W.ボレロ(17)『焼き菓子5種/マドレーヌ、マドレーヌ・シトロン、フィナンシェ・オ・マロン、ケーク・シトロン、トゥソン・デ・マロン』

滋賀県守山市、週末や休日には駐車場に他府県ナンバーの車が押し寄せる大人気店。それもそのはず、ともかく何をとっても素晴しく美味しいお店なのです。
渡邊雄二シェフは東京にはお店は出さないという方針を定めています。というのも、売れ過ぎて品質が落ちるから。それが証拠に毎年、伊勢丹本店にイベント出店していて、焼き菓子を求めて並ぶお客様に整理券を発行しなければならなくなるほどの人気だそうです。たしかに一度覚えると病み付きになる美味しさですからね。
先頃、オーブンの壁に耐火煉瓦を積んで石窯仕様に変更して、より一層美味しくなったという焼き菓子の一端をご紹介しましょう。
なお、渡邊シェフのことですから、私たちの想像以上に技やら素材のこだわりがぎっしり詰められているのしょうけど、ヒアリングしておりませんので、簡単に第一印象のみで参ります。

●『マドレーヌ』  7.7×4.9cm 高さ3.3cm 30gほど。
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たしか9年前に一度食べているのですが、さすがに明確な印象は失われているので、比較は出来ませんね。
お約束のでべそ、あり。卵の風味が強く、そこに品のいい檸檬の風味が寄り添っています。檸檬の果皮が入っているのですね。
ふっくらと柔らかな感触。よく焼けてさっぱりとしているのですが、優しいしっとり感も含んでいます。このしっとり感が石窯効果でしょうか。直火を当てないので通常の窯より高温で焼くことが可能になり、煉瓦に貯め込んだ大量の熱で一気に焼き上がるのです。わずか8分ほどだそうです。
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レモンイエローのきれいな断面といい、生地の美味しさといい、優しいトーンで統一されています。やはり紅茶との組み合わせが、花マル。
ボレロさんの焼き菓子のなかでは、ほっとする穏やかさ。
こういう世界もいいな。なんたって、マドレーヌはアグレッシヴというより、可憐であってほしいのです。

●『マドレーヌ シトロン』  7.5×5.2cm 高さ3cm 40gほど。
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同じマドレーヌの生地に、檸檬味のアイシング(袋から出す時に一部アイシングが剥げてしまい、残念。とても奇麗だっただけに悔やまれます、深謝)。
わっ、一口入れると、まずは舌に檸檬の酸味が、キュン! すっぺ~。
優しい味わいの生地ですが卵の風味は濃厚なので、強烈な檸檬の酸味がピッタリの相性。これだけの酸味は濃縮果汁なのでしょうか。こちらは一転、まどろみから目の覚めるような酸味にハっとさせられます。
さらに、アイシングの蕩ける食感も加わり、より一層口溶けのいいお菓子になっています。

●『フィナンシェ オ マロン』  6.5×4.3cm 高さ2cm 35gほど。
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大好きなフィナンシェに、これまた大好きなマロン、という黄金の組み合わせ。やったー!
フィナンシェ生地にマロンペーストが加わり、マロングラッセがゴロゴロと。
袋を開けた途端、まずは杏仁香が。こちらはいつもアーモンドが芳醇に香るのですよね。そして、フィナンシェ特有の焦がしバターの香りに加えて、マロングラッセのラム酒の香りも濃厚に漂っています。
プレーンなフィナンシェがすでに濃厚なお菓子なのに、さらに贅沢にマロン風味とラム酒が加わって、強力布陣! これでもか的仕様の、なんとも賑やかな風味のパレード状態。美味しすぎるほどのお菓子です。

●『ケーク シトロン』  7.2×4.1cm 高さ2.8cm 30gほど。
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涙型というのでしょうか、片側先細りの楕円。檸檬の形とは少し異なるレモンケーキ(いや、檸檬の見立てかな)。
檸檬果汁が加わったケーク生地はほんのり酸味を帯びた優しい味わい。バターの風味が豊かに広がるのですが、ベタっとした重さがないので比較的軽やかに感じます。口溶けもよく、なめらかだと思っていたら、とろっと溶ける感じが、なんとも心地いい。コーンスターチのなせる業、なのかな。
檸檬の香りが穏やかで落ち着いた印象。納まりがいいということは、ベストバランスで作られているということですね。

●『トゥソン デ マロン』  5.8×3.7cm 高さ3.1cm 40gほど。
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むむ、トゥソン デ マロンとは、聞き慣れない菓名。どうやら、すべてマロンという意味だそうです
そう、その名の通り、マロングラッセが丸々一粒どーんと入っていて、周囲をアーモンドプードル(ん、ヘーゼルも?)が入った風味の強い生地で薄く覆っています。こんなにちっこいのに、重く、存在感あり。確かに“すべて”と云いたくなる構成です。
マロングラッセに使われているラム酒が強い香りとアルコール感を放っているのが大きな特徴。といっても、アルコールのジーン感や苦さはなく、素直に堪能できます。
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贅沢なマロングラッセにさらにナッツの香りを重層的にまとわせた、極め付きの豪華な一品。ふうぅ~。
これぞハイソな洋栗、といえるほどに栗を満喫させつつ、栗の域を超えてしまっていますね。
ちょっとビックリ!!


スーパーでバターの品切れが無くなったので少し安心していたのですが、パティスリー業界では前年度実績に応じた割当制がいまだに続いているのだそうです。美味しい焼き菓子は上質なバターがあってこそ。とくにいい香りを出そうと思えば醗酵バターが必須。その醗酵バターがさらに熾烈な状況にあるというのですから、何をか言わんや、ですね。
乳業メーカーはこの状況を逆手に取って、利益率の高い生クリームとの抱き合わせ購入を迫ってくるというのですから、業界の発展を望んでいるとは云えないでしょう。利益優先が企業論理だとは十分理解しているつもりですが、暗澹たる思いに沈んでしまいます。
が、そういう苦労をはねのけた、晴れ晴れとした美味しいお菓子を生み出す渡邊シェフの精神的なタフネスぶりには頭が下がります。真っ当なシェフここにあり、ですね。
いつもながら、あまりの素晴らしさに渡邊ワールドに引き込まれ、どっぷり浸ってしまう私たち。天晴れでございます。

●『マドレーヌ』150円  『マドレーヌ シトロン』200円  『フィナンシェ オ マロン』240円  『ケーク シトロン』200円  『トゥソン デ マロン』300円  (※外税)
●「パティスリー W.ボレロ」(ドゥブルベ ボレロ)
守山本店/滋賀県守山市播磨田町48-4  TEL077-581-3966  定休日/火曜、第1&3月曜  営業時間/11:00~19:00
大阪本町店/大阪市中央区瓦町4-7-4  TEL06-6228-5336  定休日/土曜  営業時間/10:00~20:00
※ブログ「パイ日和おまけ」では、こちらのお店の『パルミエ』をご紹介しています。