フラウピルツ(3)『シュトレン』

京都・北白川、少し奥まったところにある、ドイツ菓子のお店「フラウピルツ」さんから、待望の『シュトレン』が届きました。「オンコーアンマタン」さん「ハーバックストゥーベ」さんに続き、今年3本目です。
昨年までのシュトーレンは、「ブログ パイ日和/特集8 シュトーレン百花繚乱、伝統派から個性派まで堂々の20撰!」(ブログを始めた2005年からのものを一堂に紹介)をご笑覧くださいませ。

ロケーションも人通りを避けたところ、店主の宮下あゆみこさんの趣味は店名通り“きのこ”。どこか我が道を往く感があります。
でも、彼女が作るお菓子は研澄まされた洗練を強調するのではなく、誰にでも愛される素直な美味しさを前面に押し出しています。
では、2012年最後のシュトーレン、いただきます。


●『シュトレン』 18.5×11cm 高さ4.3cm 400gほど。
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箱を開けると…… ほぅ、緑の細い紙による草の褥に横たわっていて、そばには茸まで。
森の中、いや草原にそっと隠れているシュトーレン、といったところでしょうか。

独特の可愛いプレゼンテーションで、オリジナルの世界に誘い込まれる感がありますね。
陶製の茸の陰から妖精が現れそう(陶製の茸は予約者へのプレゼント)。自称14歳のあゆみこちゃんシェフらしい。

封を溶いて袋を開けると、ふわ~んと豊穣ないい香りに包まれます。
チーズを思わせるような醗酵バターの濃厚な香り。しばらく浸っていたいような、心の奥底が溶けて行くような香り。本能のどこかを強く刺激されているような。



画像ゴツゴツの容姿、底面はヴァニラシュガーだけ、表側も分厚く張り付けるのではなく、薄めに粉糖を掛けています。

中に入っているのはレーズン、レモンピール、オレンジピール、アーモンド、とオーソドックス。さらに、国産レモンの皮。
そして、マジパン発祥の地リューベックにあるリューベッカー社製のマジパンが一本通っています。



では、薄くスライスしたものを、一口。
表はわりと堅い食感、どこかクッキーっぽい感じ。
そして、次第にほろっと解けて行く口溶け。あぁ、美味しいなぁ。
誘惑的なバターの香りからして、濃厚な味わいに違いない、と踏んでいましたが。やはり。リッチな印象ですね。

バターは澄ましにしているでしょうか。それにやはり国産レモンの皮が利いていますね。スッキリ感が前面に押し出されることで、この『シュトレン』が清らかな存在になっています。
「フラウピルツ」さんのケーキの特色でもありますが。

画像香りの饗宴についても一言云わなければなりません。
醗酵バターに加えて、レモンなどのピール類の爽やかさ、ナッツの芳ばしさ、表面をしっかり焼き込んだ粉の香り、マジパン棒のほのかな杏仁香(バターの陰に隠れているけれど、じつはそこそこ香っている)。
これだけ薫ると、香辛料が一切入っていなくても、満足感が高くなりますね。
食べている間は、そのことをすっかり失念していたほど、スパイスが入っていないことを忘れさせるだけの力があるのです。

生地は国産小麦を使っていて、飽きのこない奥行きのある味わい。
表面はガリッと強い歯触りがあるけれど、中はしっとり、サラリとした口溶けが魅力。
レーズンの甘さ、かすかな酸味・ネチッと感が、バターの芳醇さと相俟って芯の強い味わいを作り出しています。いやぁ、お見事です。

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濃厚な味わいなので、定石通り、薄くスライスして食べるのに適しています。
7円/gとこれまでのパティスリーの中でも、けっこうお高い品でもありますしね。
味の美しさも含めて大切に食べたい、その時間も大切にしたいお菓子です。昨日食べ始めたばかりなので、これからゆっくりと移り変わる風味も楽しみたいな。

では、Frohe Weihnachten !



●『シュトレン』2800円 (7円/g)

●ドイツ菓子「フラウピルツ」
 京都市左京区一乗寺樋ノ口町19-6  TEL075-712-7517  定休日/日曜・月曜、不定休有