フリアンド(3)『パン オ ルヴァン ビオロジック』『フリアンドのクリームパン』

兵庫県西宮市、阪急神戸線・夙川駅から大阪方面に5分ほどの高架下、北面してあるのが「パティスリー ブーランジュリー フリアンド」。老舗の地域一番店であると同時に、学校給食を通じて、西宮の味覚と栄養を担ってもいる。3代目の谷口佳典シェフは「自分が育った頃の給食はおいしくなかったので、自店から届けるからには誰もが美味しいと言えるものを貫きたい」と真剣な表情で話す。安心安全のためにハム・ソーセージ類以外は無添加。醗酵種も天然酵母にしぼっている。
日常の商品を大切に守り育てつつ、シェフは今、この秋にフランスで開催されるモンディアル デュ パンの日本代表として、日々研鑽中。歴史と社会的な責任を負いつつ、さらに挑戦しつづける、それがこの店の腰の据わった姿勢だ。(※書き手クボタ)

●『パン オ ルヴァン ビオロジック』 辺13cm 高さ10.8cm 360gほど。
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前回のモンディアル デュ パンに出品したパン。普通のシェフであれば、まず最初にお勧めのパンとするところだろう。
しかし、谷口シェフはすべてのパンがそれぞれに価値があって優劣はなく、賞を取っていても1アイテムに過ぎないと言う。シェフに就任して、全アイテムを見直しすべてレシピを変更したそうだが、先代、先々代から受け継がれてきた商品が多く、それぞれの歴史、ファンとなっている顧客の顔が見える。老舗ならではの商品への愛情の注ぎ方というものがあるようだ。

1アイテム、とクールに語られたこのパンの出来上がりの素晴しさに触れれば、1品1品への思い入れの深さが分かろうと言うものだ。
ライ麦から起こしたサワー種を元にしたルヴァンデュールにフランス産の灰分の多いタイプ80(有機栽培)を加えて本捏ねの種とし、フランスパン専用粉のリスドォルを用いている。
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1kgを超える大きなサイズで焼いていることがこのパンを美味しくしている。おそらく最初かなりの高温で表面を焼き切って固い殻を作り上げて水分を閉じ込め、その後温度を下げて中をしっとりと焼き上げているのだろう。長時間焼くためにクラストは5mmほどの厚さがあるが、ザクザクと景気よく噛み砕ける。最初に一気に水分を飛ばされているので脆い層が出来上がっている。メイラード反応からカラメリゼに移行するあたりで止められていて、ほろ苦く味わいに深い奥行きが感じられる。
クラムはしっとりもっちりとして甘味があり、タイプ80ならではの豊かな風味が満喫できる(パン オ ルヴァンは醗酵種が粉と同僚程度入るので)。ほんのりとした柔らかな酸味が自家製ルヴァン種の持ち味なのだろう。

酒どころ西宮・夙川という土地柄のせいか、日本酒麹に含まれる乳酸菌が多く含まれているという。名物になっている酒種餡パンを作っているのでお店の空気中に住み着いているのだろうね。
その柔らかな味わいとクラストの深い味わいがベストマッチ。素晴しい、お見事。


●『フリアンドのクリームパン』 径10.5~11.8cm 厚み2.5cm 110gほど。
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こちらは売上のトップ3に入る、大人気の名品。形を保てないほどにやわやわの生地。そこへたっぷりのカスタード。下手な持ち方をするとクリームがビュッと飛び出しかねない。トップにアーモンドスライスちらちら。
カスタードは卵の風味とミルクの風味が競り合っているような出来。粉もしっかり入ってポッテリとした口当たり。甘味は控えめで、1個食べてちょうど満足するように出来ているようだ。
穏やかで優しい味なのに、どこか後を引く美味しさがあって一気に食べ終わってしまう。ほのぼのと美味しい。

こちらは老舗だけに、これでもかとお客に迫る勢いのパンを作る必要がない。お客様が長く慈しみたくなる飽きのこない味わいが目指されているのではないだろうか。日常の糧としての位置付けも明確だ。
積み重ねられてきた時間の重さ、昨日今日出来た店とは構えからして違うのがわかるね。

●『パン オ ルヴァン ビオロジック1/4サイズ360g』396円(重量価格1.1円/g)  『フリアンドのクリームパン』160円  (※外税)
●「パティスリー ブーランジュリー フリアンド」本店
 兵庫県西宮市若松町3-1  TEL0798-23-0101  定休日/第2・4火曜、毎水曜  営業時間/7:00~19:00
※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店の『ミートパイ』『ショーソンオポム』『クロワッサングラッセ』をご紹介しています。