アグレアーブル(15)『ルミエ』『ケック・オ・フリュイ・アールグレイ』『ショコラ/ルビー』

京都、地下鉄烏丸線・丸太町駅のすぐ南、夷川通にあるのが「パティスリー アグレアーブル」さん。シェフの加藤晃生さんは、長いフランス経験で心や身体に根付いたお菓子を伝えるためにお店をやっています。
ですからオープン当初(2013年4月)から、苺のショートケーキやキャラクターバースディケーキのような日本的なアイテムはなく、まるでフランスのお店が引っ越してきたような品揃えでした。初めて訪問したとき、その冷ケースを見て、思わず歓声をあげたことを思い出します。ただ、普通のシェフたちが心配するように、そんな品揃えではやはり当初売れ行きはさっぱりだったし、お客様も少なくシェフや奥様のかをるさんと本当にゆっくりお話しが出来たものです。
だからといって、彼らは少しもブレなかった。方針を変えることなく同じ品揃えで、じっくりと腰を据えて理解者が増えるのを待つ歳月。やがて数年でしっかり固定客が付き、5年を過ぎた頃からは夏休みを取ってフランス旅行をする余裕さえ生まれました。加藤シェフ、フランスでは旧友にあったり、ルネ親方一家(「ラ・ヴィエイユ・フランス」)と食事をともにしたり、師匠のジェラール・ミュロさんと再会したり……と水を得た魚のようにいきいき、よっぽど相性がいいのですね。

今回訪れた時は11時前、そして午后1時前にお暇するまでにショーケースがほぼ空になるほどの売れ行き。ゆっくりお相手してくださる間に何度も中断を余儀なくされるほど(私たちとおしゃべりしている場合じゃないよ、追加でどんどんつくらなきゃと心配していたのですが、お二人ともちっとも“そろそろ帰ってくださいよサイン”がないのです。普通、この売り時を逃したらもったいないとなるところじゃないですか。もてなす精神、なんだか凄いなぁとますます感じ入ったのでした)。
信念を持って本物を作りつづけることの意義をお伝えするために、成功事例としてご紹介してみました。

●『ルミエ』  3.4×8.3cm 高さ4.3cmほど。
agreable_lumier.jpg
新作、昨年のクリスマスの頃から作られています。
ほぅ、淡い苺色と草原のような優しい緑、そしてトップのジュレが春の陽光で映えていますね。そう、lumiere からのネーミングです。
組み合わせはシンプル。ピスタチオのバタークリームと苺のバヴァロワのケーキ。生地はピスタチオのジョコンド。キルシュシロップをアンビベしています。トップは苺のジュレ。

う~ん、ピスタチオがいいですねぇ。自称ピスタチオ党としては太鼓判のピスタチオ感。マルッロ社のピスタチオペーストはローストが深く香りが高いのだそうです。少し脂っぽいようなむせ返るような香りに共通点のある苺はベストカップル。
口溶けのいいバヴァロワで苺のほのかな酸味を楽しんでいると、バタークリームが溶け出し、ピスタチオの濃厚な風味と円やかさに覆い尽くされて行くのです。はぁ美味しいなぁずっと浸っていたいなぁ、この可憐な世界。
たった2つの味の組み合わせをそれぞれ2段階の構成にしているだけなのですが、とても立体的に感じられます。
落ち着いた味の組み合わせで、ずっと旧くからあるクラシックなお菓子のような落ち着きすら感じられます。お見事!

●『ケック・オ・フリュイ・アールグレイ/紅茶アールグレイ』  5.8×12cm 高さ6.5cm 250gほど。
agreable_caketea.jpg
以前いただいた『ケックオフリュイ』の紅茶版。
フレーバーはアールグレイ。ベルガモットのスッキリとキレのある薫りに惹き付けられます。
ベースとなっている『ケックオフリュイ』と共通のミックスフルーツは、無花果、レーズン、プルーンにアーモンドとヘーゼルナッツがマイヤーズラムに2ヵ月以上漬けられたもの。わんさかと目一杯加わっています。
アールグレイが入り、トップには茶葉も。仕上げにはヴォージュ社のコニャックVSOP。
agreable_caketeacut.jpg
ニマニマと袋を開けた途端、香りに満たされます、おおーっ!
ラムの濃厚な甘い香りに、アールグレイの涼やかさとコニャックの豊満さにキレと強さを兼ね備えた香りが、脳天を撃つほど。クラッ!
この得も言われぬ魅惑の薫りが、ミックスフルーツの濃厚な旨・甘味に深い奥行きを与えて、魅力を増していますね。
あまりに美味しくて濃厚なので、ベラベッカのように薄く切ってチビチビと食べるべきお菓子です。疲れた午后や深夜が似合います、バクバク食べちゃ危険です、大事にね。
芳醇なアルコール感の余韻も長く、大人のお菓子通のためのケックと云えるでしょう。見事です。

●『ルビー』  120gほど。
agreable_chocoruby.jpg
わぁ、鮮やかな色。元気になりそうな明るい色です。
ルビーというからには、ヴァローナのルビーチョコだと思ったら、流行を横目に見て、ルビーの味わいを自作していたのでした。
ヴァローナのものは、自然にできるチョコレートの中にルビー色をして酸味のあるものが見つかることがあるというもので、稀少品扱いなのです。
ですが、味はホワイトチョコにフランボワーズのピュレを加えたものと区別がつきません。加藤シェフはそこにさらに表面にフリーズドライのフランボワーズのパウダーを振っています。
agreable_chocoruby2.jpgホワイトチョコにフランボワーズは、苺ミルク的な好相性。王道です。素直に美味しい。
その上にパウダーを付け加えたことがピタリとはまっていて、ピリリと部分的な刺すような鋭い酸味が、きゅん! 
ホワイトチョコ特有の少し茫洋とした味わいから呼び覚ます、シャキッと締まりのあるまとまりが与えられているのです。うん、いいなぁこれ。

プレゼントにも最適ですが、まだ寒い時季だから私は鞄に忍び込ませて時折ポキッと小さく砕いて、食べたいな。こそっとね。誰も知らない、幸せの瞬間。へへっ。

●『ルミエ』500円  『紅茶アールグレイ』1250円  『ルビー』1500円  (※内税)
●「パティスリー アグレアーブル」
 京都市中京区夷川通高倉東入ル天守町75-7  TEL075-231-9005  定休日/不定休  営業時間/10:00~20:00(売切次第)
※ブログ「パイ日和」では、こちらのお店の『サントノーレ』をご紹介しています。