お菓子の店 YOSHIKAWA(ヨシカワ)(17)『焼き菓子3種/レモンスクウェア、コーヒーとナッツ、オートミールクッキー』

兵庫県芦屋市で知る人ぞ知るお店、「お菓子の店 YOSHIKAWA(ヨシカワ)」さん。「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」の師範、吉川和子さんのお店です。
以前にも何度もお伝えしてきたように、焼き菓子の美味しさは天下一品。吉川さんご自身は「少量しか作れないからたまたま回転率が良くて新鮮な間に食べていただけているというだけのことじゃないかしら」と謙虚におっしゃいます。
でも、その賞味期限の設定は業界トップクラスと言えるほどの短さ。これまた何度もお伝えしたことですが、当然、脱酸素剤などは使わず、湿気防止のシリカゲルが使われるのみ。リーフパイやサクリスタンのパイ類で3日。クッキー類でも4、5日。完全に乾燥焼したもので7日。どうです? 味の基準の厳しさがこれだけでも伝わってきますよね。
中元歳暮の季節になると必ずワープロ打ちしたDMのハガキが届くのが、いつものことながら嬉しい。私たちの膨大なお菓子ファイルには、おつきあいが始まった頃からのハガキがもう何十枚と保管されています。
そして、矢も楯もたまらず欲しくなってしまうという寸法。今回も猛暑のなか行ってきました。


●『レモンスクウェア』  3×3cm 厚み1cm 全重110gほど。
yoshikawa_lemoncookie2019.jpg
ヨシカワさんの檸檬のクッキー、大好物です。
よく似た趣向のクッキーに『パレ オ シトロン』というのがあります。そちらは薄焼きのパリッとした生地でレモンジャムを挟み、糖衣掛け。

こちらはちょっとびっくりするくらい、ふんわり、ホロホロとした食感の生地に酸味を抑えた糖衣を掛けています。生地の食感の強さに応じた酸味の強弱。見事なアンサンブル。
フワッと夢のように解ける生地、広がる卵の風味(柔らかくするためにバターではなく、卵黄を増やしているのでしょうか)、そこへとてもマイルドな檸檬の酸味と優しい甘さが多いかぶさってきて、心地よい檸檬の香気……ふぅ爽やか。夏のギフトセットに欠かせない人気商品になっているのも当然ですね。

几帳面に真四角切りそろえられた凛とした姿と、あえかなほどの繊弱な食感のギャップに、毎度のことながら、口に入れた瞬間に虜になってしまいます。うんうん、お見事です。


●『コーヒーとナッツ』  8×3cm 厚み1.2cm 全重80gほど。
yoshikawa_coffeenuts.jpg
ショーカードには“コーヒー風味のダクワーズ生地”と書かれていましたが…。
ん、ねっちり感、ふんわり感のない、軽くサクッと歯切れのいい食感。むしろビスキュイシャンパーニュに近い印象を抱きました。
ほとんど甘味が感じられず、コーヒーのほろ苦さが立っています。んん、ヘーゼルナッツパウダーも入っているのでしょうか。
そこへびっしりとアーモンドダイスを張り付け、粉糖でお化粧。

生地のサクサクッとした軽やかな食感を背景に、コーヒーの苦みとアーモンドダイスのコリコリとした食感と風味を味わうというシンプルな構成。お菓子らしい甘味は粉糖だけという潔さ。
この素っ気なさがいいのです! 
生地がサックサク、アーモンドもコッリコリ。徹底した個性を抽き出すことで、どこか饒舌なくらいに雄弁なお菓子になっているのです。素晴しい。


●『オートミールクッキー』  3.3×3.3cm 厚み1.1cm 全重100gほど。
yoshikawa_oatmeal.jpg
素朴な姿のドロップクッキー。
生地に胡桃とレーズン、オートミールを細かくしたものが入っています。ドロップしたところにフランボワーズのジャム。

どこか田舎臭いようなオートミールの長閑な香りがいいですね。
おやっ、どこかから香辛料のような。シナモンではないし、ナツメグ?
オートミールが急に華やいで感じられてきます。フランボワーズの甘酸っぱさが加わって俄然賑やかに。食べるほどに味わいが深く感じられるようになるのは胡桃やレーズンが隠し味として利いているからなのでしょう。

地味な見掛けのお菓子ですが秘めた実力者。人は話し方や振る舞いに育ちの品の良さが隠しようもなく表れるといいますが、お菓子の場合は、味わいの深さや後口の良さに出るかもしれません。
その点、このオートミールは氏より育ちをはっきり印象に残してくれました。


ところで。2019年2月に「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」さんから手紙が届きました。
簡単に要約すると、「元々フランス菓子はギルド制による無尽蔵の労働力と労働時間によって成り立っていたものだったのに、いまの日本の現状では若いパティスィエの減少と賃金の高騰により、赤字が膨らみ、一時は教室も含めて閉めることまで考えた。しかし、奇蹟のような味を残して欲しいとのお客様の声により、思いとどまり、教室の縮小、そのスペースへの店舗の吸収という規模の縮小という再出発を決めた。少人数、少ないお菓子で採算を取る。大幅な値上げもやむなし。真のフランス菓子の味わいを実現し続けるにはこれしかありませんでした」というものでした。
いま、品質を追究するケーキのお店はどこも人を雇えなくなっています。その象徴のような出来事。
大都会東京の大人気商業地・代官山で運営をするという難しさがあるうえに、教室運営の利益で補填してもまだ赤字が出るという採算性の悪さ。ケーキファンにとっても将来に暗澹たる想いを抱かせる内容でした。

さいわい吉川さんは従来と変わりなく続けてくれています。ただ、この7月から定休日がもう一日増え、火曜日もお休みとなりました。一人で作っておられるお店は体力のあるパン屋さんなどでもこれくらい休んでいますからね。それに休みといいつつ、仕込み作業をしていたりしますから、本当に好きでなければ続けて行けない職業ですね。つくづく。

●『レモンスクウェア(12個入)』700円  『コーヒーとナッツ(10本入)』670円  『オートミールクッキー(18個入)』690円 (※内税)
●「お菓子の店 YOSHIKAWA」
  兵庫県芦屋市大原町23-20  TEL0797-23-2370  定休日/日曜・月曜・火曜  営業時間/11:00~18:15

※2019年7月以降、BIGLOBEの強制リニューアルにより、アクセスカウンターの廃絶、その他もろもろが大幅変更となりました。ご容赦下さいませ。