パティスリーエメラ(7) 『ガトーバスク マロンカシス』『ケーク オ マロン』

奈良市、近鉄・奈良線富雄駅の南すぐのところにある「パティスリー エメラ」さん。
オーナーシェフは藤原尚樹さん。2代目さんですが、お店を引き継ぐにあたって、お父さんのお菓子をきっぱり止めて、自分のレパートリーばかりに切り替えました。
まったくの新店同様の手探り状態、様々な迷いを通り抜け、今ようやく、長年の蓄積が花開いた感があります。じつに、華やかに匂い立つように。

  *  *  *  *  *

今回私たちが選んだ商品は季節柄、マロン尽くしの感がありますね(栗はフランスのアンベール社のものを使用しているのだとか)。
栗を使ったお菓子、今回、5アイテムも立て続けにいただいたのに、しかも同じ栗なのに、飽きることがまったくありません。その一つひとつがはっきり個性的な世界を確立しているからでしょう。天晴な展開力です。

  
●『ガトーバスク マロンカシス』  辺7.2cm 高さ4.3cm 80gほど。
画像
ほぅ、贅沢なバスク。

バスクといえばザクッモロッとした側の部分とほくほくとした生地、センターのバスククリーム(パティシェール+アーモンドプードル)がややもっちり、という素朴なナチュールタイプが多いですね。
現地では、じつにさまざまなタイプのものがあるそうですが。

このバスクの生地は上下3mm、サイド3.5mmのみ。アーモンドプードルだけでなくクルミプードルも入っています。アーモンドを増やす以上にナッツ感が増すとのこと。
生地の本体部分がバスククリームに置き換えられ、センターにはマロンペーストがどーんと。
底生地の上にカシスジャムをナッペ。

画像うーむ、とかくやり過ぎは下品に陥るものです。
お気をつけあそばせ、と一瞬不安が過りましたとも、あははっ。

が、しかーし。
とおーっても美味しい! その上に、気品を失っていないのですね。

生地全体の風味、香ばしさはもちろん、端っこの部分のカリッとした食感も楽しいし、各パーツが活き活きと個性を発揮しつつ、素晴らしいハーモニーを奏でているのです。
じっくり味わえ、かつ、ワンダーランドに踏み込んだようなわくわくの味わい、お見事です。




●『ケークオマロン』  4.5×4.7cm 高さ(本体)4.2cm 90gほど。
画像
なんだろう、このキューブは? 正体を隠した謎の物体に興味が湧きます。

所謂、栗のパウンド、です。
マロンペーストをふんだんに煉り込んだケーク生地に、ラム酒風味のグラスアローを流しかけています。
トップに、マロングラッセ。

ううむ、シンプルだけど深い! 深すぎる!!

なんだろう? とまたしても甘やかな疑問が …… このねっとり感。
だけど、焼き切れていて、ふんわり感もある、生地の風合いの素晴らしさ。時間を掛けてゆっくりと解けてゆく濃密な溶け心地の妙。
それに、栗、栗だぁ、栗の風味の濃厚なことといったら。

ふ、ふ、ふぁははは~なんて美味しいのでしょう。

グラスアローのカシャ感・濃厚な甘さ、ラム酒の濃厚な香りの魅力も、美味しさの鍵を握っていますね。
いや、もうダウン寸前の衝撃、天晴れ、痛快!
「テリーヌっぽいといいますか、お二人には気に入っていただけると思いますっ」というシェフの得意げな顔を思い出し、お主やるなと、思わず口走ったほど。

じつは、栗のパウンドには、秘密にしている心に刻み込まれたものがあります。正直白状致しますと、その逸品と双璧をなす美味しさだったのです。愕然…。




藤原シェフは「他に何もないところですから、目指してきていただいたお客様を失望させたくない」と語ります。その努力の甲斐あって、「エメラ」さんのために一日空けて、目指していく値打ちのあるお店(3ツ星の定義)になり得ていると思います。
私たちも、他所を回る気にもならず、一店集中。「エメラ」さんのためだけの一日。
そして、味はもちろん、シェフの人柄、スタッフさんたちの気配りなど、すべてにおいて十二分に堪能して帰途へ。大切な、そしてもっとも嬉しい行事になっているのです。



●『ガトーバスク マロンカシス』300円  『ケーク オ マロン』350円   (※外税)

●「パティスリーショコラトリー エメラ」
  奈良市富雄元町2-6-40  TEL0742-44-6006  定休日/水曜  営業時間/11:00~20:00 (日祝~19:00)

  ※ブログ「パイ日和」では、ヴィエノワズリーコーナーのパイ生地のお菓子『ピティヴィエ』『ショソン』をご紹介しています。