チクシヤ(1)焼菓子12種『フィナンシェ、プティマドレーヌ、ケークアングレ、ケークカラメル、シシリアン、ガレットブルトンヌ、ガトーブルトン、フロランタン、ドフィノワ、ヴィエノワ、ミロワール、サクリスタン』

福岡県那珂川市、新幹線の博多南線・博多南駅から5分ほどのところにあるパティスリー「フランス菓子 チクシヤ」さん。2012年オープンです。
博多から新幹線車庫のある博多南駅まで1駅で、乗車時間は8分。特急券200円、乗車券100円。なんと300円で新幹線、楽しいプチ旅です。
福岡の友人から以前に「美味しかよ」とお勧めされていたのです。福岡に帰省する際に寄れたら、と道程を調べていたら、クボタが「あっ、ここ雑誌で見たよ」とも教えてくれ、福岡県人なら「行かんといけんばい」と一人盛りあがる私。
意気揚々と最寄り駅から歩いて行くと、お洒落な店構えのパティスリーが。おやっ、シャッターが少し降りているって、えーっ臨時休業の貼り紙。そ、そんなぁ。事前にネットで調べたら営業日だったので、いそいそと訪問したのになあ。
ん? ドアが開いている様子なのでちょいと押してみると、ショーケースあたりは真っ暗。奥の厨房には灯が。おっ人がいるっ! 翌日の仕込みのために出勤していた今村智シェフ(1982年生まれ)でした。

歳を重ねた図々しさといいましょうか関西人の遠慮のなさといいましょうか、お店へ入って「えーっなにもないのですか?」と嘆くと、焼き菓子なら、ということで販売OKに。休日でレジを閉めているにも関わらず、です。それに「おつりやレシートとか出ないけど…」と気に掛けてくれます。ささっと、電気を灯してくれ、焼き菓子に掛けていた布を取り払ってくれました。
すると、じつに美味しそうな表情のフランス伝統菓子がずらーっと並んでいるではないですか。嗚呼、凄い品揃え。関西でもこれだけの種類を作っているところは少ないのになぁと、あれこれ、迷いながら、選ぶ愉しみも。終始ニマニマが止まりません。
小銭を揃えてきっちりお支払いしたかったのに、少し足らず、結局シェフの財布から30円のおつりを出してもらうことまでしてもらいました。
今村シェフ、無口な方でほとんど何も聞き出せず、こちらも長居はしてはいけないと思っていましたしね。おもに、東京の「メゾン ド プティフール」などで修業(自慢なんてことはさらさらなくて、ご本人は少しの期間ですとおっしゃいました)したことや、「チクシヤ」ってパティスリーとしては今どき変わった店名なので気になって聞くと、親戚が以前営業していた飲食のお店の名前をそのまま付けたことだけ分かりました。
でも、その誠実、朴訥な人柄に好感を抱いたのでした。もう、このお店、大好きになっていたのです。まずは、休日に嫌な顔もせずに応対してくれたことに、とても感謝致します。
と、お菓子を食べるまでのストーリーも、私たちにとってはとても大事なこと。美味しいは、もう約束されたもの、なのです。
(※お菓子の説明はまったく聞いていませんので、多々間違っているかもしれません。乞うご海容)


●『フィナンシェ』  8.3×4.2cm 厚み1.7cm 30gほど。
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financier すっとした姿。わぁ~焦がしバター(ブールノワゼット)の薫りが馥郁と香ります。アーモンドプードルに加えてノワゼット(ヘーゼル)のプードルも入っているのでより強調されています。
そうそう、私たちが勝手に名付けている“天使の輪っか”、きれいにできていますね。
蜂蜜入りでややしっとり、締まった食感で力強さを感じさせつつ、バターの力で気持ちよく解けていく感覚が、まさしくフィナンシェ! 


●『プティ・マドレーヌ・ド・コメルシー』  5.2×3.5cm 厚み2.3cm 40g(3個)ほど。
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petite madeleine de Commercy 貝殻型に焼いたバターケーキの一種。これにまつわる由来は数多くありますが、定説はなし。でも、ここコメルシーが発祥という話のようです。

ぷっくり丸っこい形が可愛いな(でべそは無し)。なかは、まっ黄色。檸檬色ですね。
比較的乾いた食感とレモンピールの薫りがオーソドックスでいいですね。ふっと品良く檸檬が香ります。普通はラヴェンダーの蜂蜜ですが、さぁ何を使っておられるのでしょう。
やや弾力のあるモゴッとした噛み応えの後に、サラサラと解ける食感も嬉しい。

なお、焦がしバターを使った普通サイズの『マドレーヌ』もありました(今村さんの師匠の師匠である「オーボンヴュータン」がたしか焦がしバターだったはず)が、どうやら私たちの趣味からするとこちらを選んで正解だったようです。ことマドレーヌに関しては、旧い奴、の私たちです。


●『ケークアングレ』  7×7.5cm 厚み1.3cm 50gほど。
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cake anglais アングレを名乗っているので、イギリスのパウンドケーキをルーツとするフルーツケーキ。ということは、シュガーバッター法で作っているのでしょうか。

フランス菓子を名乗るお店の多くが、ケークのバターがべとべとで濡れているのです。が、そうなっていないので、シュガーバッターかもしれませんね。
そっと口へ運ぶと、ラム酒が最初から最後までずっと香ります、とても芳醇です。
オレンジ、レーズン、チェリー、レモンピール、パイン、すもも。たっぷりの果物ですが、生地の美味しさもしっかり感じられるバランスの良さ。そして、果物が沈んでいないのがいいな。適度に生地に空気を含ませているのですね。
贅沢感を感じさせ、かといって甘すぎず、くどさがなくて食べやすくあと引く味わいです。ほほぉお見事。


●『ケークカラメル』  7×7.3cm 厚み1.3cm 45gほど。
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cake caramel こちらは、パウンドの生地によく焦がしたカラメルを混ぜた、シンプルなケーク。
ふっくらとした優しい食感から、カラメルの濃厚な風味が漂うところに妙味がありますね。


●『シシリアン』  径3.8cm 厚み1.3cm 40g(4個)ほど。
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sicilien シチリア島の、という意味。ピスタチオ風味なので、代表的な産地名をつけておられるのでしょう(ちなみにピスタチオはイラン産だそうです)。

小さなサブレ。周りに、グラニューの貼り付け。ですから、ディアマン。
サクッほろほろっと脆く崩れて行くと同時に、ピスタチオの風味がフワッと広がります。焼菓子は薫りが飛びやすいので、これだけ香ってくれると嬉しいですね。上品なおやつです。


●『ガレットブルトンヌ』  径5.8cm 厚み1.5cm 25gほど。
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galette bretonne ブルターニュ地方に伝わる、丸く平たい焼き菓子。

美味しそうな焼き色。ほおーっ、断面は薄黄色。
原材料名の最後に、コーヒーとあったので、表面の色づけ用(+塗り卵)なのか、一風変わったアレンジなのか分からなかったので聞くと、順当に表面用でした。
卵よりもバターの薫りが前面に出ていて、ラム酒が合わさった薫りがなんとも魅力的。より深みを感じますね。
ザクザクほろっ、崩れる食感がとても気持ちよく、噛むほどに薫りが広がる感覚がもぅたまりません。嗚呼、美味しいっ。お見事!


●『ガトーブルトン』  辺7.5cm 厚み3cm 40gほど。
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gateau breton ガトーブルトン。これまた、ブルターニュ地方を代表する銘菓。厚焼きのクッキーに似た、大きな円形のお菓子。
意外と作っている方、少ないんですよね。たしか「ラピエールブランシュ」で出会ったぐらいです。こんなに美味しいのに、何故?

断面まっ黄色。ラム酒が前面に押し出されていて、卵の風味以上に強く感じます。大人の風味。
それなのに、あーそれなのに。優しいお菓子のイメージがまったく壊れていません。こちらも塗り卵+コーヒーのようで、表面は芳ばしく、サクッほろっとした食感も繊細。うーむ、これまたお見事。


●『フロランタン』  7.5×4.5cm 厚み1.2cm 30gほど。
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florentin イタリアを発祥とするアーモンド風味のお菓子。

ガリッザクっとしたカラメルの再結晶化が上手くいっている証拠の、歯切れのいい食感。
と、同時に、溢れ出るアーモンドの薫り。ワォ最高!
よく焼き込んだサックサックッのクッキー生地とカラメルの溶け合う旨味。ヴァニラの甘い匂いも邪魔しないで、甘やかな気持ちをくすぐります。素晴しい、お見事です。


●『ドフィノワ』  5.4×5cm 厚み2cm 50gほど。
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dauphinois フランスのアルプス山脈とローヌ渓谷の間に広がる「ドーフィネ地方の」という意味です。この地方は胡桃の木が多く、その実を使ったお菓子によくこの名前がつけられていますね。
スイスの胡桃の産地エンガティーン地方のエンガティナーに相当する、フランス菓子です。

ソフトなミルク風味のクッキー生地と胡桃(皮付きですが渋みまったくなし)の風味、生クリームの利いたカラメルの優しい美味しさと深いコク。ミルクっぽさが、子供の頃へ戻りたくなる感じ。ふぅぅ、なんてぇ美味しいんだっ! ほろほろとろーりと柔らかな食感の中に、胡桃の軽やかなシャクシャクとした食感も、いいアクセント。
すべてが優しさを基調にピタリッと極っていて、うんうん、大好物の花丸!


●『ヴィエノワ』  径4.5cm 厚み1.1cm 35g(3個)ほど。
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viennois ウィーンの、という意味。可憐なお花のクッキーですね。

シナモン風味のクッキー生地をフランボワーズペパンのジャムで2枚張り合わせています。
生地が違いますが、シナモンとフランボワーズの組合せがリンツァートルテ(Linz地方の銘菓)を思わせます。違いがあるので、オーストリア国内で地名を東へ移動させたのでしょうか。なんてね。
定番の組合せ、文句無しに美味しい。生地のサクサクッ感とフランボワーズの活き活きとた甘酸っぱさ、そして馥郁と香るシナモン。いいですねぇ、これも。


●『ミロワール』  5.5×4.3cm 厚み1.1cm 30g(3個)ほど。
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miroir 鏡の意味なので、表面に光沢のあるお菓子につけられます。

楕円形で、周囲にアーモンドダイスを散らして。真ん中のアプリコットジャムは、お店の瓶入で販売しているものとは色が違う(もっと濃い)ので、別の優しいものを使っているみたいです。その上にグラスアローでしょうか、鏡らしい艶を。
生地はメレンゲにタンプータンを混ぜたマカロンのようなもの。ややネチッとした食感です。
その生地と、周りのアーモンドダイスが強調されているので、アプリコットがやや大人しく感じてしまいました。酸っぱくてもう少し量があれば、大お気に入りになったと思います。もちろん、この控えめもアリですね。


●『サクリスタン』  8.7×2.3cm 厚み2cm 30g(3本)ほど。
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sacristain ブログ「パイ日和」でご紹介すべきところですが、1品だけですので、とりあえずこちらで。

ねじねじのパイ生地。アーモンドダイスをたっぷり張り付けているので、とっても芳ばしい。さらに、生地の香ばしさが上回ります。甘いパイのイメージがありましたが、甘くはありません。
生地がよく浮いていて食感が軽く、サクッサクと心地いいし、色黒の見掛けに反して、優しい味わい。素晴しいですね。


フランス伝統菓子の教科書的品揃えです。おもな修業先の「メゾン ド プティフール」の西野シェフは、「オーボンヴュータン」ご出身で渡仏して修業もされていますので、フランス菓子がお得意なのもむべなるかなですね。
味わいの印象は、しっかり素材の美味しさは伝わるのに、これでもかといった強さではなく、どこか優しさを感じる美味しさ。また、食べたいなぁと心惹かれる美味しさでした。
とても高い水準で安定している上に、しかもお安い(都会とは比較にならないほどの地価とはいえ)。こんなに買ったのに、税込2千円台なんて、ひゃっほぅ! あまりに悪いなと思って、目の前にあった『アプリコットのジャム』も追加してしまいました。それで、やっと3千円越え。
ううむ、ヴィエノワズリーや生ケーキも俄然気になるよ。遠くからでも、ぜひ!

●『フィナンシェ』200円  『プティマドレーヌドコメルシー3個入』230円  『ケークアングレ』230円  『ケークカラメル』200円  『シシリアン4個入』280円  『ガレットブルトンヌ』170円  『ガトーブルトン』180円  『フロランタン』200円  『ドフィノワ』220円  『ヴィエノワ3個入』260円  『ミロワール3個入』220円  『サクリスタン3本入』240円  (※内税)
●「パティスリーフランセーズ チクシヤ」
 福岡県那珂川市中原4-42-2  TEL092-953-2322  定休日/水曜、第3火曜  営業時間/10:00~19:00