アグレアーブル(京都)(11) 『マロンカシス』『ケックシトロン』『パリブレスト』

京都、地下鉄・烏丸丸太町駅から南東に3分ほどのところにある「パティスリー アグレアーブル」さん。フランス菓子の王道を往くお店。本物が分かる大人に深く愛されています。
こちらは日頃、月2回程度のお休みで頑張り、9月にまとまった遅い夏休みを取っています。2017年から加藤晃生シェフの古巣フランスへ行くことが恒例行事となった模様。
agre_paris3.jpg今年も、勤めていた「ラヴィエイユフランス」や元同僚が開いた「オサントノレ」のほか、ディジョン、リヨン、モンペリエなどを歴訪。奥様の かをるさんの証言によると、シェフはフランスの地に立つと水を得た魚のようにイキイキとしているそうです。自分は自分という独立心の強い加藤さんにとっては、健全な個人主義が根付いた空気が心地いいのでしょう。
「ラヴィエイユフランス」では2年続けての訪問でルネ親方亡きご家族とすっかり親しくなり、家庭にまで招かれて食事を共に楽しんだそうです。来年はマダムの故郷であるノルマンディー行きに誘われているとか。「カトウはフランス人以上にフランス人だね」と、すっかり気に入られているのが分かります。お店の壁には出会った人たちとの笑顔写真が毎年増えていくのでしょう。
帰るごとに着々と人脈を広げているところが、人との繋がりを大切にする加藤さん夫妻らしいですね(詳しいフランス紀行&写真はこちらへ)。
では、フランスの風を感じながらケーキの紹介とまいりましょう。


●『マロンカシス』  径7cm 高さ7cmほど。
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ほぉ、なんて優しいムースなの! 

こちらではめったにお目に掛かれないムースをフランスで定番の“マロンカシス”で作ってくれています。
最近は日本でも定番となりつつありますが、こんなに優しく夢見るような味わいは、稀。

味わいが淡いと、マロンがぼんやりしてカシスばかりが目立ちます。多くのところが全体を甘ったるくすることでカシスの酸味に拮抗させるやり方。大甘でパンチのある強い味わい、それも大好きです。

が、しかーし。こちらはアプローチが違うのです。
シェフ曰く「『カシスマロン』やなくて『マロンカシス』。栗の季節のお菓子ですから、マロンがベース」
ということで、優しいマロンの味わいをベースにカシスを軽やかなアクセントに止めているのです。これがじつにエレガント。

カシスはピューレと果実の入った軽く、酸っぱいムース。サバトンのマロンペーストを使った優しいバヴァロワという組合せ。底にVSOPのシロップにくぐらせたビスキュイジョコンド。
飾りのように見えるモンブランクリームやしっかり甘いマロンのコンフィが絶妙の甘さとマロン感のアクセント。
そして、バヴァロアとムースという微妙なテクスチャーの違い。口溶けの緩やかなバヴァロワにしたことで、マロンが長く口に残り前面に押し出されるということもしっかり功を奏しています。

これだけ軽やかで優しさに溢れているのに、印象の強さを作り出しているのが素晴らしい。さすがお見事です。



●『ケックシトロン』  11.3×6cm 高さ6cm 250gほど。
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人気のケックシリーズのひとつ。今回は、レモンを選んでみました。

檸檬ケーキ=爽やか系、と思いますよね。
ところがどっこい。甘く炊いたピールがたっぷり入っているのです。ほろ苦で、まるでレモンのマーマレードを食べているような印象。爽やか系を期待して食べると、一瞬驚かされるほど。

でも、なのです。しっとり、とろーりと緩やかに溶けて行くとともに豊かなバター風味を味わわせてくれる特級の生地に親しみ始めると、あらん、苦みのあるピールが次第に魅力を放ち始めるのです。

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イメージと違うレモンケーキだったので、なんというか、裏切りにあった気分 …… えぇえぇもちろん心地いい裏切りですぞ。
強い味わいですから、薄い一切れを大切に少しずつ食べ、日を追って癖になります。魅了されてしまうのです。

やってくれますねぇシェフ、まさに大人だけの大人になった人だけの本当の愉しみ! 上質なお菓子です。

(蛇足/「子供でもこのケックの大ファンがいますよ」と かをるさんから言われそうな予感もしていますぅ)




●『パリブレスト』  径6.8cm  高さ5cmほど。
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フランス菓子の定番中の定番。
1891年のパリーブレスト間の自転車レースを記念して作られたものです。

車輪のようなリング型のシュー菓子。こちらでは大きなアントルメを切り分けて販売するのではなく、1個1個可愛く仕立ててくれているのも嬉しいですね。

このお菓子を食べ慣れたフランス人のお客さんが「今まで食べた中で一番美味しいッ」と喜んでくれるそうです。
というのも、シュー生地がはっきり塩気の感じられる強い味わいの本場風だから。日本的感覚では、どうしてもシュー生地を優しいものとして捉えがち。霧を吹いてパリッとした焼き上がりを目指していても、どこかソフトでマイルドな食感、味わいに止めてしまっています。
加藤シェフの作る生地は向こうで覚えた配合。京にありながらこのお店のスペースは、完全にフランス。日本の治外法権の地なのです。

その個性の強い生地に、クリームはバタークリームにカスタードと、アーモンド・ヘーゼルのプラリネを加えたもの。トップにはローストしてカラメリゼしたアーモンドダイス、サイドはアーモンドとヘーゼル。この組合せの濃厚さをぶつけているのです。
ナッツの香ばしさ全開で重厚な味わい。疲れた身体にも活が入るような目覚ましさと云えるでしょう。いや、猛スピードで自転車を漕ぎたくなるくらい? ともあれ、いいですねぇ!



オープンして6年目。ずっとブレないでフランスで身に付けて来たことを貫いてきたことで、「アグレアーブル」文化が出来上がった感がありますね。
ここに行かなくっちゃ食べられないお菓子だし、お二人との会話に心遊ばせることができる貴重な時間。異文化を味わいつつ、ほっこりと寛げるお店です。つまり、私たちのかけがえのない“はなれ”なのです。



●『マロンカシス』480円   『ケックシトロン』1250円  『パリブレスト』480円 (※内税)

●「パティスリーアグレアーブル」
  京都市中京区夷川通高倉東入ル天守町75-7  TEL075-231-9005  定休日/月2回程度不定休  営業時間/10:00~20:00