ヴィロン (1) 『バゲット レトロドール』『パンオセーグル』

風薫る五月、今月は “東京のパティスリー&ブーランジュリーの駆け足紹介月間” といたします。

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渋谷の駅から坂を上って、東急文化村の手前、道路の反対側にあるブーランジュリー、ブラッスリー「ヴィロン」(VIRON)。おっと、パティスリーも忘れてはいけない。
非常に高い品質レベルで、フランスの食文化の底辺部分を移入している店。朝9時から深夜まで軽食とデザートを提供してくれている。頼もしい存在だ。


●『バゲット レトロドール』 5.5×52cm 高さ3.3cm 240gほど。
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フランスの最高峰(パリ市主催のバゲットコンクールで10年間で7回1位に輝いている)と言われる小麦粉、ヴィロン社の“レトロドール”を使ったバゲット。
このバゲットを焼きたいがために、多額の費用を払って独占契約まで結んでいるとか。

以前、ある京都のパン屋さんのシェフは“ずるい”と表現していた。
美味しくできるのが当たり前。
だけど、原価が掛かり過ぎて、日常のパンの価格では提供できない。1.5円/gで提供するなどということは普通できない、という意味だ。
それを資本の力で成し遂げ、ほかで利益を上げるということを、個人店にはできないからということから漏れた言葉。

あるケーキ屋さんのシェフは、最高峰に憧れて、奥本製粉が扱っているヴィロン社のレトロバゲット用の粉を使ってみた。が、1袋1袋性格がことなり、毎回、細かくルセット、とくに焼き時間や温度を変えなければならない“暴れん坊”だと言っていた。
結局、コスト面も合わせて、もうワンランク下の粉に落ち着いたようだ。

ことほど左様に、このバゲットを安定した品質、べらぼうとまでは言えない価格で提供し続けているだけでも大した値打ちのあることなのだ。
はたして、その味は…。


ビアンキュイの1本を選んだ。長ーい! 
朝一番に買い物して、一日もって歩いた。とても長くて骨の折れる伴侶となった。杖にしたいとふと思うほど。

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さて、切り口の濃いベージュ色、大きな気泡に、思わず“ほう”と声が出る。
期待を胸に口へ運ぶ。
粉の味わいがともかく濃厚、焼成の香りも馥郁として豊かな芳ばしさ。その濃厚さのレベルに合わせて塩気もかなり強い。

焼き戻して食べると、クラストはカリッサクッと明快な歯切れの良さ。普通クラムに使う表現だろうが、カリカリとあまりに気持ちがいいので、つい使ってしまいたくなる。

クラムはもっちりと引きが強い。風味が増して、とくに甘みが強くなる。おかげで塩気が気にならなくなる。おそらく、焼き立てを食べてもらうという想定のもとに、決められた配合なのだろう。まあ、それが当然だね。

明らかに主役のパン。何かを付けたりするのがもったいないほど。ふむ、お見事。





●『パンオセーグル』 6×9cm 高さ4cm 130gほど。
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見掛けがいいね。

ライ麦の香り、味が強い。よく焼き込んだパンで、クラストは苦みが出る直前まで深く焼かれている。
おかげで、素晴らしく芳ばしい。

焼き戻すと、ガリッザクッとかなり強い歯ごたえとともに景気良く砕けてくれる。
クラムの方は、香りにも食感にもふっくら感が増し、食べやすくなる。

これまた全体に濃厚な味わいで、このパンが主役であってもおかしくない。いいパンだ。





前回訪れたときは夕方で、めぼしいパンは売り切れていて、ほとんど総菜パンばかり買ったと記憶している。
朝のうちに訪れると品揃えが豊富で、サイズも大小揃っている。この店だけを取材したとしても、十分に間が保つほどにバラエティ豊か。お見それしました。



●『バゲットレトロドール』357円  『パンオセーグル(ドゥミ)』242円

●「ブーランジュリー パティスリー ブラッスリー ヴィロン」
  東京都渋谷区宇田川町33-8  TEL03-5458-1770  定休日/無休

※ブログ「パイ日和」では、このお店のパンを紹介しています。