エミル(2) 『シュトーレン』

神戸市灘区、阪急神戸線・六甲駅から南東に5分ほどのところにある「エミル ツッカーベッカー」さん。ベテラン奥村シェフの腕から、美味しさのツボを抑えたお菓子が生み出されます。
本日ご紹介する『シュトーレン』も、長年の経験で身体に滲み込んだ技と味、風格ある味わいが楽しめます。


●『シュトーレン』  20×8cm 高さ5cm 500gほど。
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ほぅ質実剛健的、立派な勇姿。ドイツの伝統的なシュトーレンです。

ほぼ「フロインドリーブ」のレシピ。老舗の味を長年支えつづけてきた職人さんだから当然ですね。

ラードが入るドイツの古いタイプのレシピがベースにあるのですが、ドライフルーツを古漬けにしないとか、スパイスを入れないとか、ドライフルーツが新鮮に感じられるように作られているのが大きな特長です。

レーズンとオレンジピール、クルミ、アーモンドをダークラムに2、3週間漬けます。シェフは1週間でもいいくらいと言います。長く漬けると香りに淀みが出るんだとか。
シュトーレンは1ヵ月ほどかけて食べるもので、生地やバター、フルーツの風味は徐々に低下して行くのに、スパイスは落ちにくい。だから食べ進むに従ってスパイスのケーキになってしまう。それで、スパイスは使わないとのこと。
ラードはドイツで習い憶えたものですが、生地をサクサクと軽くする働きもあるようです。

表面のコーティングは弘乳舎のバターを溶かしバターにしてどっぷりと浸け、粉糖をたっぷり。
殺菌と保湿をかねて保存性を高めています。目的はそうだけど、これが美味しいんだな。


画像さて、1cmほどに薄くスライス。
けっこう生地がみっしりと詰まっていて切るのに力がいるほど。

ところが、口に入れると、ほろほろ~ザクザクッ! 
簡単に崩れます。ナッツ類が細かなダイスで入っているので、それが粗めの食感を与えているのでしょう。

嗚呼、風味がいいですねぇ。醗酵の香り、しっかり焼き込まれた生地の香り、生地の中のミルクの香り、ナッツの香り、オレンジピール、レーズン、バター、そしてラード。
どれもが人を圧するような強い香りではなく、そっと馥郁と香り、輻輳し、相を重ねて重厚な存在感で迫って来るのです。この優しく生命力溢れる香りの前には、スパイス不要の意味は自明。

レーズンのどっしりとした甘さとオレンジピールの華やかな味わいとの対比に絞り込まれているのも、ピタリと焦点が当たっている感がいいですね。

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華美すぎないドイツらしい落ち着いた印象を抱きました。
伝統の重みをしみじみ味わう、一日一日。クリスマスを待つ一日一日。
うーん、ちょっと言葉に詰まるほど。お見事です!





●『シュトーレン』2000円(4円/g)  (※外税)

●「エミル ツッカーベッカー」
  神戸市灘区日尾町2-3-17  TEL078-843-1880  定休日/水曜・第1木曜  営業時間/10:30~19:30

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