ロトス洋菓子店(18)『シュトーレン』

京都、阪急京都線四条烏丸駅から南へ5分ほどのところにある「ロトス洋菓子店」さん。
伝統菓子の今の時代に生きる“再創造”が魅力、と云っていいでしょう。一口に見直し、といっても上っ面を変えるようなものではありません。木村良一シェフの場合は1品1品原点に立ち返り、お菓子のもともとのストーリーをはじめ、材料や手順の要・不要までじっくり考え抜かれ、実際に試作を繰り返し、伝統の枠内で突き詰めた味を提供してくれるのです。それがまたいつも“絶品!”と心の中で快哉をあげるほどです。
さて今回は、クリスマスの伝統菓子シュトーレンに、どんな結論を見出したのでしょうか。数年前からロトスさんの食べたいよぉと願っていたのですが、如何せん12月に京都へはとんと行っておりません。やっとこさ手に入れたシュトーレン、歓びとともにいざ。


●『シュトーレン』(大)20.5×9.5cm 高さ4.8cm 520gほど。
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シンプルな LOTUS のロゴ入り箱から取り出し、リボンを解き透明の袋を開け、ラップを外して本体をそっと出すやいなや、ふわんと清らかな薫りが馥郁と立ち上がってきます。あぁ~うっとり。
焼き上げて間もないものだったので、フルーツを漬け込んだ洋酒の香りが表に出やすかったのかもしれません。同時に、香辛料も。静謐で落ち着いた大人の香りです。

シェフの説明によると、味についてはどちらかというとパン生地に近いものを作りたいという方向を定めています。そう、シュトーレンは醗酵菓子ですからね。ただしグルテンを出さずに、ホロッと崩れるような食感で、パンとはいえパウンドのような贅沢さをも兼ね備えたもの。
というのも、もともとはドイツのクリスマスシーズンに楽しむ宗教的意味合いのあるお菓子。
このところ、日本のパティシエたちのアレンジによってどんどん美味しくなって(それはそれで嬉しいのですが)、もっともっと状態。一体どこまでいくのやらと不安になるほどの、煌びやかで奢侈を極めたシュトーレンが増えてきています。ときには、もはや手法はシュトーレンだけど、ちょっと違うお菓子の体をしていることも。

ここで一石を投じる、とご本人が大上段に構えているのではさらさらなく、“ただ宗教菓子としての背景を忘れないで作りたい”という風に私たちは捉えました。

lotus_stollencut.jpgということで、フィリングは華美になりすぎないレベルに押さえ、ゴロゴロとしたナッツは無し。
果実は予め水分でふやかしたりせず(ノンオイルコーティングのものを選択)、カラカラに乾いたサルタナレーズンはウィスキーに、カレンズはラム酒に、そしてオレンジと河内晩柑のコンフィのコンカッセ(いずれも自家製)はコニャックに。1週間足らずの間、洋酒だけをしっかり吸い込んだものを絞らずに、そのまま使用。
香辛料はカルダモンをメインに、ナツメグとシナモン。生地の粉は強力薄力1:1。
仕上げのバターは水分が残ると劣化しやすいので、溶かしバターではなく澄ましにしてどっぷり漬けています。表面はほんの少しの粉糖と、ヴァニラシュガー(グラニュー糖細粒)を薄く纏わせています。

lotus_pac.jpgシェフ曰く「世間では日ごとに熟成するように言われていますが、2、3日は馴染むことはあっても、その後は傷んで行くと思います。実際そうやって日を置いて食べてみたら劣化していました。ですから、室温の高い部屋に置かずに、冷蔵庫で保管して早めに食べ切って欲しい」とのこと。
うーむ、お菓子の熟成と劣化の話し、興味深く聞きました。

やっぱりいつもの木村さんらしく、綿密に研究していますね。自分がイメージする着地点も明確。

lotus_stollencutxmas.jpgなるほど、最初に大人の香りだと感じたのはウィスキーがメインだったからか。香りの方はやはりカルダモンが主でしたね。品がいいですからね。ナツメグとシナモンはよく分からなかったけれど、ブレンドされて一瞬少し薬っぽく(貶しているわけではありません、念のため)感じます。それから、あぁ清らかで澄んだ香りだと気づくでしょう。

古漬けの熟成フルーツ入りのシュトーレンも好きですが、浅漬け(と称していいのでしょうか)のレーズンや柑橘ピールは、きれいな味わい。盛り沢山フルーツ&ゴロゴロナッツ三昧の豪奢さというよりも、生地の存在感をベースにしているのがよく分かります。たっぷりバターが入り、卵や牛乳にアーモンドプードルも加わるリッチな生地の美味しさが伝わってきます。しみじみと …… ふうぅ、しみじみと。

それに、やや乾いたようなホロッと崩れる脆い食感なのに、ナイフで切り分ける時に割れたりしない捏ね加減、焼き入れのレベルも絶妙。
華美に走りすぎず、重心が低くてとても落ち着いた品の良さ。宗教行事のお菓子としての精神性すら感じられるではないですか。なんとも素晴しい。
一日一日私たちの師走を伴走してくれる、シュトーレン。一切れ一切れ、大切にいただいています。お見事です。


lotus_stollenpac2.jpg普通はリボンだけで、清楚な姿ですが、よりギフト仕様にしたい時には箱入り(別途)にもできます。昨年は小サイズのものは120本売れたそうですから、すでにファンも多数ついていて大人気のようです。

贈った自分も幸せになるクリスマスシーズンです。にこにこ笑顔が待っていますよ、きっと。お言葉に従って早めに食べ切りましょう。

●『シュトーレン大』4200円(限定10本/500g) 7.7円/g(外税計算)   小2200円(限定120本/昨年実績)  (※内税)
●「ロトス洋菓子店」
 京都市下京区烏丸通松原上ル因幡堂町699  TEL075-353-2050  定休日/日曜・月曜、ほか不定休  営業時間/12:00~19:00