新店! ショコラトリー・パティスリー・ソリリテ(1) 『コロンビア』『チョコリン』『タブレット2種』

2015年11月17日オープンの新店、「ショコラトリー・パティスリー・ソリリテ」さん。
大阪、地下鉄肥後橋から土佐堀通りを西へ進み、浪速筋を渡って南に二筋目を入ったところにあります。道順を詳しくお知らせするより、お酒とコーヒーの「篁」の裏手の筋といったほうが分かりやすい人も多いでしょうね。近くにはバーも多いとかで、お酒はほとんど使わないつもりでいたけれど、お酒好きのお客様用に『バッカス』というケーキも用意されています。
このところ、大阪市西区の江戸堀から京町堀にかけて、お菓子屋さんが賑やかになってきましたね。「アドリアーノ」「ミィタン」「レ グーテ」「プティット パピヨット」「セイイチロウ ニシゾノ」。
そこへ、新しく仲間入り。オーナーシェフは、橋本史明さん(1980年生まれ)。主な修業先は「なかたに亭」「オリジンーヌカカオ」
ショコラティエは繊細で神経質なという、私たちの勝手なイメージですが、橋本シェフは優しく柔軟性のある精神の持ち主のようですね。お話ししていても笑いが絶えないのでした。


●『コロンビア』  3×7.6cm 高さ4.6cmほど。
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まっ先に薦められました。シンプル極まりないケーキです。

誤解を恐れずに言えば、何もしないチョコレートケーキ。あははっ。
たしか「なかたに亭」の『カライブ』も、カライブのビスキュイに、ムース、グラッサージュのみという組み合わせでしたっけね。

はてさて。下の生地はビスキュイショコラ。上はムースショコラです。
チョコレートはコロンビアの“カサ ルカ社”という地元資本の会社の“コロンビア”というカカオ分70%のクーベルチュールを使っているとのこと。
シェフは日本の取り扱い商社の“フィノ デ アロマ”の名前で呼んでいます。
fino という言葉はシェリーによく使われる用語で、辛口、もっとも軽く繊細なものを指します。シェフはチョコレートでそういう世界を目指していて、この言葉に惹かれているのではないでしょうか。
そういえば、「ブーレファリネ」(「なかたに亭」で修業)さんの『ルカ』も同じ会社のサンタンデール70%を使っておられたような。
みなさん、奇しくもチョコレートの名前のネーミングなのですね。そして、チョコが主役の一本勝負。


とはいえ、アプローチは三者とも異なります。
橋本シェフは、チョコレートの香りをマスキングする卵や油脂分を極力加えない方針。そうすると、よりカカオ感が増すそうです。
だからムースも、ボンブやアングレーズのような卵黄の入ったものをベースにしないのです。

何ベースですかと尋ねると、「ガナッシュベースです!」とちょっと謎を掛けるような答え。
…… むむむむ、なるほどね。
生クリームも牛乳を加えて脂肪分を落としているとのこと。さらにグラッサージュすらしない徹底ぶり。

わぉ、素晴らしく華やかな香り! 
余分な味も装飾もなくチョコレートだけなのに、華やかなのです。

そして、芳醇濃厚なカカオ感は存分楽しめるのに、スッキリした印象。クラッときますねぇ。
生地も繊細の極地をいくような、ほろほろさらさらと瞬時に解ける食感に驚かされます。しっかりたてたメレンゲに粉をさっくり混ぜるだけ、グルテンを出さないように気を付けているのでしょう。
これだけシンプルで軽やかな、透明で清らかな味わい、華々しい香りのチョコレートケーキに、久々に出会いました。

重量感で圧倒させることは簡単ですが、このように軽やかさ、清らかさでというのは至難の業。
シンプルなものほど難しいと言いますから、この成果はよほど修練を積んだ人ということになりますね。オープン1ヶ月でこの域に達しているとは。

鮮烈な存在感のチョコレートケーキ。いやはや、参りました。お見事です。




●『チョコリン』  器内径4.1cm 器全体の高さ7.5cmほど。
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あまり見かけない、チョコレートのプリン。
名前も愛嬌があって可愛いですね。

プリンなのに例によって、卵を使わないのだそうです。えぇ?

チョコレートと牛乳、水! そして少量のペクチン。
基本的にチョコレートの固まる力で固めていて、ペクチンは補助だとのこと。

このルセットの基本は、師匠の一人「オリジンーヌカカオ」の川口行彦シェフのもの。
チョコレートをカサ ルカのコロンビア産カカオ分61%のものに置き変え、それに応じて微調整しているそうです。

そっとスプーンで掬って口へ運ぶと、プルッとした直後からスルーーー。
伸びやかに、滑らかに、清らかに溶けてくれるのです。
卵を使うとどうしてもねっとりしますが、不思議な食感。摩擦係数ゼロの平面をどこまでも滑って行くような、気持ちよさ。
チョコレートの香りも豊かに立ち上ってきますね。少し焙煎香が強め、いかにもチョコレートというイメージど真ん中の香りかな。

これまた清らかな味わいと、はじめて経験する感触がお見事。プリンを薦められたのも初めて。
それと、卵アレルギーのお子さんでも食べられるプリン、ということも考慮してくれているみたいですよ。





●『タブレット(コロンビア)』  7.7×15.5cm 厚み1cm 100gほど。
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コロンビアのクーベルチュールの流動性を少し高めるために、61%のものを少し加えたり、ほんの少しの調整でオリジナルのタブレットに仕上げています。
70%が偽りにならないレベルの調整で、ほんの少し甘みが付いて食べやすくなっているとのこと。

ふうぅ、香りが高いですね。
良質のワインでそのアロマが何の香りなのかを探っているときのことを思い浮かべました。
ワインそのものの香りというより、その先にある森の香りやベリーの香りであったり、ほんの微かにですが革を思わせる香りなど、やや神秘性を感じさせる香りです。

華々しく香っているのですが、食べている間、香りを嗅ぎ分けている間に心が鎮静化し、閑けさの世界に引き込まれて行きます。

今更といえば今更ではありますが、つくづくチョコレートって、大人のための嗜好品だと思います。いいですねぇ。



●『タブレット(カカオニブ)』  7.7×15.5cm 厚み1cm 100gほど。
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こちらは61%のクーベルチュールを使ったもの。

カカオニブに砂糖をまぶしたものを貼付けています。なんだか可愛いデザインに見えなくもないですね。

殻付きの豆を入荷して、ビーン トゥ バーは出来なくても(規模が大きくなるので一人では出来ないし、卸先を確保していないと採算に合わず、新人には無理)、豆をそのものを使った提案をと、考えられたもの。

“カカオニブ砂糖まぶし”をその場で試食させてもらったのですが、口の中で噛み潰され擦り合わされることでチョコレートが完成するという趣向。
ふふふっ、愉快! 
橋本シェフも、どうちょっといいでしょ、とニマニマ。
ちなみに、噛み合わせがいい人ほど、よりいいチョコレートになる!!  やったぁ。

なお、殻はお茶に入れるとフレーバーティーになるのだとか。これもチョコ感が強いものがあったり、ほかの醗酵のような匂いがしたりと、さまざま(この殻、小袋に入れて販売してもいいんじゃない? シェフ)。
面白い体験でした。

さてさて。タブレットですが、コロンビアに比べるとよりフローラルな印象を抱きました。それに、わずか9%の違いで随分甘く食べやすいですね。
ニブも砂糖掛けされていて甘いのですが、カカオそのものの刺激が加わり、小気味いいアクセント。カリリとした感触とともに香りが立ち上ります。



オープン時に雇っていた助手に早くも辞められて、たった一人で頑張っているところ。
「なかたに亭」の中谷シェフからこちらのオープンを教えてもらったのですが、もう一人の師匠である「オリジンーヌカカオ」の川口シェフからも忘れた頃に定期的に激励の電話が入るなど、可愛がられる人のようですね。小1時間話しただけですが、なんだかわかるわかる。
周りの引きのいい人というのは、伸びるんですよ。ますます期待が高まります。



●『コロンビア』460円  『チョコリン』400円   『タブレット(コロンビア)』900円  『タブレット(カカオニブ)』1050円  (※外税)

●「ショコラトリー・パティスリー・ソリリテ」
  大阪市西区江戸堀2-2-5  TEL06-4980-8518  定休日/火曜  営業時間/10:00~19:00

   ※ブログ「パイ日和」では、こちらのタルト2種をご紹介しています。