シュターン(10)『バイリッシャークレーム』『ショコラシュピッツ』『シンプルロール』

兵庫県芦屋市、阪急神戸線・芦屋川駅から東へ10分ほどのところにあるのが「コンディトライ シュターン」さん。マイスターの谷脇正史さんが一人で作っています。
品数を絞ってマイペースを貫かれていますが、ドイツ菓子の巨匠(といってもご本人は、所謂イメージしがちな巨匠風ではないところがこれまた魅力!)。どれをとっても最高級の味わい、そしてどこかほっとする優しさ。満足間違いなしのお店です。
しかも、職人は構成や材料、技術の意味合いをしっかり認識しているべきだけど、食べ手は分析的になるのではなく、気楽に美味しいなぁと言っているほうが幸せなのでは、というスタンスのようです。その緩さがまたなんとも心地いいのですねえ。


●『バイリッシャークレーム』 器口内径4.3cm 深さ6.7cm 110gほど。
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bayrischer バイエルン地方の、という意味です。バイエルン地方のグラスデザート。
谷脇さんがドイツでよく見掛けたクリームだけのお菓子に、季節の果実を載せて少し華やかにしてくれています。この時季はブルーベリー(季節によって異なる)のフレッシュ、アガー(海藻由来のゼリー)で固めています。

肝心のクリームですが、生クリーム、牛乳、卵、砂糖、ヴァニラ(多分)、アイアーリカー(卵のリキュール)で作られていて、とてもなめらか。まさにクリーム。とろとろプリンといってもいいのですが、クリーム感の強さが際立っています。アイアーリカーの風味が利いて、ふくよかな味わいです。
ドイツのお菓子ではアルコールはほぼ飛んでいるのですが、風味付けに必ずといっていいほどお酒が使われているそうです。シンプルなお菓子ですが、とってもうっとりさせられたのでした。


●『ショコラシュピッツ』  幅7.3cm 高さ6.5cm 厚み3cmほど。
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わっ、大好きなチョコケーキ。久々。
ココア生地とガナッシュを交互に重ねた、分かりやすい構造です。
生地にはグランマニエの入ったシロップをアンビベしているので、口溶けが速く、たっぶり使われたガナッシュとの一体感が素晴しい。そして、生地にはアーモンドの細かなダイスが加えられていて、スルッと溶ける滑らかな食感の中にかすかな刺激を与えています。

谷脇さんはチョコレートのブランドを語りたがりません。「お菓子はバランスですから」とのこと。たしかに、高級ブランドを使っていてもあまり香らないお店もありますからね。
口に入れた瞬間にチョコレートの香にふわっと包まれ、全身チョコまみれのような、チョコにどっぷり浸る感覚に…… ふぅぅ、お見事!


●『シンプルロール』  幅7.2cm 高さ6.6cm 厚み3cmほど。
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どうです? この見事な巻きの美しさ! くるくるくる~。
以前にも書きましたが、ドイツ菓子なのにロールケーキ? と聞かれると「だってドイツで普通に作っていますから」ということで、ロールの技術もドイツで身に付けたものなのです。

ここでもバランスの妙味が発揮されています。クリームはやや少なめに感じられる方もおられるかもしれませんが、食べてみるとまさにピッタリの量。
というのも、生地自体の口溶けがいいからです。生地の解れもいいのですが、泡がしっかりしたフワッと感があるだけでなくシュワシュワとした潰れやすさも同時に実現。瞬時に溶けてくれる生地だから過剰にクリームを使う必要がないのですね。
生地の味わいを満喫する軽やかなロールケーキ。まさに名人芸です。


谷脇さんとのちょっとしたおしゃべりも楽しいし、大好きなお菓子ばかりなのに、忙しさにかまけて、ここのところ年1回ペース。でもご無沙汰していると、どうしても渇を覚えて行きたくなります。
穏やかでいて印象深いお菓子を作らせたら谷脇さんの右に出る人を捜すのは難しいのではないでしょうか。

●『バイリッシャークレーム』490円  『ショコラシュピッツ』500円  『シンプルロール』400円  (※内税)
●「コンディトライ シュターン」
 兵庫県芦屋市東山町1-10  TEL0797-34-5673  定休日/火曜・水曜  営業時間/10:30~19:30