーム型)
アリゼ(Alizee)とは、貿易風のこと。北緯(南緯)30~40度地帯から赤道に向かって年中吹いている北東(南東)の風。

熱帯を思わせるパッションフルーツのムースとミルクチョコのムースを合わせている。
表面はごく薄のホワイトチョコでコーティング。底生地は、厚めのチョコスポンジ。

淡い繊細なミルクチョコの味わいに合わせて、パッションも優しい味わい。ちゃんと酸っぱいけれど尖るほどではない。むしろ、チョコの淡い風味に独特の香りを寄り添わせているといった感覚。

日本人のシェフだったら、底生地はムースの柔らかさを裏切らない、まるで抵抗感のないものにするところ。
ところが、シェフのテディさんは、ムースとは異なる食感があってこそと考えているのではないだろうか。
おそらくビスキュイだと思うけれど、かなりしっかりした存在感があって、ただの淡いケーキで終わらないところが面白い。




●『ルヴァン』 径7cm 高さ4cmほど。(※写真無、ドーム型)
ルヴァンは、Levant とも Le vant とも書け、陽が登るという意味であると同時に、風でもあるというネーミング。

ビスキュイキュイエールを圧しつぶしたような食感の生地の上に、ヘーゼルナッツのプラリネ、そして生クリームを加えたチョコレートムースがドーム状に。

商品カードにも“軽い口当たり“と説明書きがあったが、ムースだから軽い口溶け。
と思いきや、ガナッシュほどの濃厚さ。
その強さがプラリネの香りの高さと拮抗して、チョコレートの魅力を高めている。

クーベルチュールはカカオバリーやヴァローナなど、シェフのイメージに合ったものを選択しているとのこと。
たっぷりのムースを、じっくりと食べたくなる。チョコレートの魅力を満喫できるケーキだ。

底生地は、やや粘度を感じる興味をそそられるもの。巷でよく見掛ける組み合せではなく、ここでしか味わえない生地を作っているのもいい。




●『ビーズ』 5.2×5cm 高さ5.2cmほど。
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ビーズ(Bise)は、冬に吹く北風。

ビターチョコレートのムースとカシスソース(トップに0.5cmほど)の組み合せ。じつに、シンプルだ。

チョコレートは濃厚だけど、なめらかな口溶けで、ストレートにチョコの魅力が迫ってくる。
カシスのソースも、酸味が際立っていて、かなり濃厚。トローリとチョコレートに絡む。
苦みと酸味が競い合う関係だが、甘さが仲を取り持って、バランス良く自然な相性の良さが生きている。

ここでも、底生地が独特。フィナンシェをイメージしたという、アーモンドプードル入りのピスキュイ。1.2cmもの厚みがあり、プードルがわずかにプチプチと感じられることも手伝って、存在を強く主張。
チョコとカシスが強いので、これくらい分厚くてちょうどいいバランス。





●『ミストラル』 底辺6.5×6.5cm 高さ4.5cmほど。
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ミストラル(Mistral)は、南仏に吹く冬の厳しい北風。

底生地はビスキュイショコラ・サンファリーヌのような、フワリ、サラリとした食感のもの。
ビターチョコのムースの中に、ブニュンと強めの感触を残すフランボワーズのジュレが射込まれている。
表面は、極薄のカバーチョコにピストレの仕上げ。


ビターチョコとフランボワーズの組み合せは定番だが、ジュレの強い食感と遠慮のない酸味で新鮮な組み合せを食べているような錯覚に一瞬陥る。



画像もう、それだけでもお手柄と言えるだろう。
お菓子は有限の食材の組み合せから、いかに新たな感動を生むか、という時代になっているのだから。


カバーチョコの薄さからも腕の良さが伺えるし、シンプルだけど侮れない美味しさを感じさせられる。






●『シロッコ』 底径7.5cm 高さ3.8cmほど。
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シロッコ(Sirocco)は、サハラ砂漠から地中海を超えて吹き付けてくる乾燥した熱風。

8mmもある分厚い底生地。どっしりと重く、存在感を強くアピール。
ムースはダークチョコとあるが、その強い風味を活かしつつ生クリームを加えて手懐けたもののようだ。

射込まれているのは、オレンジ入りのクリーム。
オレンジの風味は感じるが、酸味はなく、アングレーズ、ヴァニラ系のクリームの美味しさを楽しむものになっている。

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なんと、酸味は、珍しいことに、グラッサージュが担っているのだ。レモン果汁のグラッサージュ。おっと、意表をついてくるなぁ。

甘く優しいクリームとムースの組み合せをキリリと引き締めてくれている。
底の周辺部分にグラッサージュが流れ落ち、雫となって、小さな溜まりを作っている所が、とくに刺激があっていい。





生ケーキの形は○△□のみ。飾りなし。いかにもシンプル。味の組み合せも、チョコと何かフルーツかナッツ、そして底生地。どこまでもシンプル。
その代わり、チョコレートの扱いが丁寧で、チョコの風味がよく活かされている。合わせるフレーバーはもちろんだが、底生地を特徴的なものにしているのが他所にない面白いところ。食べるほどに興味を惹かれてしまう。
ケーキとしての工夫はされているが、あくまでチョコレートそのものを愉しむ、ショコラティエのケーキ。力強いベースを見失わないところに共感する。


明日は引き続き、ボンボンショコラのご紹介。ショコラティエらしさを発揮した魅力的なボンボン。ぜひご閲覧のほどを。



●『アリゼ』450円  『ルヴァン』450円  『ビーズ』450円  『ミストラル』450円  『シロッコ』450円  

●「レ・プティット・パピヨット」
 大阪市西区京町堀1-12-24  TEL06-6443-7875  定休日/月曜・火曜

※ブログ「パイ日和」では、このお店の『タルトレット オ ショコラ』を紹介しています。