ミャーゴラ(2) 『シトロン』『ローマ』『レモンクッキー』『レモンケーキ』

京都、紫野の「パティスリー ミャーゴラ」さん。前回も書いたように“Miagola ミャーゴラ”はイタリア語で猫の鳴き声。フランス語とイタリア語のチャンポン。店名は猫なのにマークは檸檬。
不統一を指摘するお客様もいるようですが、このとらわれない自由さが奥山シェフらしさ。自分の考えにも縛られていないのです。柑橘好きではあるけれど、檸檬が一番好きというわけではなく、デザインする時にたまたま素材があったから檸檬のマーク。今、お客様に求められるから檸檬のお菓子が増えているけれど、そのうち「シトロンヴェールやパンプルムースになっているかも~あははっ」と気楽な構え。
楽しい気まぐれ、一緒にワクワクしながら愉しみましょう。


●『シトロン』  6.7×5cm 高さ6cm 85gほど。
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わっ檸檬! 檸檬がころんとショーケースに並んでいます。

檸檬型を手に入れたので、ぜひ作ってみたかったケーキ。形、質感、色、水で洗ったばかりの水滴風、細部まで檸檬だねぇ。じっと見蕩れます。

そっくり菓子は和菓子が得意とするところですが、洋菓子の技でチャレンジするのは珍しいですね。
パリの歴史ある5ツ星ホテル「ル・ムーリス」のスターシェフ セドリック・グロレ氏が檸檬型ができる以前から作っていたのをいつか真似したいと考えていたそうです(そういえばいろいろな果実のそのまんまケーキシリーズがありましたっけ)。

本物の檸檬の、外皮の黄色い部分、内側の白い部分、果肉の3層をきっちりなぞっています。
まず果肉部分から。フレッシュの檸檬の果肉と皮をシロップ漬にした後、角切りにし、刻んだフレッシュミントとともに寒天ゼリーで絡めたもの。かなりしゅるしゅるです。
白い部分は、柚子とホワイトガナッシュを合わせて立てたものを寝かしたもの。
外皮は、レモンの型から抜いたホワイトガナッシュをホワイトチョコのピストレ用の液に潜らせ薄いパリッとした膜を作り、その上からピストレを打ち凹凸を作り、さらにナパージュを吹いて、フレッシュな艶を出しています。この造形に対する執念は大したものですね。

さて、問題は味です。
シェフ本人が言う通り、切り分けた時、果肉部分が皿にとろとろと溢れ出て、全部が食べられないもったいなさがあります。でも、スプーンで掬うとか、コップに入れて食べて、溢れたものを飲んでしまうくらいの努力に値する美味しさなので、こちとらまったく気にならない。
柚子、檸檬、ミントの鮮烈さ、清らかさは心を鷲掴みにされるほど。柚子とミントでより繊細で、より鋭角的で、より気品に満ちているのです。キリキリと鋭角的な酸味をホワイトガナッシュが優しく包み込んで宥めてくれるあたりもいいですねぇ。うーむ、美味しいッ!

シェフに言わせると“未完”とのことですが、待ちつづけた甲斐のある出来映え、お見事です。



●『ローマ』  径5.5cm 高さ4.8cmほど。
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何ゆえローマ? 
奥山シェフがサッカー少年だったことを前回お伝えしましたね。
ASローマ、セリエAの名門のユニフォームの色が赤茶色で、ミルクチョコの色からイメージを飛ばしたのだそうです。そういえば中田ヒデが着ていたユニフォームを思い出しますね。

これはルクサルドのコンテスト用に開発したルセット(アルコールは若干弱めになっています)。書類審査で落ちたそうですが、今でも自信たっぷり。

底生地がピスタチオのビスキュイ。マラスキーノ(サクランボのリキュール)を直打ち。その上にホワイトチョコとピスタチオのペーストとフィヤンティーヌを混ぜたものを塗っています。
センターは3層。上からヴァニラのブリュレ、マラスキーノで風味付けしたグリオットのジュレにグリオットのパートドフリュイ(小さく刻む)を混ぜたもの、その下にショコラサンファリーヌ。
全体はマンジャリのムース、ゼラチン不使用。牛乳に生クリームを加えたアングレーズをベースにしています。

ゼラチンを使っていないので口溶けが素直で軽やか。マンジャリはほんのりとした酸味のコクがあって美味しいですね。おっその刹那、グリオットの力強い酸味とマラスキーノの魅惑の香りが立ち上ってきます。ずっとフィヤンティーヌのチャリチャリ感が響いているし、ピスタチオのナッツっぽい香りもしているような。

うんうん、この流れ、バランス感覚、素晴らしいっ。自信を持つのも納得です。
これなら、もう一つコンテスト用に開発したという『ビアンカ』(アマレット使用)、お次はコレだ!



●『レモンクッキー』  9.2×6.7cm 厚み0.8cmほど。
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これはごくごくノーマルなクッキー生地に甘酸っぱい檸檬のアイシング。
サクッ、ホロッとしたクッキーの食感。
アイシングのシャリ感がいいですね。

安心できる日常のおやつ。紅茶とよく合いました。





●『レモンケーキ』  7.5×4.5cm 高さ4.3cm 65gほど。
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お店のスペシャリテ。
アイシングが泣いちゃっています。持ち帰るのに時間がかかったので、すみません。

ケーキ生地をまったく立てることなく、空気を入れない重たくしっとりとした仕上がりにしています。素材をロボクープで混ぜるだけ。
中に入れる檸檬のコンフィは時短製法で、丸ごとの檸檬を圧力鍋で15分ほど炊いて作った自家製。出来上がってから種を取り、砂糖で煮詰めて刻んで使っています。
表面はアプリコットジャムを塗って、檸檬の皮で風味付けしたアイシングという定番の仕上げ。

檸檬の香りや酸味を期待していると一瞬オヤッと違和感を感じます。卵の風味が濃厚なのです。
が、すぐに、生地自体の美味しさに集中してしまいます。
どっしりとした食感の食べ応えと、滑らかな口溶け、レモンコンフィの味わいの良さで、深い奥行きを感じます。



奥山シェフ、アイデアマンで気が多く、しかも即行動するタイプのようなので、一つひとつのアイテムの登場期間が短い可能性があり、しょっちゅう顔を出す必要がありそうですね。夏場にはパティスリーならではのグラニテも最低3種類は出そうな話でしたよ。
オープンしてまだ1年経っていないので、あれこれやりたいことが目白押しなのは、情熱が溢れている証拠。あまりに熱い“奥山魂”にエールを送りたくなってしまいます。



●『シトロン』700円  『ローマ』550円  『レモンクッキー』200円  『レモンケーキ』300円  (※内税)

●「パティスリー ミャーゴラ」
  京都市北区紫野上門前町105-2  TEL075-204-5337  定休日/日曜  営業時間/10:00~19:00

※ブログ「パイ日和」では、チョコレートのタルトをご紹介しています。