サイラー(1)『ロッゲンブロート』『ダウアープレッツェル』『クグロフ』『リンツァーシュニッテ』…

本日は、福岡市の「ベッカライ&コンディトライ サイラー」さんの登場です。

福岡市南区に住む友人が以前から「近所にいい店があるとよ」と言っていたのですが、今回、お土産に持ってきてくれました。
早速HPを見てみました。なんでもオーストリアで1913年に創業した「サイラー」さんの4代目、アドルフ・サイラーさんが福岡で働いた縁で、ベッカライ&コンディトライ「サイラー」福岡店を1994年に開いたとのこと。オーストリアの実家は弟さんが継いで、現在も盛業。
アドルフさんの経営手腕は大したもので、イタリアパンの専門店や、バイエルンミュンヘンのオフィシャルライセンスを取得したスポーツバー・レストランを開くなど多角化に成功。一方でハウステンボスのホテルオークラと技術提携して指導に当たったり、専門学校の講師を務めたりと、技術的にも高く評価されているようです。
“やり手”というイメージが湧きかねませんが、お店はアットホームな空気がゆったりと流れていて、本格的なオーストリア・ドイツ系のパンも日本的な総菜・菓子パンも手広く揃えてくれる親切さも兼ね備えています。
また、今春(2014年3月)に店内にオープンした“カフェ クリムト”には、グスタフ・クリムトの絵画が飾られ、毎週水曜にはコンサートが開かれるなど、食だけでなくオーストリア文化を幅広く伝える催しも。
さぁて、パンやお菓子から、その文化の香りが伝わってくるでしょうか。愉しみですね。



●『ロッゲン ブロート』   9.5×9.3cm 厚み4cm 230gほど。
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はっ、はぁぁ! 170円! 
しかも内税、安いっ!! 

ライ麦100%ですよ。
スパイスもコリアンダー、アニス、フェンネル、キャラウェイシードと盛りだくさん。

豊かでかつ品のいい香り、はちみつの優しい甘さ、サワーライの酸っぱい匂い。
プンパニッケルを思わせるような極粗挽きの粒々感。噛み締めるほどに湧き出てくる甘みと旨味。

これだけの味わいが 1円/g をはるかに切っているとは、ふーむ信じがたい朗報ですね。

ハード系チーズの強い旨味を受け止めるとき、個性を最大限に発揮してくれます。
香りは食べ進むうちに慣れてしまって、ほとんど感じなくなりますが、これが美味しさのベースであって。
この味を日常のものにしてしまうと、ほかの香りのないパンを食べた時に物足りなく感じるんでしょうね。

いやはや、お見事です。




●『インフェトラー』   径21cm 高さ9cm 430gほど。
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インフェトラーという言葉は今のところ意味不明。
機会があれば聞いてみることにしましょう。

ライ麦80%、乳清で仕込んだ、古くから伝えられているパンだそうです。

ライ麦が多いので、ザラザラボロボロした食感のパン。
色づけのカラメルが使われていないのか、かなり色白。

ここでもフェンネルがほのかに使われていて、気品の高い香りを静かに放っています。

目立ちませんが塩気も意外と強いですね。有塩バターを塗ると、その塩気が目立ってしまうのであまりお薦めできません。
チーズの場合はコクが全体の旨味を引き上げるようで、塩気は目立ちません。これがいいな。

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全体に乳清を使っているせいか、ミルクパンほどではないけれど、柔らかな甘みが支配していて、とても親しみやすく万能性の高いパンだと思います。








●『ダウアー プレッツェル』   13.5×9cm 厚み1.5cm 30gほど。
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細身でカリッカリッの焼き上がり。
ラウゲン液を使った焼き上がりの褐色の肌も美しいですね。

ちょっとびっくりなのが、塩っぱいと思うほどたっぷりの岩塩。
粒々がいっぱい付いています。
減塩希望の人は払い落として食べてもいいのですが、一度はぜひそのまま食べてみてください。

生地に練り込まれたフェンネル(クミン?)がほのかに香って、強い塩気を品良く感じさせているのです。

一口ごとに「ほおーっ、なるほど」と感心してしまった次第。
この思い切りと合わせのテクニックは日本ではあまり出会わない発想ではないでしょうか。

ともあれ、ビールの供にぴったりです。





●『ヴィエナー クグロフ』   辺5.5cm 高さ8cm 厚み2cm 30gほど。
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フルーツケーキタイプのクグロフですね。

生地からもミックスフルーツからもいい香り。オレンジの香りが過ります。

洋酒を使っているので、それが芳香の源。
聞いてみるとトリプルセックにVSOPだそうです。華やかさはオレンジだけではなかったのですね。
手を掛けて素晴らしい香りをものにしていますね。いいなぁこれ。

甘~い、優しい味わい。品良く、嫌みがなくって…。
これだったらホールでも、ペロリと食べてしまうでしょうね。








●『リンツァーシュニッテ』   5×6cm 高さ2.5cm 60gほど。
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リンツァートルテなのですが、切り菓子なので、シュニッテン。

お土産ということからも分かるように、作ってから少し時間が経っています。
リンツァー生地(タルト生地とスポンジ生地の中間的な)に挟まれたグロゼイユのジャムから水分を吸って、生地はモロッ、クチャとしたややだらしない食感になってしまっているのですが、それでもなおかつ美味しいのです。

生地にはクルミの細かなダイスが入っていて生彩を放っているし、なにより香りがいいです。
お決まりのシナモンに加えてクローヴが力強さをプラス。
ほかにもまだなにか香っているようです。奥の深い香りです。

ジャムは甘みの勝ったもので、鋭い酸味の冴えはなく、全体にゴチャッとした印象。

なのに、なぜだか人懐っこい美味しさがあるのですねぇ。ふぅ。これこそが伝統の力というべきものでしょう。


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ふむふむ、衝撃的な美味しさというのではないのですが、納得できる美味しさ。
なんと言えばいいのでしょうか、側に居てホッと安心できる友のような。存在を押し付けがましく主張しないくせに、無くてはならない欠かせない存在。しかも、グレードを引き上げてくれる。
大切にしたい、ありがたい存在、それが「サイラー」さんではないでしょうか。
ぜひ、行ってみたくなりました。Sちゃん、ありがとう!





●『ロッゲン ブロート』170円   『インフェトラー』450円   『ダウアー プレッツェル』120円   『ヴィエナー クグロフ』170円  『リンツァーシュニッテ』195円  (※内税)

●「ベッカライ・コンディトライ サイラー」
 福岡市南区長丘2-1-5  TEL092-551-7077  定休日/ほぼ無休   営業時間/7:00~20:00