アグレアーブル(12)『キャラメルポワール』『ケック 京白みそ(京白味噌パウンド)』

京都、古くから家具の街として知られる夷川通ですが、近年、優れた飲食店が多いことでも知られるようになりました。その中でも特別な存在感を放っているのが「パティスリー アグレアーブル」さん。フランスで長年鍛えた技と恵まれた体力で、余裕の仕事ぶり。朝10時にすべての品出しを終えると、あとはお客様の応対に時間を空けています。パティスリーでは珍しく、大人の会話が成り立つお店です。
最近では和食やフレンチなど料理人との交流を深め、コラボの企画がたてつづけに待ち構えています。人と人との繋がりを大切にする、京都の町衆の生き方、やはり京男どしたなぁ加藤シェフ。


●『キャラメルポワール』  8.5×3.3cm 高さ5.2cmほど。
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キャラメルポワール、昔から大好きなケーキのひとつです。
底からビスキュイジョコンド、カラメルバタークリーム、ビスキュイキュイエール、洋梨のムース(パータボンブに洋梨のピュレと生クリーム)。トップはカラメルのグラッサージュ、そのうえからナパージュヌートル。ミルクチョコのプラック。

大定番の『シャルロット・オ・ポワール』であれば、一般には生地は軽いキュイエールだけで、バタークリームではなくバヴァロワが使われます。
そこをジョコンドやバタークリームという重い方向に置き換えているのです。それが大正解。

中に敷いたキュイエールには、ラ フランスをヴァニラシロップで炊いた煮汁をたっぷりアンビベ。これがムースとともにラ フランスの香りを振りまいて、濃厚な香り。大好きな洋梨だぁ~。思わずポワールウィリアムというリキュールを使っている? と思い込んだほど。
カラメルと洋梨の相性の良さは定番になっているくらいで、言わずもがな。ふわっと軽やかな洋梨のムースとトップのカラメルを楽しんだ刹那、時間差でバタークリームのとろーりと溶けていく感触の良さ(奥様のかをるさん曰く「フォアグラみたい」。ちなみにこのケーキは全アイテムの中からの彼女のファーストチョイス)は、夢見心地に誘ってくれます。ジョコンドのしっかりした食感もケーキの存在感を高めていますね。

カラメルを上品なラインで止めていて、洋梨の魅力を埋没させないバランスも決まっています。
口溶けといい、香りといい、味わいといい、まさにエレガント。うーんいいなぁ、お見事です。


●『ケック 京白みそ(京白味噌パウンド)』  11×5.5cm 高さ6cm 250gほど。
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えっ! ケックに白味噌? 
そういえば、引退した「Hスミノ」さんの大徳寺納豆を使った『塩サブレ』やさらに白味噌も使った『ガトースミノ』もあるわけで(もう幻ですがどちらも名品でした)、京都のパティスリーでは京都の和素材を使用したお菓子はそんなに珍しいことではありません。
が、しかし。フランス菓子一筋の加藤シェフが!?  シェフはフランスで習い覚えたことを伝える、そのことをご自分の使命のように考えていて、和の素材には見向きもしないという姿勢を貫いていたのです。実際、大流行りの抹茶を使ったお菓子はありませんしね。

では、経緯を簡単にお話ししましょう。
交流のある、「祇園いわさ起」さん。そこの食通の常連さんが「アグレアーブル」の常連にもなったそうです。その方が京都の老舗和食店のほとんどで使われているという、お味噌の老舗「山利商店」の女将さん。京料理には欠かせませんからね。
もともと加藤ご夫妻は美味しいもの大好きで、日頃から食べ歩きをしているそうです。ある日、和食屋さんで「白味噌美味しいなあ。醗酵食品やしチーズみたいに使えるかもしれん」とふと思いつき、「山利」さんの白味噌(国産大豆・米で無添加無着色)を取寄せて開発したのが、このケック。
agreable_misocut.jpgほかのケックと同様、フラワーバッター法でロボクープで撹拌。その時に大量の白味噌を加えます。最後に、丹波黒豆の甘煮をたっぷり。
チーズみたいになるかなという予測がピタリと的中し、口に含むと、白味噌の塩気と相まって、ブルーチーズが入っているのか(もちろんブルーの匂いはなし)と一瞬思うほど、チーズそっくり。うーん、この深いコク、お酒も利いてるのかな。
でもブルーほど癖はないなと落ち着いて味わい始めると、黒豆のねっとり感と優しい甘さがじんわりと伝わってきます。なんという相性の良さ。
食感も特筆もの。もちろん、ケックの食感ではあるのですが黒豆の感触も手伝って、極端に言えば、テリーヌのような重いねっとり&しっとり感と滑らかさがあるのです。

嗚呼、塩気が後を引き、病みつきになる豊潤な美味しさ。無理に合わせた感は微塵もなく、少しも和に引きずられることなく、仏菓子のケックとしての美味しさに昇華しています。
存分おフランスなのに、どこか日本人のDNAが喜ぶ(というのも、夜中にこのケックを嗅いだら味噌蔵の前を通っている気分になったのです)のでしょうか、もうすでに評判のようで感謝のお手紙をもらったり、ギフト向けに大量注文も入ったりと、こりゃ手に入れるのが難しくなるかも。新たな京銘菓に育ちそうです。
“いとおかし”な白味噌の贅沢ケック、名品です。く~~っ、ヤラレタ!!


仕事も暮らしも楽しくというスタンスが珍しいので、ちょいとご紹介。
◆12月8日(日)はお店をお休みにして、「祇園いわさ起」(1つ星)で、フレンチレストラン「リヴ・ゴォシュ」のソムリエールも参加してのコースのデザートを担当します。お土産もあるらしくて大サービスの企画。大人気で昼夜ともにすでに満席とか。
◆年が明けて1月18日(土)には「リヴ・ゴォシュ」において、フランスで知り合ったオーボエ奏者の佐藤亮一さん(ウィーンレジデンツオーケストラ首席オーボエ奏者)、奥様のフルート奏者由香さんを迎えて、音楽と料理とデザートのコラボという素敵な計画が控えています。シェフのデセールはこういう時にしか出会えませんから、早めにお問い合わせを。
ちなみに音楽の都ウィーンはいまだに市民生活の中に室内楽の愉しみが根付いていて、オーケストラの団員もそういう席で小さなアンサンブルやソロを演奏することに慣れているといいますから、親密な音楽が期待できそうです。

いずれも、洒落たイベントです。それを加藤夫妻はワクワクと心弾ませながら取り組んでいます。そう、それが一番。やっている本人が楽しくなくっちゃ、人を喜ばせることなんかできませんしね。幸せな場面に必ず寄り添っているお菓子を作るパティシエには、本来そういった精神が必要ではないでしょうか。
ともあれ、ますます深化している「アグレアーブル」の世界、ご注目あれ。

●『キャラメルポワール』500円 『ケック 京白みそ(京白味噌パウンド)』2200円 (※内税)
●「パティスリーアグレアーブル」
 京都市中京区夷川通高倉東入ル天守町75-7  TEL075-231-9005  定休日/不定休  営業時間/10:00~20:00

※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店の『りんごの焼タルト』をご紹介しています。

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