アクイユ(1)『クグロフ』『エキゾチック』『バナニエ』

2014年6月13日に、大阪市西区北堀江にオープンしたばかりの「パティスリー アクイユ」さんです。川西康文(1979年生)さんと、奥様の梢さんのお店。
川西さんは大阪生まれ、和歌山県橋本市育ち。不思議に和歌山出身のパティシエたちは朗らかな人が多いですが、川西さんもその例に漏れません。ニコッと明るく爽やかな笑顔。高校時代はバスケットボールをしていたそうで、スラッとした身長。
高校までほとんどお菓子を食べた経験もないのに、なんとなくケーキの道に進もうかなと思って、辻製菓へ。卒業後、堺市の「フランシーズ」で1年半。その後、曲折を経て「なかたに亭」で計10年ほど。最後の3年間はスーシェフ。
なんとなく入ったお菓子の世界、最初はタラタラやっていたそうです。先輩の村田さん(現「ルシェルシェ」シェフ)が東京修業から戻って、スーシェフに就任してから、触発されて俄然やる気になったとか。
当然、基礎は出来ていたのでしょうが、いいケーキを作りたいという積極的な意欲に燃えてから、10年程度でお店をオープンしたのですから、着実な成長。相当な努力もされたはずなのに、ご本人は苦労を語りたくないノンシャランな性格のご様子。オープン早々、肩の力の抜けた晴れやかなポーズがいいじゃないですか。   
さてさて、その成果をじっくり味わってみましょう。


●『クグロフ』   底径11cm 高さ8cm 170gほど。
画像
お店のマークにもクグロフの型を用いているほど、クグロフがお気に入りだそうです。
シェフ曰く「可愛い型でしょ」。
焼き菓子の棚にも飾ってあります。

『クグロフ』の名では醗酵生地のものを焼いていますが、同じ型を使ってケイク生地のもの焼いていて、のめり込みぶりが伝わってきます。

醗酵がうまくコントロールされているのか、型に詰める作業がよほど丁寧なのか、生地がいびつに焼き上がることがなく、並んでいるものがすべて端正な姿。美しいですね。

よく練り込んでしっかりグルテンを出したブリオッシュ生地、ドライイーストを使っていて、心地いい醗酵香に満たされます。
ちらほら、レーズンとオレンジのミンチが入っていて、ときどき風味が増して、飽きずに食べられます。
焼き上がりにバターを塗って、グラニュー糖を振り、粉糖で仕上げ。

画像
バターのリッチな香りと砂糖の甘さも懐かしい気分になる美味しさ。
パネトーネやパンドーロなどと同質の、上等だけど気楽、いや、素朴だけど上品なパン菓子。



画像
ムシャムシャと食べていて、気がつくともう一切れと手が伸びているところが、このお菓子の魅力を物語っていますね。
食べるほどに愛情の深まるお菓子だと云えるでしょう。








●『エキゾチック』   器内径5.6cm 器高さ7cmほど。
画像
マンゴーのヴェリーヌ。

下からパッションの酸味を強調したマンゴーのクリーム、マンゴーの方が強いパッション入りのジュレ、ココナッツのパンナコッタ、マンゴーのコンポートとジュレが一体になったもの。

もはやマンゴーのデザートは年中あっても不思議ではない存在になってきました。
ということは、季節ごとの気温に応じて、甘みと酸味のバランスを調整してもいいのではないかと思います。

というのは、パンナコッタがそこそこ甘いし、下から2段目のマンゴーのジュレも甘いのです。
それ自体も組み合わせもよく出来ていて、口触りも喉越しも素晴らしい!

が、この日は午後から急に暑くなって30℃超えという天候。もう少しパッションの強い酸味でさっぱりしたかった、という思いも残りました。
その日はたまたま、川西シェフの予想以上に気温が上がり、当初、酸っぱく作っていたマンゴークリームを甘めにした日でもあったということのようです。

本来とても美味しいものであるだけでなく、シェフがつねに調整してくれているだけに、ベストのタイミングだったらと想像するとさぞかし… 、ねっ、シェフ。





●『バナニエ』    径5.5cm 高さ4.7cmほど。
画像
バナナのお菓子は優れたものがけっこうありますが、またまた、出色のケーキが登場しました。

全体をヴァローナのジヴァララクテにエキストラビターを加えたムース、さらにキャメルでコーティング。
底生地は、パンドジェンヌショコラ。
ムースの中にはカラメリゼしたクルミとクランブルをチョココーティングしたもの、その上にバナナをラム酒とシナモンでフランベしたものを射込んでいます。

バナナとクルミという黄金コンビを衒いなく使っているところがいいですね。
それと甘みは表面のキャラメルに任せていて、ムースもバナナもそれほど甘みを強調していません。

ムースはエキストラビターのおかげか、スッキリとした印象。
柔らかく優しい味わいでバナナの濃厚な風味を盛り立てつつ、しっかりチョコの存在感を主張することも忘れていないのです。

これだけでも十分に美味しいムースなのですが、クルミとクランブルの目覚ましいまでの食感が、なめらかなムースから飛び出してくるところがたまらない。ホォーッ! 

最近はなめらかさの邪魔になることを恐れて、ほとんどがフィヤンティーヌ。そのチャリチャリ感がスケール小さく感じられるほどに、クルミとクランブルのザクサク感はしっかり役割を果たし、むしろ、ムースのなめらかさを強調する結果になっています。
クルミやバターの香りが過ることで、全体の印象を強めることに成功していると云えるでしょう。

フーム、お見事。なんだか、唸ってばかり!




川西シェフの説明を、横でニコニコ聞いたり、ケーキの裏側も見えるようにゆっくりと一回転してくれたり……。さりげなくフォローをする奥様の梢さんが、お店のケーキの第一のファン。
そういえば、レシートに商品名がきちんと書いてあって、売り上げ確認には必要だからと思ったら「私もほかのお店でレシートにひとつひとつ商品名が書いてあった方が嬉しいから」とのこと。賞味期限シールも剥がしやすいように右肩折り、ドッグイヤーしてくれています(先輩の「ルシェルシェ」さんは右下だったかな)。
つねに客の目線を忘れない、心のこもった濃やかな接客は、店名のアクイユ 「accueil 」(おもてなし)そのもの。こちらも自然と微笑んでしまいます。
川西さん、心強い味方とともに、勇躍邁進してくださいね。



●『バナニエ』450円  『エキゾチック』600円  『クグロフ』600円  (※税抜き)

●「パティスリー アクイユ」
 大阪市西区北堀江1-17-18  TEL06-6533-2313  定休日/火曜  営業時間/10:00~20:00(月曜のみ19:00)
 ※ブログ「パイ日和」では、このお店のパイ&タルトを紹介しています。