新店登場! パティスリーココロ(1)『京都伊根の卵と岡山の蜂蜜のプリン』『ヴァニレキプフェルン』
兵庫県西宮市、式内神社である広田神社の東。御手洗川沿いに進んで細長い三角地帯の手前で左、山側に折れて100mもいかないところにあるのが「patisserie COCORO 」さん。2019年9月オープン。野口育恵さんとご主人智邦さんのお店です。
すぐれた農園の産物の真価を味わってもらうためのお菓子作りというのが、シェフ育恵さんの考え方。私こそはと肩肘張ったところのない、美味しさのために献身的に働いている純粋さが伝わってくる飾らない人柄。
ご主人のサポートを得て、オープン半年ばかりですでに人気店になりつつあります。
●『京都伊根の卵と岡山の蜂蜜のプリン』 底径4.8cm 器込み210gほど。

ひゃあ、長い名前。お二人の熱い気持ちが込められているのですね。重要な一品ということでしょう。
シブーストの話しを聞いていると、智邦さんが「卵が凄いんです」とおっしゃったので、じゃあ卵をストレートに感じやすいプリンも、ということになりました。瓶入り、というのはすこしもったいない感じがしますが、それだけ大事なプリンなのが分かります。
では、卵の話から。京都、伊根町の山間部にある「三野養鶏所」のもの。のどかで自然豊かなところですね。
いい卵は平飼いと決めつけていましたが、三野さんによると平飼いにすると鶏の個体の強弱の序列ができて(人間と一緒なのね、というか人間が動物と一緒なのか…)、弱い鶏は満足にエサが食べられずストレスを溜めて卵をあまり産まなくなるのだそうです。そういう弱い鶏はケージに入れて、十分にエサを与える方がいいのだとか。
もちろん、エサの選択が重要。こちらでは最初から混合されているような飼料は与えず、ポストハーベストフリーのトウモロコシ、酸化防止剤を使っていない新鮮な魚粉、伊根地方の米を与えるようにしているとのこと。そして何万羽も飼うのが普通のところを2000羽に絞って、1羽1羽人力で世話をすることで健康な鶏に育ち、いい卵を産んでくれるのだということです。
このプリンにはもう一つ、カラメルに蜂蜜が使われています。それは岡山・津山の「美甘(みかん)養蜂園」の山蜜。百花蜜とは別のようなので、山の中で人知れず咲いている花の蜜ということなのでしょうか。
可愛い瓶入り。さて、一口ずつ掬っていただきましょう。
ほぅ、厳選した素材だけを使った、シンプルイズベストのお菓子。卵の風味を味わうためにとろとろにはせずに、最近のプリンとしては比較的堅めで濃密な食感。甘味も抑えています。蜂蜜のカラメルもそれほど焦がさず、蜂蜜の香りで甘さを感じさせるといった使い方。
プリン単体で味わった後にカラメルに到達するので、卵の風味をしっかり楽しめますね。余韻に、蜂蜜の香りが穏やかに広がります。
●『ヴァニレキプフェルン』 4.8×1.8cm 厚み0.9cm 40g(5個)ほど。

おぉ大好物で、憧れの焼き菓子。
というのも今を去ること20年近く前。茨木市に「ヴィーナーローゼ」という名店がありました。辻製菓のフランス校で教授を務めた横山牧子さんのお店。「カフェバッハ」から仕入れた豆をハンドピックして焙煎し、さらにハンドピックした豆を碾いた珈琲は雑味がなく清らか。厳選したウィーン菓子との相性が絶妙でした。
そのウィーン菓子の中でももっとも印象に残ったのが、ヴァニレキップフェルン。白い焼き上がりで繊細微妙なホロホロとした食感と、ふんだんに使ったヴァニラの香りが食感とも相まって、夢見るお菓子となり得ていたのです。横山先生もこのヴァニレキップフェルンもすでにレジェンドとなってしまいました。
その後「ヴィーナーローゼ」を玉造に移転して引き継いだ江崎先生も作っていましたが、パンの先生らしくしっかり焼き込んでやや茶色く色付けたもの。力強さのある味わいも好きだったのですが、もう横山さんのが食べられないと思うとますます美化していくのでしょうか、人ってわがままですね。
ということで、私たちにはつねに永遠のレジェンドが立ちふさがっています。当時と比べてヴァニラが高騰してしまっているという悪条件もあります。なにしろ、食べ終わったヴァニレキップフェルンの袋までもがいい香りに満たされていて、当時1週間匂いを嗅ぎつづけていたくらいですからね。その話しを横山さんに言うと、たしかとても喜んでくださったことを思い出したりして。嗚呼、遠のいた伝説を慕うばかり。
そして今回、江崎先生のお弟子さんである大林先生に習ったという野口さんの“白いヴァニレキプフェルン”。期待が高まろうというものです。
ほのかに色が付いてしまっているところもあります。横山先生も秒単位のコントロールと言っていましたからね。難しいのです。
ほろほろの食感はすこぶるいいですね(ご主人の智邦さんも袋に詰めるときに、壊れてしまうというほどの繊細さ)。香り、醗酵バターの香りが豊かに香り、追いかけるようにヴァニラが香ります。黍砂糖を使っているので甘味も円やかで膨らみがあります。うんうん、素晴しい!
育恵シェフは横山版を目指して作っておられるわけではないし、彼女ならではの特別の美味しさが作り上げられています。ふうぅぅ、いいですねぇ。
想い出がない方は、きっと心奪われる美味しさですから、見つけたら、ぜひ! 本当です、お約束します。
●『京都伊根の卵と岡山の蜂蜜のプリン』380円 『ヴァニレキプフェルン(5個入)』350円 (※外税)
●小さな菓子店「patisserie COCORO 」
兵庫県西宮市広田町12-8 TEL0798-27-5970 定休日/月休、不定 営業時間/10:00~19:00
※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店の『シブースト』『柑橘タルト』『塩キャラメルナッツタルト』をご紹介しています。
すぐれた農園の産物の真価を味わってもらうためのお菓子作りというのが、シェフ育恵さんの考え方。私こそはと肩肘張ったところのない、美味しさのために献身的に働いている純粋さが伝わってくる飾らない人柄。
ご主人のサポートを得て、オープン半年ばかりですでに人気店になりつつあります。
●『京都伊根の卵と岡山の蜂蜜のプリン』 底径4.8cm 器込み210gほど。

ひゃあ、長い名前。お二人の熱い気持ちが込められているのですね。重要な一品ということでしょう。
シブーストの話しを聞いていると、智邦さんが「卵が凄いんです」とおっしゃったので、じゃあ卵をストレートに感じやすいプリンも、ということになりました。瓶入り、というのはすこしもったいない感じがしますが、それだけ大事なプリンなのが分かります。
では、卵の話から。京都、伊根町の山間部にある「三野養鶏所」のもの。のどかで自然豊かなところですね。
いい卵は平飼いと決めつけていましたが、三野さんによると平飼いにすると鶏の個体の強弱の序列ができて(人間と一緒なのね、というか人間が動物と一緒なのか…)、弱い鶏は満足にエサが食べられずストレスを溜めて卵をあまり産まなくなるのだそうです。そういう弱い鶏はケージに入れて、十分にエサを与える方がいいのだとか。
もちろん、エサの選択が重要。こちらでは最初から混合されているような飼料は与えず、ポストハーベストフリーのトウモロコシ、酸化防止剤を使っていない新鮮な魚粉、伊根地方の米を与えるようにしているとのこと。そして何万羽も飼うのが普通のところを2000羽に絞って、1羽1羽人力で世話をすることで健康な鶏に育ち、いい卵を産んでくれるのだということです。
このプリンにはもう一つ、カラメルに蜂蜜が使われています。それは岡山・津山の「美甘(みかん)養蜂園」の山蜜。百花蜜とは別のようなので、山の中で人知れず咲いている花の蜜ということなのでしょうか。
可愛い瓶入り。さて、一口ずつ掬っていただきましょう。
ほぅ、厳選した素材だけを使った、シンプルイズベストのお菓子。卵の風味を味わうためにとろとろにはせずに、最近のプリンとしては比較的堅めで濃密な食感。甘味も抑えています。蜂蜜のカラメルもそれほど焦がさず、蜂蜜の香りで甘さを感じさせるといった使い方。
プリン単体で味わった後にカラメルに到達するので、卵の風味をしっかり楽しめますね。余韻に、蜂蜜の香りが穏やかに広がります。
●『ヴァニレキプフェルン』 4.8×1.8cm 厚み0.9cm 40g(5個)ほど。

おぉ大好物で、憧れの焼き菓子。
というのも今を去ること20年近く前。茨木市に「ヴィーナーローゼ」という名店がありました。辻製菓のフランス校で教授を務めた横山牧子さんのお店。「カフェバッハ」から仕入れた豆をハンドピックして焙煎し、さらにハンドピックした豆を碾いた珈琲は雑味がなく清らか。厳選したウィーン菓子との相性が絶妙でした。
そのウィーン菓子の中でももっとも印象に残ったのが、ヴァニレキップフェルン。白い焼き上がりで繊細微妙なホロホロとした食感と、ふんだんに使ったヴァニラの香りが食感とも相まって、夢見るお菓子となり得ていたのです。横山先生もこのヴァニレキップフェルンもすでにレジェンドとなってしまいました。
その後「ヴィーナーローゼ」を玉造に移転して引き継いだ江崎先生も作っていましたが、パンの先生らしくしっかり焼き込んでやや茶色く色付けたもの。力強さのある味わいも好きだったのですが、もう横山さんのが食べられないと思うとますます美化していくのでしょうか、人ってわがままですね。
ということで、私たちにはつねに永遠のレジェンドが立ちふさがっています。当時と比べてヴァニラが高騰してしまっているという悪条件もあります。なにしろ、食べ終わったヴァニレキップフェルンの袋までもがいい香りに満たされていて、当時1週間匂いを嗅ぎつづけていたくらいですからね。その話しを横山さんに言うと、たしかとても喜んでくださったことを思い出したりして。嗚呼、遠のいた伝説を慕うばかり。
そして今回、江崎先生のお弟子さんである大林先生に習ったという野口さんの“白いヴァニレキプフェルン”。期待が高まろうというものです。
ほのかに色が付いてしまっているところもあります。横山先生も秒単位のコントロールと言っていましたからね。難しいのです。
ほろほろの食感はすこぶるいいですね(ご主人の智邦さんも袋に詰めるときに、壊れてしまうというほどの繊細さ)。香り、醗酵バターの香りが豊かに香り、追いかけるようにヴァニラが香ります。黍砂糖を使っているので甘味も円やかで膨らみがあります。うんうん、素晴しい!
育恵シェフは横山版を目指して作っておられるわけではないし、彼女ならではの特別の美味しさが作り上げられています。ふうぅぅ、いいですねぇ。
想い出がない方は、きっと心奪われる美味しさですから、見つけたら、ぜひ! 本当です、お約束します。
●『京都伊根の卵と岡山の蜂蜜のプリン』380円 『ヴァニレキプフェルン(5個入)』350円 (※外税)
●小さな菓子店「patisserie COCORO 」
兵庫県西宮市広田町12-8 TEL0798-27-5970 定休日/月休、不定 営業時間/10:00~19:00
※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店の『シブースト』『柑橘タルト』『塩キャラメルナッツタルト』をご紹介しています。