ルート271 (4) 『バゲット271』『ヴェニス』

大阪府高槻市、JR摂津富田駅から北へ20分余り。不便な場所ながら飛ぶ鳥を落とす勢いのパン店「ROUTE271(ルート271)」。
生地そのもの、菓子パン、調理パン、すべての領域で創作力の冴えるシェフ船井高志さんが率いる店だ。
この1年以内の新作から、わずかではあるが2品を厳選して紹介しよう。


●『バゲット271』 42×6.7cm 高さ3.8cm 200gほど。
画像
船井シェフは昨年、東京にパンの現況を視察に行った。
その際、生地そのものの美味しさへの探求の強さに刺激を受けたという。
それ以来、自身のパンの生地の見直しをテーマにしている。
元々、関西でも有数の美味しさを誇るパンだから、かなり次元の高いところでの話しである。

そして、この『バゲット271』も見直しの一環。
雑誌の企画で“リュスティック”として提案したもの。食べてみて、自分なりに満足のいくものになったのでバゲットに応用した。

フランスパン用粉、長野産石臼挽き粉、はったい粉という粉の構成。
イーストを極力少なくし、老麺(前日仕込んだ熟成した生地)を加え、低温で一晩かけて醗酵させている。
雑誌の段階より老麺が増えているし、進行形のパンであり、半年後にはもっと美味しくなっているだろうと、自信に満ちた笑みを見せた。

加水が多く、クラストはカリカリと軽快な食感で歯切れが良く、クラムはしっとり。
画像
粉の美味さ、醗酵による奥行きの深い味わいに、はったい粉の親しみやすい芳ばしさと焦げ味が適度な雑味となって、さらに豊満な味わいに高めている。

かなり欲張った味で、バターもチーズも必要としない。これだけで満足できる。
水分が多いので、しっかり焼き戻して、クラストのカリカリをぜひ味わってほしい。





●『ヴェニス』 15.3cm×4.1 cm 高さ3.4cm 90gほど。
画像
レーズン種で起こした生地に、レーズンとベーコンを練り込み、ニンニクとパセリの入ったクリームチーズを挟んでいる。

“あり得ない取り合わせでしょ。だけど、案外いけるんですよ”との言葉通り、“案外”なのですね。はははっ。

チーズを挟んで、と言ったが、正確には“塗って”というレベル。強い味わいのものをほんの少しに控えたことで、ベストバランスが生み出された。

レーズンの甘みだけがやや異質だが、ベーコンとレーズン、チーズとレーズンは元々好相性。
ベーコンとチーズの味を和らげるほのかな甘みとして存在させることで、不思議な三角形が成立しているのだ。

生地がやや具に押されている感がなきにしもあらずだが、しっかりした食感と微かな酸味で個性を発揮している。
素っ気ない姿だが、一口食べた時の、惣菜系なのかおやつ系なのか…、一瞬のおやっ?感は面白いね。




5月にオープンして丸4年を迎えるが、あれよあれよというまに、関西のパン屋の顔の一人となった感がある。
少しも高ぶらず、朗らかに人なつっこい笑顔を絶やさない性格は天性か。誰からも愛される性格だから、ますます周囲からあらゆるものを吸収して、さらに個性的なパンを生み出しつづけることだろう。



●『バゲット271』260円   『ヴェニス』200円

●「ROUTE271」
 大阪府高槻市氷室町2-47-15  TEL072-628-1078  定休日/月曜・木曜

※ブログ「パイ日和」では、このお店のパイを紹介しています。