ケークスカイウォーカー(2)『ル・モンブラン』『シーレ』

神戸、中山手通を県庁の方へ進み鯉川筋で上に行くと、COOPの少し向こうにあるのが「ケークスカイウォーカー」さん。地元の人たちが日常の買い物に訪れる地味な商店街、魚屋さんがあったり、おはぎ屋さんがあったりと味わいがある通りです。
そこで地に足を着けつつ、洒落たケーキを提供しようとしているのが田中隆亮シェフ。経験豊富でアイデアのポケットが数限りなくあるので、とても愉しみなお店です。


●『ル・モンブラン』  径6.5cm 高さ7cm歩と。
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ん? 変わった姿のモンブランですね。求肥?
SNSで繋がっているパリのお店のシェフが、モンブランに求肥を使っていたのを見て触発されたとか。返歌のようなものですね。

底生地としては珍しいパンドジェンヌ。その上に渋皮煮の栗を丸ごと1個、生クリームに埋め、求肥で包んで載せ、上にモンブランクリーム。サバトンのマロンペーストとマロンクリームを生クリームと牛乳で伸ばしたもの。トップにはマロングラッセをチラッと。
この一風変わった構成で“これぞモンブラン”という堂々たるネーミング。

いざ、一口。ほぉ!
求肥が切りにくくて、オヤッと思いますが、食べると疑問は嬉しい驚きに変わります。明らかに和菓子の食感で、フルーツ大福の栗版を食べているような錯覚を覚えつつ、パンドジェンヌとモンブランクリームの力で洋菓子に引き戻してしまいます。サバトンの力強いマロンの風味をバターを用いずにストレートに表現したことで、モンブランのイメージの定着に成功しているのです。

それを補助しているのがパンドジェンヌ。コーンスターチのみで、ローマジパンではなくアーモンドプードルを使用、砂糖も粉糖という配合で食感の軽さとアーモンドの香りを強調しています。距離的には離れているのにマロンの香りを抽き出すためのパレットとして、しっかり働いていますね。
求肥で一度違う世界に連れて行かれるだけに、連れ戻されたモンブランの世界が光り輝いて見えるという離れ業。ふーむ、やりますなぁ。


●『シーレ』  2.7×10cm 高さ5.3cmほど。
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ジェノワーズショコラに、シャンティとミルクチョコのクリームを挟み、それぞれのクリームにはフレッシュのバナナスライスを挟んでいます。トップは時々変わるようですが、この日は気まぐれにカスタードをわざとラフに塗った仕様。お酒は不使用(ほぼどのケーキにも使っていないとのこと)。

要するに、チョコバナナのケーキです。
でも菓名は Egon Schiele ウィーンの画家の名前から。そう、「チョコバナナだからといって、子供騙しのケーキじゃないよ」という宣言に受け取りましたが…、さてどうでしょう。

たしかに、完熟のバナナの馥郁とした香りを筆頭に、スポンジもクリームも深い味わいで満足感が高いのです。
特筆すべきなのは、前日に組立てて一晩落ち着かせていること。全体の馴染みが良くなり、一体感が格段に増しているのです。しかもスポンジには転化糖が使われているので、アンビベを打っていないにもかかわらず、しっとりふんわり。ベチャベチャなし。
優しい気分に満たされるような満足感、そして食べやすくて、大人をも虜にするケーキです。

skywalker_bananachocoup.jpgそうそう、本棚で眠っている「エゴン・シーレとウィーン世紀末」のカタログ(1986年奈良県立美術館)を取り出して、パラパラ捲ってみると、遠い日の思い出が蘇ってきました。
エゴン・シーレの激しさはありませんが、ウィーンのお菓子の食べやすい美味しさを映しているとは云えるでしょうか。


穏やかで話し好きの田中シェフですが、その実、かなり挑戦的ですね。ネーミングの趣味や、ケーキに秘められたアイデアの鋭さは格別。客層との調和を図りつつ、徐々に自分の世界を浸透させて行きそうです。期待が膨らみます。

●『ル・モンブラン』550円 『シーレ』530円 (※内税)
●「パティスリーケークスカイウォーカー」
  神戸市中央区中山手通4-11-7  TEL078-252-3708  定休日/不定休  営業時間/10:00~19:00

※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店のタルト2種をご紹介しています。

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